20年以上も通い続けた大津の喫茶店「マイルストーン」のマスターが亡くなった。
心臓マヒだという。
私より若い人が亡くなると、淋しくてならない。
顔を出すと、いつも親しげに接してくれた。
ご冥福をお祈りする。
幸いなことに、奥さんと息子さんが店を引き継ぐという。
最近は、私がひいきとする飲食店が相次いで閉店となっている中、うれしい限りだ。
古いものを守るということは、単なる経営戦略だけではない。
そこに詰まった空間と時間を大切にするという安らぎの提供でもある。
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5月3日は憲法記念日だった。
憲法改正の論議が喧しい。
「古くなったから変えるべきだ」という意見と
「古くてもよいものは残すべきだ」という意見は
建造物の議論にも似ている。
「古い建造物は取り壊すべきだ」という議論を先行させると
「歴史的建造物」はすべて壊されてしまう。
すでに戦後70年を越えた。
「70年間持ちこたえてきたのだから、もっと持続させるべきだ」
という意見に対して
「危険だから、新しいものを作るべきだ」
と主張するのなら、もっときちんとした議論が必要なのだろう。
私たちはどのようにして、「歴史的建造物」を保存してきたのだろうか。
それは「何らかの価値」を見出してきたからなのであろう。
その「古い価値」を上回る「新しい価値」がない限り、「変える」という行為は拙速のような気がする。
「誰が作ったのか」が問題なのではなく、
「歴史的建造物」がもたらしてきた「価値」をきちんと評価し、
「新しい建造物」がそれをはるかに上回る「価値」をもたらすことを示さなければ、
むやみに壊すべきではないのだろう。
日本人は本来保守的で、古いものを守るという傾向が強い。
70年間守ってくれた器を、新しくしなければならない必然性が見えてこない。
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古くてなじんできたものを取り壊すことには、慎重であって欲しい。