海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

昭和初期

2008-11-20 23:52:15 | 政治・経済
 16日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」で、田母神元航空幕僚長の論文問題をやっていた。その中で司会の田原総一朗氏が、現在の社会状況は昭和初期に似ている、自衛隊のクーデターの可能性だってある、それなのにほとんどのマスコミが田母神問題に及び腰で、きちんと追及していない、と批判していた。金融恐慌と貧困層、失業者の増大、政治や議会の機能低下、軍部の台頭と専横など、昭和初期と現在の類似点を指摘する人は田原氏に限らない。そういう中で、元厚生次官らへの連続殺傷事件が発生した。犯行の手口を見るとプロの仕業ではないかと思えるほどで、政治家と官僚の違いはあっても、まさにテロが連続した昭和初期の様相を思わせる。
 今回のテロ事件が政治目的を持って組織的に行われたものだとしたら、これからさらに事件は拡大するかもしれない。犯人が単独犯で早期に逮捕されたとしても、社会不安の醸成というテロがもたらす効果はすでに上がっている。何かとても嫌なものがこの社会を覆っている。そう感じている人は多いだろう。しかし、そういう市民の「漠然とした不安」につけ込み、「テロ対策」の名のもとに治安強化を一気に進め、公安警察や自衛隊が政治の前面に出てこようとする動きには、注意し警戒しなければならない。それこそ昭和初期の過ちのくり返しになりかねない。
 歴史を後から眺めて、あのときが大きな転換点だった、と指摘するのはたやすい。しかし、歴史の渦中にあってその転換点を見抜き、適切に対処するのは容易ではない。昭和初期において、政治家、メディア、知識人、市民いずれもそれに失敗し、戦争への道を進んでいった。今、私たちはどのような位置にいるのか。よくよく考え、現実の動きを見通さなければならない。ことが一気に動く前には多くの小さな動きがあり、その積み重ねがある。大切なのはその段階で適切に対処しきれるかどうかなのだ。

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2 コメント

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一寸の虫くくる (京の京太郎)
2008-11-21 02:13:38
「集団自決」の体験者であるオバーさんが「死ぬことしか考えませんでした。死んだ人が羨ましかった。…本当のことを教えてくれたら死なずにすんだのに…」と繰り返し証言しておられる。苦しい気持ちのなかで証言されているのに、…がしかし、本当のこと。それが何なのかを考える力をわが物と出来ないで「本当のことを教えてくれたら」と言っている限り、人として生きる術は獲得できないのではないのか。失敗(歴史)から本当に学ばなければ、人として生き残れない時代がすでにきた。日々の生活に追われるばかりではあるけれど、小さなひとり一人の力でもできることはある。「人間とは自己に関係するところの関係である」と言ったのキェルケゴールだったか?阿波根さんのポジテブな考えに学び、岡部さんの「ひとを、自分を、売ったらあかんえ~」の声を忘れず、時代に抗する人のネットワークを信じよう。老いぼれても人からまなぶ心・力を失うまい。
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Unknown (かむじゃたん)
2008-11-21 09:19:59
本当に、厳しい時代。
ネット右翼だけではなく、若者の中に、
漠然とした「戦争待望」があるともいう。
元厚生省官僚殺傷がテロかどうかわからないが、
中に「拍手喝采」を叫ぶのもいるだろう。
さて、この時代に何をするか。
おじさんやおばさんが、あの時代にもっと
がんばってくれたら、こうならなかったのに、
と言われないようにと思う。
小説や講演で表現するもの、音楽で表現するもの、
学校で教えるもの、それぞれの役割を果たしたい。

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