2022年9月16日公開 130分 G
天才物理学者・湯川学(福山雅治)の元に、警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲コウ)が相談に訪れる。行方不明になっていた女子学生が、数年後に遺体となって発見された。内海によると容疑者は、湯川の親友でもある先輩刑事・草薙俊平(北村一輝)がかつて担当した少女殺害事件で、完全黙秘をつらぬき、無罪となった男・蓮沼寛一(村上淳)。蓮沼は今回も同様に完全黙秘を遂行し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻って来た。町全体を覆う憎悪の空気…。 そして、夏祭りのパレード当日、事件が起こる。蓮沼が殺された。女子学生を愛していた、家族、仲間、恋人…全員に動機があると同時に、全員にアリバイがあった。そして、全員が沈黙する。湯川、内海、草薙にまたもふりかかる、超難問...! 果たして、湯川は【沈黙】に隠された【真実】を解き明かせるのか...!?(公式HPより)
東野圭吾のガリレオシリーズ第9弾「沈黙のパレード」を原作に、福山演じる変人だけど天才的頭脳を持つ物理学者・湯川学が、不可解な未解決事件を科学的検証と推理で見事に解決していく「ガリレオ」シリーズの映画第3弾です。今作では、湯川と内海、草薙の3人のやりとりが再び見られるのも嬉しい点。『容疑者xの献身』『真夏の方程式』に続いて福田靖が脚本、西谷弘が監督を務めているので、エンドロールには過去2作のシーンも挿入されていました。主題歌は福山雅治&柴咲コウのユニット≪KOH+≫による「ヒトツボシ」
前2作を凌ぐ怒涛の展開と心揺さぶる人間ドラマ。。。との触れ込みですが、正直そこまでとは・・・
確かに町を挙げてのパレードの描写はお金かかってる感あって豪華で楽しかったけれど、死因の特定はそれほど手の込んだ知識も必要なく出来てしまったし、犯人についてもある程度想像できてしまうのは物足りなさがありました。
ただ、犯人が自首して事件解決とはならず、その先に真相が待っている展開は絡み合う人間模様と二転三転する展開もあって驚きを与えてくれます。悲劇性というより、警察や司法の限界を突きつけているような苦さも残る作品です。
菊野市のゆるキャラとして登場する「キクノン」はさくらプロダクションが手掛けたようですが、それほど可愛くなくて微妙でした

以下ネタバレありのあらすじと感想

静岡県の民家火災の焼け跡から二体の遺体が発見されます。そこは、23年前に本橋優奈ちゃん殺害事件で逮捕されるも完全黙秘を貫き無罪となった蓮沼寛一の実家でした。遺体は蓮沼の母・芳恵と3年前から行方不明となっていた並木佐織(川床明日香)と判明します。佐織は東京都菊野市の食堂『なみきや』の看板娘で、歌手を目指していました。蓮沼が当時彼女に付きまとっていたという両親(飯尾和樹、戸田菜穂)や恋人の高垣智也(岡山天音)の証言や、家宅捜索で押収した衣服にあった血痕から彼女のDNAが検出されたことから蓮沼は逮捕されますが、またもや完全黙秘され、処分保留で釈放されます。蓮沼の関与を知った草薙はその場で嘔吐するほどの衝撃を受けますが、それは最初の事件で彼を罪に問えなかったことへの激しい自責の念によるものだったのでしょうか。

研究のため菊野市に滞在していた湯川は『なみきや』の常連になっています。いつものように店で食事をしていると、蓮沼が姿を現します。凍り付き憎しみの目を向ける佐織の家族や父・祐太郎の親友・戸島(田口浩正)、佐織の歌の指導をしていた新倉直紀(椎名桔平)と彼の妻(檀れい)ら常連客たちをせせら笑うように、蓮沼は冤罪を被せられそうになり損害を被ったと責め、賠償金を仄めかして去ります。
町を挙げてのイベント「パレード」の日。湯川は佐織の妹の夏美(出口夏希)と見物をし、打ち上げに参加しますが、そこへ蓮沼が死んだという知らせが入ってきます。昔の同僚・増村(酒向芳)の所に転がり込んでいた蓮沼の死因は特定できておらず、他殺の面から捜査をする警察は、動機がある関係者たちを当たりますが、それぞれアリバイがありました。
死因調査に加わった湯川は、現場を見て室内にヘリウムガスを送り込んで窒息死させたのではと推測しますが、遺体発見時の状況を再現した結果、凶器がヘリウムではなく液体窒素だと断定します。
パレード当日のカメラ映像から、経営する工場から戸島が液体窒素を持ち出し智也がそれを運んだことがわかりますが、彼らは脅して自白させるつもりだったと供述します。常連客の一人(吉田羊)は内海たちの聞き取りに「沈黙罪」はあるのかと抗議の声をあげます。
さらに湯川が23年前の事件との関連を指摘したことで、優奈の母・由美子の兄が、増村だと判明します。
そんな時、新倉直紀が蓮沼を殺害したと自首してきて、蓮沼から佐織を公園で襲った際に誤って殺害したと聞いて激怒し、予定外に蓮沼を殺害してしまったと自供します。それを聞いた増村は、蓮沼を恨み復讐しようとしたが殺すつもりはなかったと話します。計画を立てたのは祐太郎・戸島・増村でしたが、当日店の客の具合が悪くなったため、実行役の祐太郎が動けず中止になる筈でした。しかし、戸島から計画を聞かされていた新倉が、単独で計画を実行してしまったのです。
事件解決に疑問を持った湯川は独自に調べを進め、新倉留美のもとを訪ねます。佐織を殺害したのは蓮沼ではなく、真犯人を脅迫するために遺体を隠し、死体遺棄罪の時効成立を待って実家に放火してわざと遺体を発見させて逮捕されることで揺さぶりをかけ金を強請っていたというのです。そしてその真犯人は留美であり、それを知った夫の直紀が、蓮沼に真相を話される前に殺害しようとしたのではと。全ては妻を守るためだったのです。
あの日、佐織から歌手を目指すことを止めたいと言われ、引き止めようとして投げかけられた言葉にカッとなった留美は佐織を突き飛ばしてしまいます。動かなくなった佐織に動転し逃げた留美でしたが、正気に返って現場に戻ると、彼女の姿は消えていて髪につけていたバレッタだけが残っていました。その後の展開は湯川が推測した通りです。
今度こそ解決か?と思わせておいて、湯川は更に推理を広げます。彼は公園に血痕が残されていなかったことから、佐織の死因である後頭部の陥没は、運んでいる途中で意識を取り戻した彼女を蓮沼が殴打してできたと考えます。留美はバレッタを手元に保管していて、それに血液が付着していなければ致命傷を与えたのは彼女ではないと主張できるというのです。
草薙は湯川の仮説を直紀に語ります。妻が佐織を殺していないと証明するためには直紀が殺意を持って蓮沼を殺したと認めなければなりません。彼が自分の保身(過失による殺人)を優先すれば、妻が佐織を殺害したことになるのです。
今度こそ解決か?と思わせておいて、湯川は更に推理を広げます。彼は公園に血痕が残されていなかったことから、佐織の死因である後頭部の陥没は、運んでいる途中で意識を取り戻した彼女を蓮沼が殴打してできたと考えます。留美はバレッタを手元に保管していて、それに血液が付着していなければ致命傷を与えたのは彼女ではないと主張できるというのです。
草薙は湯川の仮説を直紀に語ります。妻が佐織を殺していないと証明するためには直紀が殺意を持って蓮沼を殺したと認めなければなりません。彼が自分の保身(過失による殺人)を優先すれば、妻が佐織を殺害したことになるのです。
もちろん、直紀がどちらを選んだかは次のシーンを待つまでもなくわかりますよね
彼は妻が抱いていた不安(自らが叶えられなかった夢を叶えようとしている佐織への嫉妬心と、夫の気持ちが彼女に向いていることへの苦悩)に気付かぬ振りをしていたことへの罪悪感があったのです。

それにしても蓮沼という男には救いがないし一片の同情の余地もないワルでした。だから、本当の真犯人はやはり彼だろうと思わせる結末にある種の救いを感じることができました。
証拠品があっても完黙していたら裁判が成立しないと言う点は疑問もあるのですが、警察の捜査や司法の限界を提示しているようでそこは後味悪かったかな。まさに最初の事件で有罪になっていたら起こらなかった事件ですものね
