日々是好舌

青柳新太郎のブログです。
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名を聞いて恨みつらみがよみがえる

2016年09月21日 15時58分09秒 | 日記
 介護保険を利用して週に二度リハビリに通っている。リハビリ施設で送迎してくれるから身体一つで行くだけである。施設に着くと先ずは体温や血圧を測定する。血圧が高い場合は運動が制限されることがある。

 リハビリは平行棒を利用した歩行練習や階段の昇降、自転車や筋トレなど多項目にわたる。施設に通ってくる人は全員、看護保険が適用されている老人であり身体や運動能力に問題を抱えている人たちばかりである。

 一度に20人近くの通所者がリハビリに励んでいるが、訓練終了後の待機時間におしゃべりするのも老人にとっては楽しいひと時である。

 何人かの通所メンバーとは話している中で共通の知人がいたり趣味が共通したりで親近感を持っている。逆にまったく交流のない通所者もいる。
そんな中の一人に「オサダ」なる人物がいる。私が通所を始めたころにはすでに「オサダ」はいた。しかし、彼とは一度も口を利いたことがことがなかった。「オサダ」は自力では歩けないほどの身体障碍者で言語もあまり明瞭ではない。

 今週の火曜日のリハビリが終わってコーヒータイムになったときである。私の席の正面に「オサダ」がスタッフに抱きかかえられて着席した。そのときにスタッフが「オサダさん」と呼ぶのを聞いてこの男が「オサダ」という名前であることを認識した。と、同時にこの「オサダ」なる男が元は県の職員で現役のころには仕事もできないくせに人一倍威張っていたことを急に思い出した。

 そこでオサダさんは県の職員でしたね。土木事務所の出先に勤めていましたね・・・と、訊くと、そうだと答えた。あの時は所長がアンドウさんで主任がホソザワとフジワラだったですね・・・と、追い打ちをかけると、そうだがアンタは一体どこの誰だというから、私は元〇〇組のアキヤマという者だと言うとそんな人は知らないとうそぶいていた。

 私はアンタから事務所へ呼びつけられてさんざんに叱られた。しかしあまりにも的外れな内容だったから図面を見たら同じ梅ヶ島温泉昭和線の工事だったが〇〇組の仕事では無くて▢▢土建工業の仕事だった。私はアンタの勘違いで▢▢土建工業の代わりに30分以上も直立不動で叱り飛ばされたんですよ。

 私はあの時▢▢土建工業が地元の人たちを3人も生き埋めにした事故現場を復旧していたんですよ。あまりにも酷い話なのでアンドウ所長に訴えたら以後はオサダを相手にしなくていいから全部アンドウ所長まで言ってこいということだったんです。憶えていませんか。

 私は記憶力がいい。しかし、よく考えてみればすでに25年以上も前の出来事である。オサダが憶えていなくても何の不思議もない。私は自分で担当した工事はどんな些細な仕事でもほとんど憶えている。

 この死亡事故現場の工事は指名入札で発注されたのであるが落札を希望する業者が一社もいなかった。土砂崩壊で生き埋めになって亡くなった三人を収容した後はそのまま数年間も工事を中断して放置していたのである。

 私は秋葉山の山伏に頼んで地鎮祭をしてから着工したのです。祭壇を設け塩や酒や供物を並べ修験道の装束を着けた山伏が法螺貝を吹き鳴らしてお清めをしたのです。

 オサダさんアンタも現役のころはずいぶんと威張り散らしていたもんだが今ではてんで意気地がないな。役人は引退すると案外早く弱ってしまうことが多いね。こんな嫌味な話をオサダは黙って聴いていた。

 これからもリハビリに行けば必ずオサダと会うだろう。しかし二度と昔の話をすることもなければ嫌味を言う積りもない。

 写真は安部川上流に多い「ドクウツギ」の実です。毒気の多い私の自戒とご理解ください。
 
コメント
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