海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

中山発言

2008-10-04 16:13:29 | 政治・経済
 三里塚闘争はごね得だの日本は単一民族だの日教組をぶっ壊すだのと、暴言を連発して就任五日で国土交通大臣を辞任するはめとなり、本人の頭と人格がぶっ壊れているとしか思えない中山成彬議員が次の衆議院選挙には出ないことを表明した。当然といえば当然のことと言えるかもしれない。しかし、最初から出馬しないことを予定していて、どっちみち麻生内閣は短命だから大臣という地位を目一杯利用しようと暴言を連発したのなら、あたかも不出馬が反省の証であるかのように自己演出する欺瞞を許してはならないし、その暴言の責任はさらに問われるべきだ。
 特に「日教組をぶっ壊す」という発言は「確信犯」であることを中山議員本人が認めている。労働者の団結権は憲法28条で認められた「国民」の権利であり、労働組合はその団結権を組織として実現したものだ。「日教組をぶっ壊す」という中山議員の発言は、大臣という地位を利用して憲法を蹂躙しているのであり、たんなる暴言と片づけてすまされるものではない。
 加えて、マスコミの注目を浴びている中で、それを計算して日教組破壊を言上げするのは、日教組への暴力を誘発しかねない危険性さえある。全国教研集会など日教組の催しに右翼団体が押しかけ、悪質な嫌がらせを行うことにより、会場が借りられないという状況が生じている。それ以外にも日教組への暴力的な嫌がらせは度々行われてきた。現職の大臣という地位を利用して、日教組破壊を扇動することが何を誘発するか。中山議員はそれを考えなかったのか。いや、それを考えたうえでの「確信犯」だったのではないか。中山議員の暴言は、自民党の選挙戦略に影響を与えるというような内輪の問題ではすまされない社会的影響を持つものであり、その悪質さは大臣や議員を辞めたから許されるというものではない。
 日教組の組織率と学力問題を結びつけて批判する時、中山議員の脳裏には、沖縄の教職員組合や昨年の教科書検定問題もあったのではなかろうか。教科書検定結果発表によって沖縄県民の怒りが湧き上がり、9.29県民大会、訂正申請による記述の修正にいたる過程を、中山議員は苦々しい思いで見ていたはずだ。事の発端となった大江・岩波沖縄戦裁判には、青いリボンを模したバッジを胸に付けた人たちが、傍聴券を求めてよく並んでいる。
 全国学力テストの結果を政治的に利用し、保護者の耳に入りやすい形で組合批判をやるのは中山議員に限ったことではない。『誇りある沖縄へ』で宮城能彦沖大教授も同じことをやっている。今時の学校現場の状況を何も知らないか、あるいは知ってて意図的にやっているのか、いずれにしろその無責任な発言は、教師と保護者の信頼関係や協力関係を破壊して、学校現場の状況を悪くすることはあっても良くすることはない。私は農業高校で6年勤めたが、学力面で困難を抱えている生徒達に、農業科の教諭や実習教諭達が一生懸命に関わっている姿を見てきた。普通科の教諭として頭が下がる思いだったが、現場で汗をかいている教職員や生徒達にとって、中山議員や宮城教授の暴言はマイナスの結果しかもたらさないのだ。
 中山議員のような人物が大臣になるほど自民党の劣化は進んでいるわけだが、「自民党をぶっ壊す」といった小泉元首相が残した、これも一つの成果なのだろう。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 教科書訂正申請 | トップ | 『父の戦記』を読む »
最新の画像もっと見る

政治・経済」カテゴリの最新記事