日々是好舌

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唄はちゃっきりぶし男は次郎長

2015年12月21日 13時23分28秒 | 日記
 ちゃっきり節は郷土静岡の新民謡である。
 1927年(昭和2年)、静岡市近郊に開園した狐ヶ崎遊園地(後の狐ヶ崎ヤングランド 1993年閉園)のコマーシャルソングとして、静岡電気鉄道(現・静岡鉄道)の依頼によって制作された。

 静岡電鉄は当時すでに名のある詩人であった北原白秋に懇請して作詞を引き受けさせたが、取材のため静岡を訪れた白秋は、静岡の花柳地・二丁町・蓬莱楼で芸者遊びを続け、一向に詩作に取りかかろうとしなかった。
 
 豪遊続きの長逗留に電鉄会社側が作詞依頼の取り下げも検討し始めた頃、老妓の方言によるふとした一言にインスピレーションを得て、白秋は30番まである長大な歌詞を書き上げたという。

 作曲者の町田嘉章(1888年 - 1981年)は、邦楽作曲家で民謡の研究家でもあるが、白秋の知人であったことからその推挙により「ちゃっきり節」の作曲を引き受けることになった。

 この曲は1927年11月25日に狐ヶ崎遊園地を会場として、同時に白秋・嘉章のコンビによって作られた「狐音頭」「新駿河節」と共に、地元芸妓衆の歌・踊りによって発表された。


 
 静岡鉄道のホ-ムページに(原本のまま全30節)作詞:北原白秋、作曲:町田嘉章ということで掲載されている。

1.
唄はちやっきりぶし、男は次郎長、花はたちばな、夏はたちばな、茶のかをり。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
2.
茶山、茶どころ、茶は縁どころ、ねえね行かづか、やぁれ行かづか、お茶つみに。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
3.
駿河よい国、茶の香がにほうて、いつも日和の、沖は日和の 大漁ぶね。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
4.
さァさ、また行こ、茶山の茶つみ、日本平の 山の平の お茶つみに。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
5.
日永、そよかぜ、南が晴れて、茶つみ鋏の、そろた鋏の 音のよさ。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
6.
昔や火のなか、草薙さまよ、いまは茶のなか、茶山、茶のなか、茶んぶくろ。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
7.
山で鳴くのは やぶ鴬よ、茶つみ日和の、晴れた日和の 目のとろさ。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
8.
帯はお茶の葉、鴬染よ、あかい襷の そろた襷の ほどのよさ。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
9.
歌へ、歌へよ、茶山の薮で、ほれてうたわにや、そろてうたわにや 日がたたぬ。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。
10.
どんどどんどと 積み出すお茶は 茶摘み娘の 歌で娘の 摘んだ葉茶。
ちやっきり ちやっきり ちやっきりよ、
きやァるが啼くから雨づらよ。( 以下省略)

 さて、ここで一つ二つ厄介な問題がある。

 冒頭に(原本のまま全30節)と断り書きがあるのにもかかわらず数箇所の誤字があるから困るのだ。

 まずは第5節の『茶つみ鉄の、そろた鉄の』はどう考えても『茶つみ鋏の、そろた鋏の』であろう。

 同様に第11節の『管の笠』は『菅の笠』。第14節の『蜜紺』は『蜜柑』。第18節の『茶の寛』は『茶の實』つまり茶の実。第19節、20節の『賊機』は『賤機・しずはた』。第27節の『云なにや』は『去なにや』ではなかろうか?

 また、白秋がインスピレーションを得たという地元の老妓の「蛙が鳴いているから (明日は)雨だろうね」という意味の方言「蛙(きゃある)が鳴くんて 雨ずらよ」は白秋自身が「鳴くんて」が正しいといっているのにもかかわらず反映されていない。白秋はこの部分を甚く気に入ったそうで各コーラス共通の囃し詞として用いている。

 お節介者の私は直ちに当該企業に連絡をとって訂正するように促したのであるが現在に至るも直されていない。

 天下に高名な詩人・北原白秋がいかに酩酊状態で作詞したからといってかかる不手際は絶対にするまいと信じている。