紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

長先生

2006-01-22 22:37:16 | 読書
 長新太さんは、私が子どものころからの絵本作家さん。私が幼稚園の頃、園で定期購読していた月刊絵本『こどものとも』で「ぴかくん、めをまわす」というのが、最初に読んだ長先生の絵本。そのときは、全然いいと思わなかった。昔話と「ぐりとぐら」と「うさこちゃん」が好きな、要するに生意気な幼児だったのだ。ナンセンスがわかるセンスのある子どもではなかった。

 小学生になって、学研の『○年の学習』を6年間買ってもらい、彼の挿絵やお話をしばしば目にした。児童書の挿絵もたくさん描いておられたので、すっかりおなじみの名前になった。

 そのあと長先生との間にたくさんの空白の時間が流れ、30半ばで二人目の子に絵本を読んであげるようになると、一気にブレイク。私と娘の長新太時代の幕開けである。私たちにとってはスペシャルな方なので「長先生」と呼び合っている。
 『キャベツくん』『ぶたやまさんたら、ぶたやまさん』『キャベツくんのにちようび』『まねっこねこちゃん』『ちへいせんのみえるところ』『なんじゃもんじゃはかせのおべんとう』『どろにんげん』『こいしがドシーン』。何回読んでも面白くて、ふつうならあきあきしてしまう「せがまれ繰り返し読み」が、全然苦痛じゃなかった。

 『ちへいせんのみえるところ』は地平線から〔何か〕が出て来る絵と「でました」という言葉がリフレインされるシンプルさ。うっかりページをめくりながら「でました!!」と高らかに叫べば「おかーさん、でてへん、でてへん」と娘につっこまれ、絶妙のタイミングで作者に足を払われていることに気づき、何も出ない地平線の絵のページにぶつかる。たまにフェイントがかかるのだ。長先生の絵本は、ダイナミックにシンプルで、先生自身がお茶目にうふふと笑いながら子どもの心にシンクロしてるのが目にみえるよう。

 もうお年だからと、その日が来るのを覚悟してはいたけれど、昨年、長先生の訃報を知った時には、やはりショックだった。確実に世界が少しつまらないものになったような気がした。
 
 でも昨年は、長先生が大好きだった念願の大道あやさんの展覧会を観ることができて幸せだった。台風の中をおして見に行った大道あやさんの絵は、どれもこれも素晴らしく、「真実」が何気なくごろん、ところがっているような絵だった。いかにも長先生が好きそうな絵だった。
  ( http://www.douwakan.co.jp/index2.html 
   童話館→祈りの丘絵本美術館→常設展へ    )

 絵本では『あたごの海』『ねこのごんごん』『こえどまつり』『ひろしまに原爆がおとされたとき』など。残念ながら会場は閑散としていたけれど、おかげでゆっくりじっくりと2、3回会場をまわって観る事ができた。

 長先生の絵を見ると、なぜかパウル・クレーの絵のテイストに近い物を感じてしまう。お二人とも「子どもの絵のすごさ」をよく知っている方々だからかもしれない。もちろんクレーも大好きです。


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