2021年5月28日公開 フランス 96分 G
フランス郊外。あふれる才能と魔法のような指で新種のバラを開発し、数々の賞に輝いてきたエヴ(カトリーヌ・フロ)。だが数年前から巨大企業のラマルゼル社に賞も顧客も奪われ、亡き父が遺してくれたバラ園も今では倒産寸前に。助手のヴェラが何とか立て直そうと、職業訓練所から格安で前科者のフレッド、定職に就けないサミール、異様に内気なナデージュを雇う。だが3人は全くの素人で、手助けどころか一晩で200株のバラをダメにしてしまう。そんな中、エヴに新種のアイディアが閃いた! 交配に必要なバラがラマルゼル社のバラ園にしかないと知ったエヴは、フレッドにある“特技”を披露させる。パリの新品種コンクールまであと1年、はみだし者たちの壮大な奮闘が幕を開ける──!(公式HPより)
バラ園経営者と素人集団たちが世界屈指のバラ・コンクールに挑む姿を描いたヒューマンドラマです。
父が遺した小さなバラ園を経営するのはバラが全ての頑固者のエヴです。かつては数々の賞に輝いてきたエヴですが、数年前から巨大企業のラマルゼル社に賞も顧客も奪われて 倒産寸前。人出不足を補おうと助手のヴェラ(オリヴィア・コート)がエヴに内緒で格安で雇える職業訓練所から派遣してもらいます。前科者のフレッド(メラン・オルメタ)、定職に就けないサミール(ファツァー・ブヤメッド)、内気で泣き虫なナデージュ(マリー・プショー)の3人です。バラのことを何も知らない彼らは手助けどころか、一晩で200株のバラをダメにしてしまう始末でエヴとの関係も悪化します。
フレッドは前科のせいで両親から見放されていました。親から無視され続けるフレッドを不憫に思ったエヴは彼を自宅に招いて食事をご馳走します。自分のことを打ち明けあった二人は少しずつ信頼関係が芽生えていきます。
そんな中、エヴは突然新種のアイディアが閃きます。来年のコンクールで受賞確実の世界初の新種のバラの交配を思いついたのです。でも交配に必要な「ライオン」はラマルゼル社独占です。そこでエヴはフレッドに相談を持ち掛けます。彼の開錠の技術でラマルゼル社に侵入してお目当てのバラを“拝借”する計画に難色を示すフレッドでしたが(もし見つかれば刑務所に逆戻りですから当然ですね)エヴの熱意に押され、成功すれば正規採用する条件でサミールとナデージュとこの計画に乗ります。
作戦は決行され、サミールとナデージュが警備員の気をそらしている間に、フレッドが侵入します。よく似たバラの中から、彼は以前エヴに1度だけ嗅がせてもらった香りを頼りに「ライオン」だと思ったバラを持ち出しました。エヴは彼の香りを嗅ぎ分ける才能に気付きます。
交配したバラはやがて種をつけ、苗は順調に育っていきました。
コンクールまでの収入を得るため、3人は毎日バラを販売し売り上げも順調でしたが、新種のバラは失敗してしまいます。(ライバル社のバラを盗んで成功していたらコンクールで受賞したとしても後味悪い結果になったと思うのでこれで良かったと思ってしまいました。)落ち込み自信を失くしたエヴはバラ園をラマルゼル社に売却する決心をします。
雇われて働くことを拒否したエヴは、3人にお別れの挨拶をし別れを惜しみました。ラマルゼル社の契約書にサインをしようとしたその時、ナデージュが「サインは待って!」と駆け込んできました。彼の後ろから現れたサミールが抱えていたバラを見てエヴは仰天します。色や大きさ、強さ、香り全てがパーフェクトな見事なバラが自然交配で生まれていたのです。もちろん契約は白紙になりました。
エヴはフレッドにパリで調香師になるための勉強をすることを薦め「いつでも戻ってきなさい。私達はあなたの家族よ」と言って花言葉の本を贈りました。パリへ向かう途中で本を開いたフレッドは、そこに花のポストカードが3枚挟まれていることに気付き、早速花言葉を調べます。
青いパンジー『あなたがいないと寂しい』
青いパンジー『あなたがいないと寂しい』
わすれな草『私を忘れないで』
カンパニュラ『ありがとう』
エヴの気持ちが込められたカードを見てフレッドは涙を浮かべました。
コンクールの日がやってきました。ヴェルネ・バラ園の新種が見事賞を獲り、スピーチに立ったエヴは、3名のスタッフと助手のヴェラに感謝を述べました。
バラの魅力を映し出すために、フランス屈指のローズブランドのドリュ社、メイアン社といったスペシャリストが監修を担当したそうです。交配や栽培の過程も詳細に描かれていて、バラ愛好家でなくとも興味深い内容になっています。誰かと繋がることで、人生はいつでも幾度でも花開くというメッセージがストレートに伝わってくる物語でした。