昭和30年代に生まれたキハ80系列には、少数ではあるが非貫通型の先頭車キハ81が存在した。東北線がまだ全線電化されていない時代に生まれ、その後は紀勢本線に渡り、特急「くろしお」として紀伊半島を縦断していた。
のちに登場するパノラミックウィンドウを持つキハ82系に比べて、随分と厳つくグロテスクな面持ちのキハ81には、数回乗車する機会はあったが、当時撮影することはほとんど出来なかった。アントンKが本格的に鉄道写真を始めた頃に消えてしまった車輛の一つに数えられるだろう。物凄い轟音とともに荷坂峠を越え、ほとんど歩いた方が速いのではと思うほどの走りであり、長大トンネルでは、排気ガスが車内に逆流してきて、車内が紫色に見えた事も今では懐かしい。オンボロだったが超が付くほど個性的で、そしてどこか憎めない車輛だった印象がある。
どれも人前に出す写真ではないが、無い中から1枚だけ貼っておく。
1977-01-03 2D くろしお キハ813 紀勢本線/白浜駅にて