ソウルに住む親せきの子供がアメリカでの1年ほどの留学生活を終えて先日戻ってきました。まだ小学校高学年ですが、逆に吸収の早い今こそ生の英語を身に着けさせるだけでなく、子供の頃から海外を知ることで広い視野を持って生きて欲しいという願いがあったようです。その母親からのメールを見ると近所のアメリカ人に送る英文メールを子供に手伝ってもらった様子などが嬉しげに綴られており、決して少なくない費用と手間をかけて小さな子を留学させることへの是非は別として、現時点では親として満更でもないようです。
韓国では1990年以降、グローバル化が国家政策の一つとして位置付けられたことで、英語習得は国際競争力を高める為には必須であると認識されました。それでなくとも子供の教育には人一倍熱心である韓国の親たちが我が子に「使える英語能力」を与えたいと生活費を削っても早期留学ブームが起きたのは必然のことだったでしょう。1997年の通貨危機により一時的に留学生数は減少するものの、1999年から急激に経済成長率も回復、経済危機を経験したことでグローバル化への意識はより強まることで、早期留学を目指す家庭はより多くなりました。2001年頃には子供の留学目的で妻子を海外に住まわせ、父親は国内に残って生計を支える「キロギ・アッパ(雁のお父さん)」という言葉が皮肉まじりに流行し、家族問題としても取り上げられます。そんな「キロギ・アッパ」に対する批判の声が大きくなると母親は同行させず「ナ・ホルロ留学(私一人で留学)」が増加しました。さらに早期留学に備えて、アメリカなどの英語圏国家の市民権を得るための「海外遠征出産」など傍目からは行き過ぎとも思えますが、その熱意には頭が下がります。一方、海外で大学まで卒業したものの韓国内の企業に就職するには韓国語能力や国内常識が不足しマイナスとなると聞くや国内の大学、大学院に「逆留学」する現象まで起きました。NSF(National Science Foundation)の最新の統計による米国大学への国別留学生数を見ると、韓国は中国に次いで2位、大学院生数でも3位です。日本の学生が少子化や経済的理由の他、全体的な内向的志向から年々留学者数、特に欧米への進学者が減少(7位、9位)しているのとは対照的です。
一部の富裕層にみられる「退避留学、現実逃避留学」は褒められたものではありませんが、多少意図は異なっても「かわいい子には旅させよ」の意義と親の思いは古今変わらないようです。もし遠い未来、過去に留学できる時代が現実となれば、それこそ温故知新を体現することで争いを繰り返さない世界が訪れることを一人空想してもみました。
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