ユダヤ人のすごさ
「銀行よりも個人の信頼に重きをおく華僑もえらいのだが、国際貿易における契約履行に関するユダヤ人の態度には驚かされるよ。」
と晃は言った。
「あるユダヤ人が、南米の三井物産との間で輸入契約を行って、支払いに関する債務を持っていた。ところが、第二次世界大戦がはじまってね、日本は負けたものだから、三井や三菱の財閥は解体されてしまった。こういう場合は、多くのビジネスマンが返済をごまかしてしまうのだが、このユダヤ人は、取引上の債務を清算したいと言って、懸命に相手先を探していたのだよ。ユダヤ人は、経済だけでなく、芸術、化学、医学など多くの面で、intelligentで、shrewd、smart、sagaciousなどと言われるだけのことはある。」
そう言って、いかにも感服したような様子だった。
「そうそう、以前、あるユダヤ人に次のような質問をしたのだ。『あなたがたユダヤ人は、なかなか商売が上手だが、どこの国の商人に一目置いていますか』とね。そうしたら、そのユダヤ人が、『アルメニア人だ』と言った。アルメリアという国はトルコに隣接した小さな国だけれど、アルメリア人の7割が国外にいて、主に通商に従事している。なるほどと思ったね。そこで、別の機会に、アルメリア人に同じような質問をした。『どこの国の商売人に一目置くのか』と。するとたちどころに、『ギリシア人にはかなわない』という答えが返ってきた。そう言えば、戦後すぐにギリシアから日本に造船の注文が入った。船が進水する前から、右から左へと転売を繰り返して多くの中間利益を得ていた。このようなやり方は、いかにもギリシアの商売人だなと感心した。ギリシアのある島では、3軒に1軒の割合で大型外国船を所有しているという話も聞いたことがある。ところが、ギリシア商人に聞くと、日本の大阪商人には負けるという。結局、日本の商人が一番sagaciousであり、shrewdだということになりそうだ。褒められているのか、貶されているのかわからないが、大いに反省する必要があるのかもしれない。」
と言っておかしそうに笑った。
つづく
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