杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

355

2022年09月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2022年2月4日公開 イギリス 122分 PG12

アメリカのCIA本部に緊急情報がもたらされた。あらゆるセキュリティをくぐり抜け、世界中のインフラや金融システムなどを攻撃可能なデジタル・デバイスが南米で開発され、その途方もなく危険なテクノロジーが闇マーケットに流出しようとしているのだ。この非常事態に対処するため、CIAは最強の格闘スキルを誇る女性エージェント、メイス(ジェシカ・チャステイン)をパリに送り込む。しかしそのデバイスは国際テロ組織の殺し屋の手に渡り、メイスはBND(ドイツ連邦情報局)のタフな秘密工作員マリー(ダイアン・クルーガー)、MI6のサイバー・インテリジェンスの専門家ハディージャ(ルピタ・ニョンゴ)、コロンビア諜報組織の心理学者グラシエラ(ペネロペ・クルス)と手を組んで、世界を股にかけた追跡戦を繰り広げていく。やがて中国政府のエージェント、リン(ファン・ビンビン)もチームに加わるが、彼女たちの行く手には想像を絶する苦難が待ち受けていた……。果たして第三次世界大戦を阻止することができるのか——(公式HPより)

 

世界各国の凄腕女性エージェントによるドリームチームの活躍を描いたスパイアクションです。めまぐるしく敵味方が変わる展開もスリリングで話に引き込まれていきました。

麻薬カルテルと国際テロ組織の取引がこじれ、銃撃戦となったどさくさに、コロンビアの特殊工作員ルイス(エドガー・ラミレス)が取引商品のデバイスを持ち去り、CIAに300万ドルで取引を持ち掛けます。デバイス回収を命じられたメイスは男性諜報員のニック(セバスチャン・スタン)とパリへ行き、新婚夫婦を装ってルイスに近づきますが、BNDの諜報員マリーにバッグを盗まれてしまいます。メイスはマリーを追いますが逃げられ、ルイスを追ったニックは殺されてしまいます。ちなみにこの時点でメイスとニックは恋人同士の関係でした

マークス長官(ジョン・ダグラス・トンプソン)から単独で動く許可をもらい、イギリスへ向かったメイスは、親友のサイバー専門家ディジに協力を求めます。早速マリーとルイスの情報を得てルイスの滞在するホテルに向かった二人は、彼が心理学者のグラシーといるところを押さえますが、マリーもやってきます。その時、何者かの襲撃に遭いデバイスは奪われルイスが殺されてしまいます。彼は死ぬ前にグラシーにデバイスの追跡機能のある携帯の認証を与えます。以後はグラシ―でなければ携帯を使って行方を追えないわけね。

ディジはメイスとマリーに共闘を提案し、怖れを成して家に帰らせてと訴えるエージェントではない心理学者(一般人)のグラシーも説得して4人でデバイスを追い、見事な連携プレーで取り返します。

CIAのマークス長官にデバイスを渡しミッション完了と祝杯をあげる4人でしたが、マークスが射殺されデバイスが奪われたことで彼女たちに嫌疑がかかります。マークスを殺ったのはアジア系女性。敵か?5人目登場です

2日後に上海で行われるオークションにデバイスが出品されるとの情報を掴んで上海へ飛んだ4人は、会場に入り込んで出品されている壺の中にデバイスが隠されていることを突き止めます。会場で死んだはずのニックを見て驚くメイスに、彼は裏切りを伝えます。ニックにデバイスを奪われ警官隊に包囲された4人を救ったのはオークションで進行役をしていたリンでした。彼女は中国政府のエージェントで、ニックの共謀者がマークスだったと教え、ニックには偽物を渡したと言います。

しかし、それを知ったニックと手下の急襲に遭い、人質に取られていたディジの夫とマリーの上司が殺され、グラシ―の家族も危うくなります。仕方なくデバイスを渡すことになり、ロック解除方法を知るリンが連れ去られます。悲しみを押し殺し、リンが隠していた武器を携えてニックのアジトに向かう4人はすっかり闘う女の顔をしています。激しい銃撃戦の末、マリーはニックに撃たれて負傷しますが、ディジがデバイスを破壊します。メイスのピンチにニックを撃って助けたのは銃の扱いに不慣れなグロシーというのもある意味お約束ですね

数ヶ月後、何故かニックは昇進していて、メイスは追われる立場になっています。 どうも上層部の闇があるらしいぞ。

ニックが家に帰るとメイスがいました。彼女は「355」(18世紀アメリカの独立戦争時代に実在した女性スパイのコードネーム)の話をし、氷に入れた毒で彼の自由を奪い、殺さないけれど一生閉じ込めておくと告げます。愛する者を奪われたリンやディジやマリーの立場ならさっさと殺してと思いそうだけどな~~

ニックの家を出た5人は別れの挨拶をしながらも再会を示唆して別々の道へ去っていきました。

デバイス奪還のためにそれぞれの組織からやってきた女性エージェントたちが、敵の敵は味方とばかり、チームを結成して国際テロ組織から世界の平和を守るために立ち上がるお話。キレキレなアクションもカッコ良かったですが、オークション会場に登場した時のドレスアップした姿も美しかったな


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樽とタタン

2022年09月09日 | 

中島京子(著) 新潮社文庫

小学校の帰りに毎日行っていた赤い樽のある喫茶店。わたしはそこでお客の老小説家から「タタン」と名付けられた。「それはほんとう? それとも嘘?」常連客の大人たちとの、おかしくてあたたかな会話によってタタンが学んだのは……。心にじんわりと染みる読み心地。甘酸っぱくほろ苦いお菓子のように幸せの詰まった物語。(あらすじ紹介より)

 

・「はくい・なを」さんの一日・・・ 老小説家が昔書いた小文の秘密

・ずっと前からここにいる・・・ 2038から来たという女の正体

・もう一度、愛してくれませんか・・・歌舞伎役者の卵トミーの色恋沙汰

・ぱっと消えてぴっと入る・・・祖母の死生観

・町内会の草野球チーム・・・学生さんを通して知る自意識

・バヤイの孤独・・・サケウシ研究をしている学者が語る恋の話

・サンタ・クロースとしもやけ・・・ノースダコタ出身のサンタクロースとしもやけ

・カニと怪獣と青い目のボール・・・マスターの甥っ子を通して気付く幼い「わたし」からの別れ

・さもなきゃ死ぬかどっちか・・・老小説家が紡いだ二人のトモコの秘密

外の世界が恐ろしく感じる「わたし」は、幼稚園も一日で退園します。困った母親(当時はまだ珍しい共働きで看護師をしていた)に連れられ入った喫茶店が不思議に落ち着いた「わたし」を見た母は、マスターに頼んで留守の間預かってもらうことになります。店の奥に置かれた赤い樽の中に座って過ごしていた「わたし」を老小説家は「タルト・タタン」(フランスのお菓子)にちなんで「タタン」と名付け、マスターや常連客もそう呼ぶようになります。

9つの物語は、「わたし」が三歳から引っ越しをする小学校高学年の十二歳まで住んだ小さな町の、坂下にある小さな喫茶店での常連客との思い出として描かれますが、大人になった「わたし=トモコ」は、小説を書くにあたって当時住んでいた町を訪れますが、住んでいた団地は当時の面影を残していたものの、喫茶店は既になく、マスターや常連客たちに出逢うことも叶いません。子供の頃の記憶が果たして正しかったのか、あるいはそのどれもが老小説家や自分自身の創作であったものか・・読んでいくうちに現実と虚構が曖昧になってくるのです。

子供の「わたし」に語っても理解できないと思われる常連客たちの人生観や恋愛観はしかし、相手が子供だからこそ本音を語ることができたといえるのかも。神主とトミーの関係や、老小説家の邪な感情など、けっこう大人の事情が透けて見えるのも、大人になったトモコだからこその推察が入っていると思われますが、当時の彼女が日常の断片として記憶していたことの方に驚きがあります。だからこそ物を書く人になったのだろうとも。

何だか自分も居心地の良い喫茶店の赤い樽に腰かけて、時々常連客たちと会話を交わしてゆっくり流れていく時間を味わっているような不思議なやすらぎを感じるお話でもありました。


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浅見家四重想 須美ちゃんは名探偵!?―浅見光彦シリーズ番外

2022年09月07日 | 

内田康夫財団事務局(著) 光文社文庫

浮かない顔の雅人の様子が気になり吉田須美子が訊ねると、賞をとったクラスメイトの俳句が、盗作かもしれないと言う。件の句を聞いた浅見光彦の「松尾芭蕉だっけ?」という言葉をたよりに図書館に調べに行くと、ページを折られた痕跡のある芭蕉の本が―!(「雅な悩みごと」)浅見家の面々がちょっと困った時に頼りになる須美ちゃん。みんなの笑顔を取り戻します!(内容説明より)

 

ご存じ、浅見家のお手伝い、須美ちゃんが身の回りのちょっとした謎を解き明かすご近所ミステリー第二弾!・・・らしいのですが、浅見光彦シリーズはTVドラマしか見た事がなく、本は初めてです 歴代光彦役では中村俊介さんが印象に残っているかな 榎本さんも光彦役をしていて、後には兄の浅見陽一郎役でもお馴染みになりました。光彦は総じて甘いマスクの育ちの良いお坊ちゃんでおっとりした印象ですね。

光彦自身は旅先で事件に遭遇する率が高いですが、お手伝いさんの須美ちゃんは浅見家から徒歩圏の商店街がせいぜいということで、本作では浅見家の人たちにまつわる4つの事件、といっても些細な疑問や悩みの解決のまさに「お手伝い」のための謎解きです。なので殺人などの物騒な事件も起こらず、安心して読み進めることができるし、解決後は穏やかで優しい気持ちになりました。 須美ちゃんが買い物の際に組み立てる「今夜のメニュー」も家庭的で美味しそうで真似したくなります。

第一話 雅な悩み事  中学生の浅見雅人のクラスメイトの俳句盗作問題を解決

第二話 智は愛されし 高校生の浅見智美宛てのラブレターに隠された真実を紐解く

第三話 和を繋ぐもの 若奥様の浅見和子のコートに入れられた古い写真の謎を解く

第四話 雪に希いしは 大奥様の浅見雪江が見かけた少女たちの悲し気な理由を探る

北区・西ヶ原にある浅見家の近所には西ヶ原商店街・染井銀座商店街・霜降銀座商店街がありますが、実際その商店街を歩いたこともあるし、北トピアや滝野川警察署、王子神社や飛鳥山公園に音無親水公園などなど、頭の中で思い浮かべることのできる土地勘のある場所が沢山登場するのも親しみが湧きました。

何話かにまたがって登場する売れない画家とその娘のエピソードは謎解きとは関係無いのですが、人の見た目と中身は違うということをさりげなく教えているようでもあります。

それにしても浅見家の人たちは人間出来過ぎているような 

シリーズは未読なので、浅見家の三女の死の真相を謎解く「後鳥羽伝説殺人事件」なども読んでみたくなりました。須美ちゃんの第一弾もね


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命みじかし、恋せよ乙女

2022年09月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年8月16日公開 ドイツ 117分 G

ドイツ・ミュンヘン。幼い娘の誕生パーティに、招待されてもいないのに酒に酔って現れ、別れた妻から「正気?」と追い返されるカール(ゴロ・オイラー)。仕事も家族も生きる希望さえも失ったカールが、泥酔の底で「助けて」とつぶやいた翌日、ユウ(入月絢)という名の若い日本人女性が訪ねて来る。カールの亡き父ルディ(エルマー・ウェッパー)と親交があったというユウは、ルディが生前暮らしていた家を見たいというのだ。よく知らないユウと共に、郊外にある今は空き家となった実家へと向かう羽目になるカール。父の墓の前で手を合わせて涙を流しながら「彼は私に優しかった」と話すユウの言動は、すべてがとても風変りだった。実家に入ると、いい思い出も悪い記憶も次々と蘇り、カールは両親の幻影と共に数日間を過ごすことになる。ある晴れた日、ユウの希望で観光名所のノイシュバンシュタイン城へ出掛けたカールは、土産物売り場で働く義姉に出くわす。彼女から甥っ子で高校生のロベルトが引きこもりになったと聞いて驚くカール。兄のクラウス(フェリックス・アイトナー)が極右政党に入党したことが原因だった。心配のあまり兄の家に立ち寄ったカールは、帰宅した兄と大喧嘩になってしまう。兄クラウスと姉カロ(ビルギット・ミニヒマイアー)とカールの3兄弟は、子供の頃から仲が良くなかった。母親に溺愛されていた末っ子のカールに、兄と姉が嫉妬していたのだ。母に続いて父が亡くなった時には、相続で揉め、以来完全に疎遠になっていた。こうしてカールは次第に目を背けてきた自らの人生と向き合い始める。両親の期待に応えられなかった不甲斐なさ、親の死に目に逢えなかった後悔、家族との縁を切ってきた不義理、そして本当の自分をさらけ出すことが出来なかった過去のすべてー。ユウはそんなカールの耳元でそっとささやく「あなたは今のままでいいの。愛してる。」ずっと止まっていた時計が少しずつ動き始めたカールが、新たな人生へと一歩を踏み出そうとしたまさにその時、ユウが忽然と姿を消してしまう。ユウを捜しに遥か海を越え日本を訪れたカールは、彼女の故郷である神奈川県の茅ケ崎海岸へ向かう。ユウの面影を追ううちにカールがたどりついたのは、茅ケ崎館というひっそりとした旅館だった。そして茅ケ崎館の老いた女将(樹木希林)との思いがけない交流から、カールは哀しくも美しい知られざる人生の物語を知ることになるー。(公式HPより)

 

2018年9月に他界した樹木希林の海外製作初出演作品で遺作となったドイツ映画です。ドイツ出身のドーリス・デリエ監督による、孤独なドイツ人男性が、父親と親交のあった日本人女性と旅して人生を取り戻す姿を描いた作品ですが、哲学的でやや難解。

親や周囲の期待に応える理想の自分と本当の自分の間でもがき苦しんできたカールは、両親の死に心を引き裂かれ酒に逃避して更に人間関係が悪化していく負のループに陥っていました。そんな彼の不安や恐怖を形にしたものが黒い影(ユウは悪霊と呼びます)です。更に久しぶりに訪れた実家で両親の幻影を見るようになり、さらに罪悪感が増していきます。当然酒量も増え、遂には愛娘のミアとの面会もできなくなるのね

ノイシュバンシュタイン城で出会った日本人はユウを見て「あの子は悪霊だ、気を付けた方がいい」とカールに言います。(どんな爺さんなんだ?)ここで観ている方は彼女が生身の人間ではないかもと気付くことになります。突然押しかけてきて振り回している行動も、もう不思議とは思わなくなるという

ユウの「誘い」を受け入れることができなかったカールは、その夜ロベルトの幻影を見て彼が自殺するのではと心配して兄の家に押しかけ追い出されてしまいます。酒に酔い森で寝込んでしまった彼は凍傷になり病院で生死の境をさまよいます。意識のない彼に兄姉は生命維持装置を切る選択をしますが、奇跡的に一命をとりとめるんですね。「父だったら迷わず切るが母は許さないだろう」という二人の会話からも三兄弟の間のわだかまりが透けて見えるようです。

助かったものの、生殖器を喪ったカールは再び深く傷つき、ユウを求めて日本へやってきます。でもその前から彼の機能は停止していたんじゃないのかな?というか、そもそも自分の性に疑問持ってるようにも見えたんだけど。

彼女の故郷と聞いていた茅ケ崎で目にしたユウの姿を追って迷い込んだ宿の窓辺にノイシュバンシュタイン城のスノードーム(一緒にいた時ユウがねだっていた)を見つけたカールは、因縁を感じて女将にユウの写真を見せます。彼女は何か知っている様子でしたが何も言わず首を横に振ります。カールは女物の着物を羽織っていたので、女将は男女両方の浴衣を出してきます。カールが選んだのは女物の方。前合わせを左前に着た彼に、女将は右前に直してやりながら「生きているんだから幸せにならなければ駄目ね」と言います。

翌朝、祭りで出すおにぎり作りを一緒に手伝う彼に、女将はユウが既に亡くなっていることを打ち明けます。ユウは女将の孫で、母が入水自殺をしたことで精神を病い、母の命日に同様に海に身を投げたというのです。

祭りの翌日はちょうど二人の命日で、その夜、女将とカールはユウとユウの母の幻影を見ます。ユウが死んでいることを受け入れられず、必死に彼女の姿を探し、疲れて浜辺で眠り込んだカールが目覚めると、古びたピンクの受話器を見つけます。(カールの実家にあったコードは海中に続いていてその先にユウがいました。導かれるように海に入った彼をユウは連れて行こうとしますが、カールは抗い「もう少しこの世にいたいんだ」と言います。生き続けることを選んだ彼にユウは「人生を楽しんで、また会える日まで」と呟き海の中へ消えていきました。

女将がスノードームを見つめながら、「ゴンドラの唄」を口ずさむ姿、そしてエンドロールとなります。

この「命短し恋せよ乙女~」の歌詞、劇中何度も登場しますが意図はイマイチわからなかった

立ち直るきっかけになったのがユウという日本人女性、しかも亡霊というのもなんだかな~~彼女の孤独がルディを通してカールとシンクロしたってことかしらん?カールは過去と向き合うことで自分をあるがままに受け入れることができたのかな。


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ブレット・トレイン ネタバレあり

2022年09月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2022年9月1日公開 126分 R15+

世界一運の悪い殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)が請けたミッション、それは東京発の超高速列車“ゆかり号”でブリーフケースを盗み、次の駅で降りること。簡単な仕事のはずが、次から次へと“ゆかり号”に乗ってくる殺し屋たち。彼らに狙われ、降りたくても、降りられない! 最悪な状況の中、列車はレディバグと殺し屋たちを乗せたまま終着点・京都へと走る… やがて明らかになる乗り合わせた10人の過去と因縁。そして京都で待ち受ける世界最大の犯罪組織のボス=ホワイト・デス! 思いもよらない展開が連続するミステリー・アクション!(公式HPより)

 

作家・伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」の映画化です。クライムアクションなのにコミカルが勝って、血もドバドバ飛び散るのに全く血なまぐささを感じない、それどころかクスっと笑ってしまうシーンが随所にあるコメディ作品でした。何よりブラピ演じるレディバグのゆるふわでとぼけたキャラがマッチしていました。

ブリーフケースを盗んで次の駅で降りるというごくごく簡単な仕事の筈が、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われるはめになるレディバグ 

双子の殺し屋・タンジェリン(字幕ではミカンと訳されていました)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)。この二人、全く似てない もしかして双子というのはコードネームのようなものなのかしら?でも幼い頃の回想シーンでは確かに兄弟みたいだったけど・・。

彼らは世界最大の犯罪組織を率いるホワイト・デス(マイケル・シャノン)の依頼で、彼の(バカ)息子(ローガン・ラーマン)を救い出し、身代金の入ったスーツケースと一緒に届けるミッションの途中です。このブリーフケースをレディバグが盗んじゃうのですが、次の駅で降りようとしたらウルフ(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)というメキシコの殺し屋が乗り込んできて彼にナイフを突きつけ襲い掛かります。ウルフは花嫁をレディバグに毒殺されたと誤解していましたが、ブリーフケースに跳ね返った自分のナイフであっさり死んでしまいます。

ブリーフケースがなくなっていることに気付いて慌てる二人が席に戻ると、今度はバカ息子が目から血を流して死んでます。実はホワイト・デスの依頼を受けた猛毒使いの殺し屋ホーネット(ザジー・ビーツ)の仕業なんですが、変装の名人という設定でモモもんというキャラのぬいぐるみの中に入っていたのも彼女。 更にウルフが本当に復讐すべき相手も彼女だった。

女子学生風のプリンス(ジョーイ・キング)は、キムラ(アンドリュー・小路)を使って「復讐」をしようと目論んでいて、泣き落としとぶりっこで他の殺し屋たちを油断させます。キムラは息子をデパートの屋上から突き落として重傷を負わせた犯人に復讐するため列車に乗り込んだのですが、それも全てプリンスが仕組んだことでした。彼女はホワイト・デスの娘で父から無視され後継者として認めて貰えない事で父を殺そうとしていたのです。全くこの親にしてこの娘ありだ

一見バラバラに見えた殺し屋たちの目的や素性が後半一気に繋がっていきます。

ホワイト・デスは、彼の妻の死の原因となった殺し屋たちに復讐するため、貸し切りにして全員を“ゆかり号”に集めたのね。でもレディバグは本来請け負う筈だった殺し屋の代わりに雇われていて、彼自身は全く無関係でしたまさに世界一運の悪い男なのですが、窮地に陥る度に勝手に相手が死んでくれるわ、味方が現れるわで、身を守るため以外に彼の方から殺しをすることなく生き残ってしまうという、なんだそれ!

キムラの父で、ホワイト・デスに恨みを持つエルダー(真田広之)が加わり、レモンと4人で京都で乗り込んできたホワイト・デスと彼の手下を相手に死闘を繰り広げます。真田さんはさすがのアクションで魅せてくれました。

「機関車トーマス」をこよなく愛するレモンが、いちいち殺し屋たちをキャラに例えるのも元ネタを知っている身には笑えるツボでした。京都から“ゆかり号”の操縦を任された彼ですが、「高速列車は運転したことない」とか言うし(そりゃ、トーマスは機関車だものね)、炎上大破した操縦席、コントロール不能になった列車が自足350kmで暴走して正面衝突の挙句街に突っ込むなど、怪獣映画さながらの破壊シーンはあまりにも現実味がないので逆に何も考えずに楽しめました。そういえば、レディバグが車内のトイレの温水シャワーや温風に興味津々になっているシーンも「外人あるある」で笑えます。

列車の暴走で破壊された街で呆然とするレディバグを仲介人のマリア(サンドラ・ブロック)が迎えにきますが、車に乗り込もうとすると倒壊物に車が押しつぶされるオチまであって、ついているのかいないのか

タンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)をプリンスに殺されたレモンが、蜜柑を積んだトラックでプリンスを轢いて復讐するのもなんか良い!!

新幹線を模した列車の装飾もド派手だったり、モモもんとかいうヘンテコだけど親しみが持てるキャラが登場したり、とにかく頭空っぽにして笑って楽しめる二時間弱でした


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