アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

定演再開に期待を寄せて・・新日本フィル

2020-07-02 12:00:00 | 音楽/芸術

先月から具体的に動き出したクラシック音楽業界。数々の実験や試験演奏を繰り返しながら、withコロナでの演奏会がいよいよ始まったのだ。アントンKがここ数年来鑑賞している新日本フィルハーモニーでも、着々と準備がなされていたようで7月になって定期演奏会が復活した。

さてかつて経験のない状況の中での演奏会とは、どう演奏出来て自分がどのように感じるのか、とても興味があった。演奏会は、クラシックに限らず、音楽それ自体の持つ力とともに、会場ホールの雰囲気、そして聴衆の良し悪しの影響で、印象をとても左右してしまうデリケートな一面がある。いつも聴いているクラシック音楽では、特にそれが顕著に表れてしまうと感じているから、玄関ホールに入る場面で変に緊張感があったり、慌ただしさを感じてしまうと、これから鑑賞する音楽にまで影響が出てしまうかもしれない、と危惧していた。しかし実際には、実に淡々とホール内まで足を運べ、特に気持ちの上で変わったことは無かったのだ。

もちろん聴衆には制限をかけられ、隣席は空席になるよう仕切られている。マスクは着用のまま鑑賞するのが目新しいことか。時間になり演奏者たちが舞台に姿を現すと、この4か月の空白を埋めるがごとく、会場からいつになく拍手が沸き、そんなことだけで音楽を聴く前から心が熱くなってしまった。

この日のメインは、ベートーヴェンの「田園交響曲」だったが、前半冒頭のフィンジの楽曲の弦楽器が鳴った時、身体中に電気が走ったような感覚になり、目頭が熱くなった。いつもなら、演奏内容について、あれこれ考え意見するところだが、この日の演奏会だけは、そんな小さなことが馬鹿らしく思え、何より生演奏を聴くことの素晴らしさを今更ながら実感したのである。また演奏者たちに目をやると、いつになく演奏を楽しんでいるように感じられたのであった。特にメインの「田園」では、このオケの武器である木管楽器が冴えわたり、美しいハーモニーを聴かせていたし、嵐の場面での高揚感、そしてその後の牧歌的な雰囲気は、指揮者下野竜也氏の面目躍如といったところだろう。特に、第5楽章の冒頭のホルンから渡されたVnに現われるテーマの表情はアントンKにとっては新しかった。P指定をPPにまで下げたため、木管のハーモニーが浮き出て、崇高な透明感が感じられ、その後のFFまでの上り坂がとても豊かな音色の渦となり、聴衆に迫った印象だった。コンマスの豊嶋氏が終演後、何度も眼鏡を上げて涙を拭い感無量の井手達だったことが印象的で、この場にいられたことがとても有難かった。

しかしこの日の演奏会が到達点ではなく、これから新たなスタンスでの演奏会が始まるのだ。一つ一つ積み上げて、また新たな日常を我々も作り出していかねば・・そんなことを思いながら会場を後にしたのである。

新日本フィルハーモニー交響楽団 621回定期演奏会ジェイド

フィンジ  弦楽オーケストラのための前奏曲 op25

ヴォーン・ウィリアムス  テューバ協奏曲 ヘ短調

ベートーヴェン  交響曲第6番 ヘ長調 op68   「田園」

アンコール

ヴォーン・ウィリアムス イングランド民謡による6つの習作より

バッハ  管弦楽組曲第3番 からアリア

指揮   下野 竜也

テューバ 佐藤 和彦

コンマス 豊嶋 泰嗣

2020年7月2日  東京サントリーホール 大ホール



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