杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ある子供

2006年10月01日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2005年12月公開
製作国 : ベルギー=フランス

20歳のブリュノは定職に就かず、仲間と盗みを働いて暮らしている。恋人のソニアは18歳。子供を産むが、ブリュノには父親の実感も自覚もなく、盗んだカメラを売りさばくように、子供を売ってしまう。それを知ったソニアがショックで倒れて初めて自分が冒した過ちに気づくブリュノだが……。

劇場予告では子供を売ってしまう行為がクローズアップされていたので、それが作品の主題なのかと勘違いしていたのだが、実際はエピソードの序章にしか過ぎなかったことに気づかされる。

子犬のようにじゃれあいながらも母になったソニアは「明日」を見つめている。反対にブリュノの方は、子供の父となっても今まで通りのその日暮らしが続くと無邪気なまま、深く考えもせずに我が子を売ってしまうのだ。

ソニアに背を向けられて初めて自分の行為と彼女を傷付けたことに気付くブリュノ。子供を取り戻した後の「違約金」のために仲間の少年と引ったくりを犯す彼は運命の坂をどんどん転がっていくかに見える。

が、凍てつく川の水に漬かり凍える少年を介助したり、少年が捕まった時、自ら名乗り出るブリュノの行為は、彼が「悪人」ではないことを観客に気付かせてくれる。

ブリュノは単に大人になる意味を知らない子供だったのだ。ただ「何も知らない」だけなのだ。涙も、働く汗も、本当の愛も、命の重ささえも。
刑務所?でのソニアとの面会の場面で「希望」を感じさせてくれるラストシーンに作り手の暖かな視線を感じ、後味は悪くなかった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする