この曲の原曲がピアノ曲であることを知ったのは、少しあとからだった・・・
アントンKが、初めて渋谷の道玄坂にある日本楽器でレコードを買った思い出の楽曲。もちろんLPレコード、中学生の頃だ。同級生から勧められて聴いた思い出が甦る。TPのソロの軽快なメロディが心地よく、色々な場面を経て、終曲のあの巨大な「キエフの大門」の到達した時の何とも言えない充実感を今でも忘れてはいない。管弦楽曲に編曲されたものには、いくつかの種類があるが、やはり一番ポピュラーなラベル版を取りたい。今もってこのオーケストレーションは、原曲を聴くとなおさら素晴らしいものがあると感じる。
さて、どの演奏がお好みか?かつては、30~40種類のLPレコードを持っていたが、今では全てCDに置き換えて一部を除きほとんど処分してしまった。こんな中、今も思い出に残る愛聴盤は・・・
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団
をとりたい。オーソドックスな内容だが、曲の本質を明確に示したような演奏とでもいうか、初心者にはお勧めな演奏と言える。何しろ、オケがあのシカゴ響だ。どの声部も完璧にトーンが揃い鳴り切っている。しかも、ジュリーニだから、力づくではなく、丁寧で、そしてスケールが大きい。録音も当時としてはかなり良い方ではないか(76年)。
そして、その後少し経ってから、度肝を抜かれた演奏はというと・・・
セルジュ・チェリビダッケ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
今でこそ、何種類かのCDが発売されているようだが、最初の衝撃は、80年前後の当時のNHK-FMのライブ放送まで遡る。ちょうど夏休みの期間中、海外から送られてくる放送音源をFMで放送する番組があった。気に入った楽曲はよくエアチェックをして楽しんだもの。特に、金子建志氏の解説は、大変わかりやすく、面白くて楽しみにしていた。チェリにかかると、この曲がこうも違って聴こえるのかというお手本のような演奏であり、先ほど言った出だしのTPそのものの音色からして今までと全く違っていることに、まずは驚くのである。いくつかのプロムナードを経て、ビドロという牛車を表現した楽曲では、まさに牛が牽くような場面が想像でき、その表現力の濃さに圧倒される。そして何といっても終曲に向かって高揚する様は、まだチェリビダッケをよく知らなかったアントンKにとっては、まだ味わったことにない衝撃だったように思う。あの時以来、ますますチェリに興味をもっていくことになる訳で、そのきっかけとも言える出来事だった。もちろん、当時録音したものも残っているが、今では、簡単にCDで聴けるので、演奏日は違っているものの愛聴盤になっている。