杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

日の名残り

2006年10月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
1993年 アメリカ 134分

カズオ・イシグロ原作のベストセラー小説の映画化。

1938年、当時の屋敷の主であるダーリントン卿は第二次大戦後のドイツ復興の援助に力を注ぎ、非公式の国際会議をホールで行うなど、熱心な親独家となっていく。重要な政財界の外交の場として活躍した館の執事であるスティーブン(アンソニー・ホプキンス)は、そういった政治の面には全く目を向けず、ひたすら自分の任務に忠実であろうと頑ななまでに私的感情を表に出さずにいた。彼に好意を持つ女中頭のミス・ケントン(エマ・トンプソン)との間に芽生えた感情をも封じ込めようとする。彼のすげない態度に傷ついた彼女は屋敷を去っていった。

20年後、彼女からの手紙により、過去の想いを呼び覚まされたスティーブンは再会を決意し彼女のもとへ向ったが・・・。


職務に忠実なあまり、自分の気持ちに蓋をして気付かず、相手をも傷付けてしまった執事が老年になり、彼女への想いを呼び覚まされ、逢いに行くが、結局は遅すぎた勇気は報われず、一人孤独なまま生きていくであろう姿を暗示して物語は終わる。

スピード感のある現代の恋愛に比べ、なんともどかしく拙い恋愛だろう。そして何と品良く節度のある恋模様だろう。こういう作品が良作というのだろう

歴史の舞台を作った有名な屋敷に集う政界の大物達の姿と、そこで働く執事と女優頭のロマンスとも呼べないほど慎ましやかな恋が織り交ぜになって進む物語は、じれったくそして甘やかである。

アンソニーとエマという二人の名優の演技に、暫し現実を忘れて酔える作品。

但し、執事スティーブンについては、尊敬はしても共感は出来ない。恋愛感情については不器用な性格なのだと思っても、個人としての意見を持たず、ひたすら主に忠実なことを良しとする姿は違和感を覚えてしまう。卿の客に政治的意見を問われるシーンがあるが、そこまで個を滅することが必要なのだろうかと疑問を感じた。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする