杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

命みじかし、恋せよ乙女

2022年09月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月16日公開 ドイツ 117分 G

ドイツ・ミュンヘン。幼い娘の誕生パーティに、招待されてもいないのに酒に酔って現れ、別れた妻から「正気?」と追い返されるカール(ゴロ・オイラー)。仕事も家族も生きる希望さえも失ったカールが、泥酔の底で「助けて」とつぶやいた翌日、ユウ(入月絢)という名の若い日本人女性が訪ねて来る。カールの亡き父ルディ(エルマー・ウェッパー)と親交があったというユウは、ルディが生前暮らしていた家を見たいというのだ。よく知らないユウと共に、郊外にある今は空き家となった実家へと向かう羽目になるカール。父の墓の前で手を合わせて涙を流しながら「彼は私に優しかった」と話すユウの言動は、すべてがとても風変りだった。実家に入ると、いい思い出も悪い記憶も次々と蘇り、カールは両親の幻影と共に数日間を過ごすことになる。ある晴れた日、ユウの希望で観光名所のノイシュバンシュタイン城へ出掛けたカールは、土産物売り場で働く義姉に出くわす。彼女から甥っ子で高校生のロベルトが引きこもりになったと聞いて驚くカール。兄のクラウス(フェリックス・アイトナー)が極右政党に入党したことが原因だった。心配のあまり兄の家に立ち寄ったカールは、帰宅した兄と大喧嘩になってしまう。兄クラウスと姉カロ(ビルギット・ミニヒマイアー)とカールの3兄弟は、子供の頃から仲が良くなかった。母親に溺愛されていた末っ子のカールに、兄と姉が嫉妬していたのだ。母に続いて父が亡くなった時には、相続で揉め、以来完全に疎遠になっていた。こうしてカールは次第に目を背けてきた自らの人生と向き合い始める。両親の期待に応えられなかった不甲斐なさ、親の死に目に逢えなかった後悔、家族との縁を切ってきた不義理、そして本当の自分をさらけ出すことが出来なかった過去のすべてー。ユウはそんなカールの耳元でそっとささやく「あなたは今のままでいいの。愛してる。」ずっと止まっていた時計が少しずつ動き始めたカールが、新たな人生へと一歩を踏み出そうとしたまさにその時、ユウが忽然と姿を消してしまう。ユウを捜しに遥か海を越え日本を訪れたカールは、彼女の故郷である神奈川県の茅ケ崎海岸へ向かう。ユウの面影を追ううちにカールがたどりついたのは、茅ケ崎館というひっそりとした旅館だった。そして茅ケ崎館の老いた女将(樹木希林)との思いがけない交流から、カールは哀しくも美しい知られざる人生の物語を知ることになるー。(公式HPより)

 

2018年9月に他界した樹木希林の海外製作初出演作品で遺作となったドイツ映画です。ドイツ出身のドーリス・デリエ監督による、孤独なドイツ人男性が、父親と親交のあった日本人女性と旅して人生を取り戻す姿を描いた作品ですが、哲学的でやや難解。

親や周囲の期待に応える理想の自分と本当の自分の間でもがき苦しんできたカールは、両親の死に心を引き裂かれ酒に逃避して更に人間関係が悪化していく負のループに陥っていました。そんな彼の不安や恐怖を形にしたものが黒い影(ユウは悪霊と呼びます)です。更に久しぶりに訪れた実家で両親の幻影を見るようになり、さらに罪悪感が増していきます。当然酒量も増え、遂には愛娘のミアとの面会もできなくなるのね

ノイシュバンシュタイン城で出会った日本人はユウを見て「あの子は悪霊だ、気を付けた方がいい」とカールに言います。(どんな爺さんなんだ?)ここで観ている方は彼女が生身の人間ではないかもと気付くことになります。突然押しかけてきて振り回している行動も、もう不思議とは思わなくなるという

ユウの「誘い」を受け入れることができなかったカールは、その夜ロベルトの幻影を見て彼が自殺するのではと心配して兄の家に押しかけ追い出されてしまいます。酒に酔い森で寝込んでしまった彼は凍傷になり病院で生死の境をさまよいます。意識のない彼に兄姉は生命維持装置を切る選択をしますが、奇跡的に一命をとりとめるんですね。「父だったら迷わず切るが母は許さないだろう」という二人の会話からも三兄弟の間のわだかまりが透けて見えるようです。

助かったものの、生殖器を喪ったカールは再び深く傷つき、ユウを求めて日本へやってきます。でもその前から彼の機能は停止していたんじゃないのかな?というか、そもそも自分の性に疑問持ってるようにも見えたんだけど。

彼女の故郷と聞いていた茅ケ崎で目にしたユウの姿を追って迷い込んだ宿の窓辺にノイシュバンシュタイン城のスノードーム(一緒にいた時ユウがねだっていた)を見つけたカールは、因縁を感じて女将にユウの写真を見せます。彼女は何か知っている様子でしたが何も言わず首を横に振ります。カールは女物の着物を羽織っていたので、女将は男女両方の浴衣を出してきます。カールが選んだのは女物の方。前合わせを左前に着た彼に、女将は右前に直してやりながら「生きているんだから幸せにならなければ駄目ね」と言います。

翌朝、祭りで出すおにぎり作りを一緒に手伝う彼に、女将はユウが既に亡くなっていることを打ち明けます。ユウは女将の孫で、母が入水自殺をしたことで精神を病い、母の命日に同様に海に身を投げたというのです。

祭りの翌日はちょうど二人の命日で、その夜、女将とカールはユウとユウの母の幻影を見ます。ユウが死んでいることを受け入れられず、必死に彼女の姿を探し、疲れて浜辺で眠り込んだカールが目覚めると、古びたピンクの受話器を見つけます。(カールの実家にあったコードは海中に続いていてその先にユウがいました。導かれるように海に入った彼をユウは連れて行こうとしますが、カールは抗い「もう少しこの世にいたいんだ」と言います。生き続けることを選んだ彼にユウは「人生を楽しんで、また会える日まで」と呟き海の中へ消えていきました。

女将がスノードームを見つめながら、「ゴンドラの唄」を口ずさむ姿、そしてエンドロールとなります。

この「命短し恋せよ乙女~」の歌詞、劇中何度も登場しますが意図はイマイチわからなかった

立ち直るきっかけになったのがユウという日本人女性、しかも亡霊というのもなんだかな~~彼女の孤独がルディを通してカールとシンクロしたってことかしらん?カールは過去と向き合うことで自分をあるがままに受け入れることができたのかな。


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ブレット・トレイン ネタバレあり

2022年09月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年9月1日公開 126分 R15+

世界一運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)が請けたミッション、それは東京発の超高速列車“ゆかり号”でブリーフケースを盗み、次の駅で降りること。簡単な仕事のはずが、次から次へと“ゆかり号”に乗ってくる殺し屋たち。彼らに狙われ、降りたくても、降りられない! 最悪な状況の中、列車はレディバグと殺し屋たちを乗せたまま終着点・京都へと走る… やがて明らかになる乗り合わせた10人の過去と因縁。そして京都で待ち受ける世界最大の犯罪組織のボス=ホワイト・デス! 思いもよらない展開が連続するミステリー・アクション!(公式HPより)

 

作家・伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」の映画化です。クライムアクションなのにコミカルが勝って、血もドバドバ飛び散るのに全く血なまぐささを感じない、それどころかクスっと笑ってしまうシーンが随所にあるコメディ作品でした。何よりブラピ演じるレディバグのゆるふわでとぼけたキャラがマッチしていました。

ブリーフケースを盗んで次の駅で降りるというごくごく簡単な仕事の筈が、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われるはめになるレディバグ 

双子の殺し屋・タンジェリン(字幕ではミカンと訳されていました)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)。この二人、全く似てない もしかして双子というのはコードネームのようなものなのかしら?でも幼い頃の回想シーンでは確かに兄弟みたいだったけど・・。

彼らは世界最大の犯罪組織を率いるホワイト・デス(マイケル・シャノン)の依頼で、彼の(バカ)息子(ローガン・ラーマン)を救い出し、身代金の入ったスーツケースと一緒に届けるミッションの途中です。このブリーフケースをレディバグが盗んじゃうのですが、次の駅で降りようとしたらウルフ(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)というメキシコの殺し屋が乗り込んできて彼にナイフを突きつけ襲い掛かります。ウルフは花嫁をレディバグに毒殺されたと誤解していましたが、ブリーフケースに跳ね返った自分のナイフであっさり死んでしまいます。

ブリーフケースがなくなっていることに気付いて慌てる二人が席に戻ると、今度はバカ息子が目から血を流して死んでます。実はホワイト・デスの依頼を受けた猛毒使いの殺し屋ホーネット(ザジー・ビーツ)の仕業なんですが、変装の名人という設定でモモもんというキャラのぬいぐるみの中に入っていたのも彼女。 更にウルフが本当に復讐すべき相手も彼女だった。

女子学生風のプリンス(ジョーイ・キング)は、キムラ(アンドリュー・小路)を使って「復讐」をしようと目論んでいて、泣き落としとぶりっこで他の殺し屋たちを油断させます。キムラは息子をデパートの屋上から突き落として重傷を負わせた犯人に復讐するため列車に乗り込んだのですが、それも全てプリンスが仕組んだことでした。彼女はホワイト・デスの娘で父から無視され後継者として認めて貰えない事で父を殺そうとしていたのです。全くこの親にしてこの娘ありだ

一見バラバラに見えた殺し屋たちの目的や素性が後半一気に繋がっていきます。

ホワイト・デスは、彼の妻の死の原因となった殺し屋たちに復讐するため、貸し切りにして全員を“ゆかり号”に集めたのね。でもレディバグは本来請け負う筈だった殺し屋の代わりに雇われていて、彼自身は全く無関係でしたまさに世界一運の悪い男なのですが、窮地に陥る度に勝手に相手が死んでくれるわ、味方が現れるわで、身を守るため以外に彼の方から殺しをすることなく生き残ってしまうという、なんだそれ!

キムラの父で、ホワイト・デスに恨みを持つエルダー(真田広之)が加わり、レモンと4人で京都で乗り込んできたホワイト・デスと彼の手下を相手に死闘を繰り広げます。真田さんはさすがのアクションで魅せてくれました。

「機関車トーマス」をこよなく愛するレモンが、いちいち殺し屋たちをキャラに例えるのも元ネタを知っている身には笑えるツボでした。京都から“ゆかり号”の操縦を任された彼ですが、「高速列車は運転したことない」とか言うし(そりゃ、トーマスは機関車だものね)、炎上大破した操縦席、コントロール不能になった列車が自足350kmで暴走して正面衝突の挙句街に突っ込むなど、怪獣映画さながらの破壊シーンはあまりにも現実味がないので逆に何も考えずに楽しめました。そういえば、レディバグが車内のトイレの温水シャワーや温風に興味津々になっているシーンも「外人あるある」で笑えます。

列車の暴走で破壊された街で呆然とするレディバグを仲介人のマリア(サンドラ・ブロック)が迎えにきますが、車に乗り込もうとすると倒壊物に車が押しつぶされるオチまであって、ついているのかいないのか

タンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)をプリンスに殺されたレモンが、蜜柑を積んだトラックでプリンスを轢いて復讐するのもなんか良い!!

新幹線を模した列車の装飾もド派手だったり、モモもんとかいうヘンテコだけど親しみが持てるキャラが登場したり、とにかく頭空っぽにして笑って楽しめる二時間弱でした


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