鉾立登山口すぐのところにある東雲荘、そこの管理人斎藤さんとは二十年以上にわたる長い付き合いでした。鉾立口から入山した時は行きかえりに必ず顔を出したものでした。
昔写した東雲荘台所の様子。ガス炊飯器はあまりにも傷み具合が激しかったので寄付させていただきました。
管理人室はガスコンロと流し台の向こうで外に出入り口があったのですが、ガスコンロの上のガラス窓は開閉できるので斎藤さんは時々そこから出入りしていました。
ある日山行きの帰りに東雲荘によると、夫婦物とそれを囲んで数人の女性で大酒宴の真っ最中。
まあまあこっちへ、というので帰りだから酒は付き合わなかったけれどしばらく話を聞いていました。
夫婦物の語るところでは、旦那は東北のある発電所に勤めていて、二人でドライブにきて鉾立まで足を延ばし少し歩いたところこの東雲荘を見つけてお邪魔したのだそうです。
その奥さんの飲むことの飲むこと。途中で酒が足りなくなって稲倉山荘の売店に買いに行く始末。
周りにいた女性グループは仙台の病院の看護婦さんたちでした。(そのころ看護師さんなんて呼称はまだありませんでした。また、鳥海山に来る女性は看護婦さんグループというのが結構多かったです。)
その周りの看護婦さんたちも一緒になっての宴なものだから旦那も飲む、奥さんも飲む。もうわけのわからんほど。
(東雲荘の一室)
時間も時間なので、泊って行けとはいわれたけれど、失礼してその夜は帰らせていただいたのです。ここで一泊して朝帰りして出社してたなんてよくあったので。
で、話はそれからです。
しばらくしてから東雲荘に顔を出すと、斎藤さん
「このめえ(この前)は大変だったんだ~」
「旦那に風呂入れって言って風呂入ってもらったらよ~、旦那のいね間よっ」
「おなごの方が『おれ奥さんでなんかでねえんだー、おれ飲み屋のおなごだー』っていうのよ。『ほんでドライブいごっていうから奥さんさ内緒でついてきたんだー』ってんだ。」
「男も寝でしまたようだで、おなごの方さ、風呂入れっていったらまず入ったんだ。」
「しばらぐしてよ、あんまり風呂出でこねもんだから看護婦の姉ちゃんがださ見いいがしだば、ふぐ(服)着たまんま風呂さはいて寝っだんだけど。」
「それがらよ、姉ちゃんがだがら引っ張り出してもらて、ふぐ脱がしでもらて体拭いでもらてそいがら寝がしだのよ。」
「ストーブ焚いで上さふぐやら乳バンド吊るしてよ、下さ落ぢで焦げねよヨッピで番しったのよ、まず寝らんねけ。」
「次の朝よ、おなご目え覚めっど帰り支度して『おじさん、夕んべは楽しけ、ありがどの、まだ来るの』って帰っていたけどよ、」
「あど、来ねたって良っ!」
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