不稼働口座に管理料(口座維持手数料)をかける案を某大手銀行が検討していると報道された。銀行は「お金を預けていただく」というのから「お金を預かってやる」といった姿勢になってきた。アベノミクスのおかげでマイナス金利時代となり預金者からお金を預かって、そのお金を貸し付けて利ざやを稼ぐといった本来の銀行の商売がうまくいっていない。地方銀行は経営危機におちいっているものもあるそうだ(朝日新聞Digital 「地方銀行7割が減益、収益モデル崩れ、日銀への恨み節も」2019/05/19参照)。
銀行が万が一破綻した場合に、ペイオフがあるので銀行に預けておいても大丈夫だと思っている人が多い。これが1000万円までの貯金とその利子に限定されていることを知る庶民は意外と少ない(庵主もそうであった)。おまけに1000万円が払い戻されるのには、なんだかだと手続きがいって1年近くかかる可能性が高い。
2010年9月に破綻した日本振興銀行がペイオフの適用を受けた最初で唯一の例である。藤原久敏氏の著『あやしい投資話に乗ってみた』を読むと、南大阪にあったこの銀行の支店はなんとも言えない安物の事務所で著者はそこを訪れて愕然としたそうである。この銀行は定期預金専門だったそうであるが、貸し倒れとずさん経営などで破綻した。
この銀行の破綻時5800億円の預金のほとんどがペイオフ限度以下の預金で、約3% (3500人)が1000万を越えていた(総額で120億)。中にはマンション購入費としてたくわえていた資金の4000万円を預けた老夫婦もいたそうだ。総額が意外と少なかったのは、銀行が良心的(?)に1000万以下に預金をおさえるように預金者に指導していたからだという説がある。信じられないが、破綻を予想して運営し後始末を預金保険機構にまかせる魂胆だったと言う。
ともかく現在、普通預金の標準利率は0.001%で、1000万円預けて年100円、定期預金の利率は0.01%で年1000円の利息である。ハイリスクハイリターンの商品に投資し、失敗したら自業自得といえるかもしれないが、こんな些少な利息で恐るべきリスクを預金者は抱えこんでいる事になる。まさか自分があずけている銀行が倒産するなどとは思わないから、平気でいるわけだがはたしてそうだろうか?上記の藤原氏は日本振興銀行の定期利息が他に比較して異様に高いので警戒したが、何か起こったとき本のネタになると思ってお金を預けたそうである。
藤原氏はペイオフのない決済預金(これは利息が付かないが普通預金も同様の状態)にすべしと言っている。庵主もまったく同意見である。あるいはタンス預金するか貸金庫にあずけてもよい。なにも知らないで、地方銀行に有り金(多分1000万以上はあると思う)をほとんど預けている田舎の父母にも、そのようにすすめるつもりだ。
ペイオフが発動される前までは、銀行が破綻しても原則全額が払いもどされていた。それゆえにペイオフは庶民のことを考えて作らえた制度ではなく、強欲で無能の故に経営破綻した銀行の責任を一般庶民に背負わせようとする金融業界のたくらみに違いない。くわばらくわばら。
参考図書
藤原久敏 『あやしい投資話に乗ってみた』 彩図社 2014
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