日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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少年の 心の闇に 灯を点す

2012年10月15日 15時25分28秒 | 日記
以前、このブログにも書いたが、川越少年刑務所を出所した保護観察処分の青年をとび職人として雇用している。彼は元々、調理師志望なのだが、残念ながら前科のある人間は刑期満了後5年間は調理師免許の受験資格がないそうである。
法律というものは、一方で前科・前歴のある者を支援しながら、一方ではこうした制約を設けて職業の自由を奪っているのである。調理師という職業が人の生命に直接かかわる食べ物を扱う職業であること、出刃包丁や柳刃包丁など殺傷能力のある刃物を道具とするために、こうした矛盾のある措置も止むを得ないのかもしれない。

彼は出所後、半年間の保護観察期間を無事に過ごし、晴れて自由の身になったのであるが、もちろん次に犯罪を犯せば再犯ということになって罪科も重く、刑期も長くなるだろう。
彼は最近、会社の独身寮を出て、友人と二人でアパート暮らしを始めた。仕事ぶりは真面目だし、よほどのことがない限り大丈夫ではないかと思われる。
先日、免許証の不携帯で警察につかまり罰金3000円を支払うことになったのだが、そのときも尿の検査を受けている。覚せい剤使用の前科があるためである。

この青年の雇用を契機に保護観察所の薦めにより「自立支援ホーム」というのに登録したことも以前、ここに書いた。

今回は家庭裁判所のほうから調査官の人が見えられて、補導委託制度の受託について打診があった。
どうやら、保護観察所の「自立支援ホーム」の登録を見て家庭裁判所の方も動いたようである。

家庭裁判所にまわされてくる少年審判の内で、保護観察や少年院送致など最終的な処分を決める前に「補導委託」といって民間のボランティアへ非行のあった少年をしばらくの間、預けて仕事や通学をさせながら、生活指導をしてもらうという制度である。

わが社は営利企業であるから、学生を預かって通学させるボランティアはできないが、勤労意欲のある少年であれば預かることにやぶさかではないと回答した。

さて、今回の本題に入ろう。一昨日のことであるがハローワークから電話が入った。
定時制高校へ通う17歳の高校生を雇って欲しいというのである。定時制高校は4年制であるから再来年の3月まで通学しなければならない。しかも5時45分までに学校へ行かなければならないそうである。

人伝の電話では採用できないから、本人と面接をしてから考えますと答えると、バイクが壊れていて面接に行く足がないのだという。
では、採用になっても通勤できないではないかというと、会社の独身寮へ入りたいのだという。

それならば、私が送迎するから履歴書と職安の紹介状を持ってきて欲しいと伝えて待ち合わせ場所を決めたのだが、翌日の9時に約束の場所へいったら本人が来ていなかった。
携帯電話の番号は聞いてあったので、電話をかけると、約束の場所を間違えたという。しかし、その付近にマクドナルドの店は他になく間違えようはないのだ。おそらく彼は寝坊したのだろうと思う。

事務所へ連れてきていろいろと話を訊くのだが、なぜかおどおどした感じで口が重い。
この少年は、最近まで回転寿司の皿洗いのアルバイトで月に6~7万円の収入を得て学費と食費をまかなっていたという。しかし、洗剤で手が荒れて皿洗いの仕事を続けることが困難になったのだという。

少年の母親はこの少年を含む3人兄弟を出産後、精神に異常ををきたし、離婚して他県の実家へ帰ったそうである。
少年らは父親との父子家庭で育ったのだが、塗装業を自営する父親の稼ぎは悪く、学費も食費も自分で稼ぐほかなかったのだという。
父親は酒飲みで、酔うと少年に暴力を振るうのだという。だから、なんとか自立して学業は続けたいのだという。学費・食費も満足に与えられず酒に酔っては暴力を振るう父親との過酷な生活は察するに余りある。
少年の心の中はのぞけない。しかし、17歳にして肉親の情を断ち自活の道を選んだからには、何とか身の立つようにしてやりたいと思うのが人情というものではなかろうか。
安っぽい同情ではなくて、居住できる場所、働ける機会を与えてやることである。後は、少年自らが己の進路を切り開いて行くよりほかはない。

身長が160センチにも満たない小柄な少年は栄養不足気味でいかにも非力に見える。肉体労働に耐えられるものか甚だ疑問ではあるが、資材置き場の片付けなどから徐々に体力を養っていけば少しは使えるようになるだろうと思い採用することにした。

今日は午後2時に少年の自宅まで布団やら身の回りの用品を取りに行く。入寮を済ませてから学校へも行かなければならないのだからなかなか忙しい。
コメント (2)
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