アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

インバルの秀演を聴く

2017-03-15 10:00:00 | 音楽/芸術

週末に引き続いてマーラーを聴きにトリフォニーホールへ急ぐ。連日マーラーの演奏会に行くなんて何年振りのことだろう。昔はチクルスというセットで、一か月に1回とか、各シーズンごとに1回づつといった連続プログラムはあったと思うが、近年ではここまで集中してマーラーを聴くことは珍しい。

今回はどうしてもインバルのマーラー、それも彼の得意とされている第5番だったので、連日になるとかいう事の前に、久々に聴いてみたくなってしまった。それは、数年前の都響とのマーラーチクルスがどうしても脳裏を過り、その時の興奮を思い出してしまったからとも言えるか。とにかく細かいことなど考えずチケットを手にしたが、やはりその直感は当たり、連続でも足を運んで良かったと今は思っている。

今回のオケは、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団というドイツのオーケストラ。アントンKには、あまり聞き慣れないオケだったが、調べてみたら、昔のベルリン交響楽団のことらしい。まだドイツが東西分離していた時代にオットマール・スイトナーが率いて来日したオーケストラだった。近年は、オーケストラの名前も時代とともに名称が変わり、なかなか着いていけていないと実感している。まあオケの呼び名など大したことではなく、近年国内のオーケストラが飛躍的に技術向上している時代だから、こういった比較的地味な海外オケは如何なものか、自分の耳で比較できる良い機会にもなったのだ。

さて、インバルの第5。やはり予想通り引き締まった熱い演奏だった。いや今までのものより、さらに表現が直接的になり激しさが増しているように感じられた。基本的には、数年前の都響との演奏や、さらに遡ってフランクフルト放送響との録音で聴くことのできる演奏の延長線上にある内容だった。しかし御歳81歳になるエリアフ・インバル。円熟の境地とか、枯れた解釈とかいう形容とはほど遠く、今までのものをさらに深く厳しくえぐった演奏に感じた。従来の演奏より速度感は速まり、かつアコーギクの幅が増している。自分が得意な楽曲ということもあるのか、この辺の的を得た解釈は流石で、聴いていても非常に安心して音楽に身を置くことができた。逆に言えば、新しい発見は乏しいが、昔から聴いてきたこの楽曲のお手本になるような演奏解釈だったと言えるだろう。第1楽章冒頭のTpのソロや、スケルツォのポストホルンの安定感は流石で、ここでは国内のオケとの差を悲しいかな感じてしまった部分。しかし逆に、木管楽器群の荒さはどうしたものだろう。Clなど、ベルアップを多様していたにもかかわらず、なかなか音色が伝わらなかった。Fgが唯一雄弁に聴こえたが、Obは非力だしFlはバランスを崩していたように思う。実際終演後、指揮者インバルは、オケの各パートを拍手で向かえていたが、木管楽器奏者達は立たせなかった。このあたりの事は、都響や先日の新日本フィルの奏者達の方が、明らかに気持ちが乗っていたように思える。今回が日本公演の初日であること、または練習時間が無かったことなど多々想像できるが、少し残念だったと記しておきたい。

2017-03-13   東京 すみだトリフォニーホール

ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死

マーラー 交響曲第5番 嬰ハ短調

エリアフ・インバル指揮

ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団