「風流無談」第10回 2008年4月5日付琉球新報朝刊掲載。
昨年の六月から月一回、第一土曜日に「風流無談」というこの連載をやらせてもらっているのだが、先月は不掲載となった。何名かの読者から、どうして載らなかったのか、という質問があったので、理由を今年から始めた「海鳴りの島から」というブログに書いた。関心のある方はご一読願えればと思う。
三月十七・十八の両日、名護市の三月定例議会を傍聴した。二人の議員が名護市の談合問題を追及するというので注目した。
昨年から今年にかけて、「週刊朝日」や「週刊金曜日」「文藝春秋」などの週刊誌・月刊誌で、名護市発注の事業や北部振興策関連事業の「談合疑惑」と米軍基地に関連した「沖縄利権」の問題が、くり返し取り上げられている。中には現職の市長や副市長、元市長、国会議員、「北部のドン」といわれる開発会社の会長などの実名を挙げて、「基地利権にむらがる沖縄マフィア」という連載を行っている雑誌もある。
名前を挙げられて疑惑を指摘されている人たちの中には、名桜大学の理事を務めている人が何名もいる。教育関係者が疑惑の対象として挙げられるのは、それだけで大きな問題だと思うが、これはたんに一個人や一大学の問題ではすまない。名護市が「談合」や「基地利権」の巣窟のように報じられ、市の印象が全国的に悪化することで、とばっちりを受けるのは全市民である。また、実際に「官製談合」が行われているなら、それが事件となることにより市が受ける打撃も、そのまま市民に跳ね返ってくる。
三月十七日の一般質問で屋部幹男議員は、週刊誌や月刊誌に掲載された記事を示しながら、これらが事実に反することを書いているなら、市長や副市長は出版社を名誉毀損で訴えるべきではないかと追及した。それに対して島袋吉和市長は、談合の事実はないとし、関与するつもりもないとかわした。それ以上議論は進展しないで終わったのだが、そのような曖昧な形でやり過ごしてすまされるのだろうか。
現在も続いている「週刊金曜日」の連載では、守屋武昌事務次官の更迭に島袋市長もかかわっていたことや、末松副市長とかかわりの深い設計会社に高額事業の受注が目立つ、などということが書かれている。それに対して抗議も何もしないということは、実際にやましいことがあるか、あるいは下手に動くとまずいことがあるからではないか、と疑いが深まってもしようがないであろう。市民を代表する公的立場にある者は、市民に対して疑惑を積極的に晴らす義務があるはずだ。傍聴していて、島袋市長にも末松副市長にも、そのような姿勢がまったく感じられなかった。
翌十八日には、大城敬人議員が名護市発注の工事をめぐる「談合疑惑」について、独自に調査した資料を使って質問した。特に、非公表となっている最低制限価格と同額で落札している事業(一千万円以上)が、平成十八年度だけで五件もあり、極めて近い額で落札している事業も多いと指摘し、追及しているのに注目した。
大城議員の資料によると、例えば許田護岸整備事業(その1)では、入札予定価格が69,523,809円で最低制限価格は55,904,761円に設定されていた。それに対して落札額は55,904,761円と、ピタリ一致しているのである。
名護市では、最低制限価格を入札予定価格の何%に設定するかは、事業規模に応じて市長や副市長などが決定し、入札日まで封印して管理するという。つまり決定者以外は最低制限価格がいくらか分からないようになっている。にもかかわらず、落札額が同額の事業が五件もあるのはどういうことなのか。
島袋市長や末松副市長は、そういうこともあり得る、と答えるだけであったが、そう何度も1円単位まで当たるものなのか。ちなみに長崎県対馬市では、二〇〇五年の九月に実施された市発注の公共工事の一般競争入札で、市が設定した最低制限価格と同額での落札が二一件のうち三件あったことから、市議会に調査特別委員会(百条委員会)が設置され、結果として助役を含む市の幹部が相次いで逮捕されるという事態になった。そこでも当初、市の助役は、「コンピューターソフトを使えばピタリはあり得る」と議会で答弁していたのである。
名護市議会は与党多数であり、百条委までは行かないと島袋市長らは高をくくっているのかもしれない。あるいは週刊誌や月刊誌がいくら書いても、地元のマスコミが大きく扱わないかぎりは読者も限られ、市民の関心も低いとあなどっているのかもしれない。だが、みずから身の潔白を証明しないかぎり、疑惑は市民の間に着実に広まっていくだろう。
これらの問題は辺野古への新基地建設や米軍再編と関わっていて、名護市だけの問題ではない。「疑惑」が曖昧なまま片付けられてはならない。
昨年の六月から月一回、第一土曜日に「風流無談」というこの連載をやらせてもらっているのだが、先月は不掲載となった。何名かの読者から、どうして載らなかったのか、という質問があったので、理由を今年から始めた「海鳴りの島から」というブログに書いた。関心のある方はご一読願えればと思う。
三月十七・十八の両日、名護市の三月定例議会を傍聴した。二人の議員が名護市の談合問題を追及するというので注目した。
昨年から今年にかけて、「週刊朝日」や「週刊金曜日」「文藝春秋」などの週刊誌・月刊誌で、名護市発注の事業や北部振興策関連事業の「談合疑惑」と米軍基地に関連した「沖縄利権」の問題が、くり返し取り上げられている。中には現職の市長や副市長、元市長、国会議員、「北部のドン」といわれる開発会社の会長などの実名を挙げて、「基地利権にむらがる沖縄マフィア」という連載を行っている雑誌もある。
名前を挙げられて疑惑を指摘されている人たちの中には、名桜大学の理事を務めている人が何名もいる。教育関係者が疑惑の対象として挙げられるのは、それだけで大きな問題だと思うが、これはたんに一個人や一大学の問題ではすまない。名護市が「談合」や「基地利権」の巣窟のように報じられ、市の印象が全国的に悪化することで、とばっちりを受けるのは全市民である。また、実際に「官製談合」が行われているなら、それが事件となることにより市が受ける打撃も、そのまま市民に跳ね返ってくる。
三月十七日の一般質問で屋部幹男議員は、週刊誌や月刊誌に掲載された記事を示しながら、これらが事実に反することを書いているなら、市長や副市長は出版社を名誉毀損で訴えるべきではないかと追及した。それに対して島袋吉和市長は、談合の事実はないとし、関与するつもりもないとかわした。それ以上議論は進展しないで終わったのだが、そのような曖昧な形でやり過ごしてすまされるのだろうか。
現在も続いている「週刊金曜日」の連載では、守屋武昌事務次官の更迭に島袋市長もかかわっていたことや、末松副市長とかかわりの深い設計会社に高額事業の受注が目立つ、などということが書かれている。それに対して抗議も何もしないということは、実際にやましいことがあるか、あるいは下手に動くとまずいことがあるからではないか、と疑いが深まってもしようがないであろう。市民を代表する公的立場にある者は、市民に対して疑惑を積極的に晴らす義務があるはずだ。傍聴していて、島袋市長にも末松副市長にも、そのような姿勢がまったく感じられなかった。
翌十八日には、大城敬人議員が名護市発注の工事をめぐる「談合疑惑」について、独自に調査した資料を使って質問した。特に、非公表となっている最低制限価格と同額で落札している事業(一千万円以上)が、平成十八年度だけで五件もあり、極めて近い額で落札している事業も多いと指摘し、追及しているのに注目した。
大城議員の資料によると、例えば許田護岸整備事業(その1)では、入札予定価格が69,523,809円で最低制限価格は55,904,761円に設定されていた。それに対して落札額は55,904,761円と、ピタリ一致しているのである。
名護市では、最低制限価格を入札予定価格の何%に設定するかは、事業規模に応じて市長や副市長などが決定し、入札日まで封印して管理するという。つまり決定者以外は最低制限価格がいくらか分からないようになっている。にもかかわらず、落札額が同額の事業が五件もあるのはどういうことなのか。
島袋市長や末松副市長は、そういうこともあり得る、と答えるだけであったが、そう何度も1円単位まで当たるものなのか。ちなみに長崎県対馬市では、二〇〇五年の九月に実施された市発注の公共工事の一般競争入札で、市が設定した最低制限価格と同額での落札が二一件のうち三件あったことから、市議会に調査特別委員会(百条委員会)が設置され、結果として助役を含む市の幹部が相次いで逮捕されるという事態になった。そこでも当初、市の助役は、「コンピューターソフトを使えばピタリはあり得る」と議会で答弁していたのである。
名護市議会は与党多数であり、百条委までは行かないと島袋市長らは高をくくっているのかもしれない。あるいは週刊誌や月刊誌がいくら書いても、地元のマスコミが大きく扱わないかぎりは読者も限られ、市民の関心も低いとあなどっているのかもしれない。だが、みずから身の潔白を証明しないかぎり、疑惑は市民の間に着実に広まっていくだろう。
これらの問題は辺野古への新基地建設や米軍再編と関わっていて、名護市だけの問題ではない。「疑惑」が曖昧なまま片付けられてはならない。
→屋部幹男でしょう。
訂正しました。
あっちの人かと想像していました。
「市民投票」の時はあっちだったでしょう。
本質的には保守なんでしょうが。
でも、えらい人ですね、向うの本質が見えちゃって、
新基地なぞ作らせてたまるかって、変わられた。
沖縄の、今、基地容認の首長を支持している人々も、
変わる可能性を信じたいものです。
今度、県議選に出るようですが、保守革新で
議席を分け合うのもいいけど、屋部氏応援したい。