美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

大地震による遺伝子

2011-03-24 15:13:31 | Weblog

2009年に韓国で上映された映画「TSUNAMI」。まるで今回の三陸沖で発生した東北・関東大地震を予知するような内容でした。地震の恐ろしさは神戸阪神大震災で、身にしみて経験しているはずの日本の人々にも、津波の脅威、破壊力には改めて、愕然とするしかありません。地震が発生して僅か20~30分で押し寄せる津波には、幾ら、普段から教えられ、訓練や案内などがあったとしても、迅速に対応して、安全な場所まで退避できるかどうか考えてしまいます。ましてや、老人人口の多い、東北の漁村や農村であれば、いくら逃げたくても、若い人のようには動けません。はるかに想定を超えた10m以上の波が、瞬く間に町全体を飲み込んでしまう映像を目のあたりにすると、虚脱感さえ覚えます。

今回、地震、津波に対する韓国での報道をみると、最初はその凄まじさ、悲惨さを伝えるものが多かったようですが、数日たった今、むしろその関心は、被害を受けた人々の冷静さと、忍耐力への驚きにあります。避難所で極限状態にある人々が、誰も不満一つ言わず、家族を亡くした人でさえ、周囲への動揺を考え大声で泣くことを控え、また配給された食料を譲り合い、静かに列を成して順番を待つ姿は、海外の記者には奇異にさえ映るようです。韓国の民衆は、その地理的な条件から、侵略や、そこから引き起こされる内乱など、人間による災難を多く経験してきました。一方、外憂はないものの、己が立っている大地が揺れ、人間が創り上げたすべてを一瞬で破壊し、無にしてしまう地震を、誰よりも多く体験してきた日本人。「運を天に任し、今を大事に生きる。」といった諦めと、ある意味悟りにも似た価値観は、地震などの人智が及ばない天災に多く見舞われた歴史や風土も関係し、何かしらの災難を受けた時、韓日の人の感情表現に違いがあるとすれば、‘災難の遺伝子’の違いからくるのかも知れません。

             

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ダ・ヴィンチの知恵

2011-03-24 15:11:56 | Weblog

ロボットによる外科手術というと、まだ未来の話と考える方が多いと思いますが、実は既にアメリカ、ヨーロッパで2千台近くの医療ロボットが稼働し、通常診療としておこなわれています。この手術支援ロボットは、アメリカで1990年代から、傷ついた兵士を米国本土や空母から医師が遠隔操作で手術するという発想から開発が始まり、2000年に承認されたシステムです。解剖学の分野でも業績を残したイタリアの天才の名を取って「ダ・ヴィンチ」と名付けられました。韓国でも2005年から始まり、現在30台以上が導入され、保有台数は、アメリカ、イタリアに次いで世界3位、年間4000件以上の手術がこの医療ロボットにより施行されています。特に泌尿器分野で多く利用され、欧米では前立腺癌の手術の70%以上が「ダ・ヴィンチ」による手術です。

一方、ロボット先進国日本ではというと、このシステムが薬事法上の承認を受けたのが、ようやく2年前で、国内では6台ほどが導入され、実際の手術も研究目的が主で、本格的な治療はこれからという段階です。日本の場合、厚労省での新薬や新しい医療機器治療、治療法に関しては慎重で、審査やその承認には、他国と比べてかなり時間が必要で、高度先進医療の臨床部分での導入が遅れがちであるという声も聞こえます。また、保険と自費の混合診療が認められておらず、ある疾患の治療に、一部自費負担で行うということができない為、いきなり全額負担となり、その面でも「ダ・ヴィンチ」の導入が進まない理由があるかも知れません。こうした状況で追い打ちをかけるように、昨年9月に名古屋大学でこのシステムを使用して胃がん手術を行った男性患者が手術後に亡くなるという発表がありました。ロボット手術と言っても、外科医が3D画像を見ながら、やや離れたコックビットでロボットアームを操作して行う内視鏡手術であり、当然 医師の熟練と経験が必要なものです。手振れが少ない、より繊細な内視鏡操作が可能とされ、直接手動でやるより有利性も多い反面、全ての手術が可能ではなく、適応判断が必要です。医療において安全性は何より優先されるべきですが、新しい治療法の開発と進歩には、どうしてもある程度のリスクが伴うということは、常に医学における課題でしょう。

‘健康に生きるには’という問いに、ダ・ヴィンチはこんな言葉を残しています。「医者を割けよ。その薬は錬金術の一種。それを飲むものは間違った忠告を受け入れている。」当時の医学レベルの問題か、彼が医者嫌いだったのかは解りません。

 

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