今年夏ごろ、二年半ぶりにロンドンで盗難された韓国人演奏家所有のバイオリンが無地発見されたというニュースがありました。何故たかが一楽器の発見が世界中の話題になったかといえば、このバイオリンが何を隠そう名器「ストラディバリウス」だからです。16世紀か17世紀らにかけて活躍したイタリアの名工 アントニオ・ストラディバリウスは、93歳という当時としては長命の生涯で 約1100挺の弦楽器を制作、現存するのは600挺ほどとでオークションに出れば数億から十数億の値段がつきます。このように多くの音楽家が憧れ、楽器制作者、研究者はその音の謎を探るべく最新の技術まで駆使し分析していますが、未だに明確な答えはでていません。
陳昌鉉(チン・チャンヒョン)さんは1943年、14歳で日本に渡り、教師を目指して苦学の末、明治大学英文科を卒業するも韓国人ということでその夢は挫折します。失意の中で聞いた講演の中で「名器ストラディバリウスの再現は不可能」という言葉が彼の一生を変えました。その時から独学で、バイオリン制作に心血を注ぎ、ついに1976年アメリカで開催された「国際バイオリン・ビオラ・セロ製作者コンクール」で、6部門中5部門で金メダルを獲得、さらに1984年、アメリカバイオリン製作者協会より、「無鑑査バイオリン製作家」として認定され、「マスターメーカー」の称号を授与され名工とし、「東洋のストラディバリウス」と称されるまでになりました。昨年82歳の生涯を閉じられましたが、もしストラディバリウスほどの時間が与えられたらさらに素晴らしい作品を残されたかと惜しまれます。
生演奏が聴けるお洒落なバー。アルコールがほど良く入ったあたりで徐に立ち上がり、置かれたピアノに向かい好きなジャズでも弾き始める・・・まさに映画のワンシーンによくある場面です。この年になると、何で子供の頃、バイオリンとは言わずとも、親に通わされたピアノでも嫌がらずに続けなかったかと後悔します。勿論、続けたところで天性の‘絶対無音感’の私ですから、ストラディバリウス音を聴き分けるどころか、ドレミも‘どれ見?’でしょうが・・・
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