【何度も説明しても話が伝わらない理由】認知科学と言語の第一人者・今井むつみ/結論ファーストはNG/話せばわかるは幻想なのか?/なぜ部下に話が伝わらないのか?【PIVOT TALK】
『結論から話しては万能ではなかった、ぼくが始めて何度説明しても話が伝わらない人と出会ったのは5年前の事、おかげでどう言語化し、どの手順で、何にポイントを置いて説明すればいいのかを本気で考えるようになった、ありがたい出会い!』
スキーマとは何か
スキーマという言葉、ちょっと難しそうに聞こえるかもしれません。
でもこれ、実は私たちが日常的に自然と使っている、脳の「整理整頓術」なんです。
スキーマとは、過去の経験や学びをもとに、情報を理解し、整理するための脳内のテンプレートのようなものです。
例えば、「会議」と聞いて思い浮かぶイメージ。
会議室、資料、議題、そして「長くて疲れる時間」なんて感情まで。それらが、あなたの「会議に関するスキーマ」です。
スキーマの特徴と役割
1. 経験をベースに形成される
スキーマは、これまでの知識や体験をもとに自然と形作られます。初めて訪れる国で、食べ物の名前や習慣を知ると、そこからその国に関するスキーマができるわけです。
2. 情報のフィルタリング機能
スキーマは情報を効率的に処理するためのフィルターでもあります。膨大な情報が目の前にあっても、「これが大事だ」と即座に選び取れるのはスキーマのおかげです。
ただし、スキーマに頼りすぎると偏見や誤解の元になることも。
3. 無意識に働く
「あ、これ知ってる!」と直感的に思うこと。これはスキーマが無意識にあなたを助けている証拠です。
4. 文脈を理解する手助け
日本では、「お疲れ様です」と言えば感謝や挨拶のニュアンスが伝わりますが、これは日本文化特有のスキーマに基づく理解です。
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スキーマの持つ可能性とリスク
共通のスキーマがあれば意思疎通がスムーズ
同じ職種やバックグラウンドを持つ人たちなら、専門用語や背景知識が共有されているため、簡単な言葉だけで通じ合えます。
スキーマの違いが誤解を生む
一方で、異なる文化や立場の人々の間では、スキーマのずれが誤解や衝突の原因に。たとえば、上司が「次回の会議までに資料を準備して」と言った場合、上司は「簡単な概要資料」を期待していたのに、部下は「詳細なレポート」を作成することもあります。このギャップがスキーマの不一致です。
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「認知」「認知的枠組み」「意味づけ」の違いと共通点
1. 認知
認知とは、物事を知覚し、理解する心の働き全般を指します。たとえば、目の前に赤い果物があれば、それを「りんご」と認識するのが認知の一部です。
- 幅広い概念で、感覚、記憶、思考、推論など多くのプロセスを含む。
- 例: 他人の顔を見て「この人、嬉しそうだな」と感じ取る。
2. 認知的枠組み
認知の中でも、スキーマに近い考え方で、私たちが物事を解釈する際の「フレームワーク」や「視点」を指します。
たとえば、ある人が「努力は報われる」と信じているなら、その人の行動や思考がこの枠組みに従って形作られることになります。
- 個人の信念や価値観が反映されやすい。
- 例: 「失敗は成長のチャンス」と考える人と「失敗は恥」と捉える人では、同じ出来事でも解釈が異なる。
3. 意味づけ
意味づけとは、物事や出来事に対して「これはどういう意味か」と価値を見出す行為です。認知的枠組みに基づきながら、個別の出来事に具体的な解釈を加えるプロセスと言えます。
- 認知的枠組みから派生し、より具体的な解釈を行う。
- 例: 「失敗」を「自分の無能さの証」と捉えるか、「次への改善点」と捉えるか。
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共通点と使い分け
共通点
これらはすべて、私たちが情報を処理し、行動する際に欠かせない心の働きを表しています。それぞれが連動して、私たちの意思決定や感情に影響を与えます。
違い
認知は大枠の働きを指し、認知的枠組みはその中の「フィルター」の役割。意味づけは、そのフィルターを通じて得た情報に具体的な価値を与えるプロセスです。
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「スキーマ」を意識することは、日常のコミュニケーションや自己理解を深めるための大きな手助けになります。そして、「認知」や「意味づけ」の働きを知ることは、あなたの行動をより意識的に変える一歩になるのではないでしょうか?
『スキーマを軸に考える、コミュニケーションの難しさとその影響』・・動画まとめ
スキーマ――それは、自分が経験を通じて作り上げた「暗黙の知識の塊」。
この概念を理解することは、特にビジネスの現場で効果的なコミュニケーションを実現する上で、欠かせないポイントです。
今回のテーマは、スキーマの役割、言語の特性、実践的なコミュニケーション手法、そして生成AIがもたらす影響。
これらを通して、コミュニケーションにおける理解の難しさとその対処法を探ります。
スキーマとは何か?
- スキーマとは、経験をもとに形成された知識の枠組みであり、他者の話を理解するための「土台」となるもの。
- しかしスキーマは単なる知識の蓄積ではなく、実際には多層的で複雑な構造を持つ。
- スキーマがないと、いくら話を聞いても内容が理解できない。
たとえば、心理学の実験では、曖昧な文章を聞いた人たちがそれを理解も記憶もできないという結果が出ています。
言語とスキーマの関係
言語というものは、膨大な情報を「切り捨て」、骨格だけを伝える特性を持っています。
いわば、言語は情報のスケルトンなのです。
だからこそ、言語を正しく理解するには、背後にあるスキーマが重要。特に、スキーマの根底には**感情**が関わっています。
たとえば、上司と部下の会話がかみ合わないのは、それぞれが持つスキーマ――つまり、視点の違いが原因です。
上司は会社全体の視点を持ち、部下は自分のタスクに集中している。このズレが誤解を生むのです。
コミュニケーションが難しい理由
言語というツールは、必ずしも意味や感情を完全には伝えられません。
たとえば、「結論を先に言え」というアプローチは一見合理的に見えますが、それだけでは相手に伝わらないことも多い。
相手にとって本当に重要なのは、結論に至るまでの背景やプロセスです。
この過程を共有することで、初めて相手はその話を深く理解できます。
実践的なコミュニケーション手法
現代のビジネスでは、価値観が多様化し、共通の前提を持つことがどんどん難しくなっています。
そこにさらに生成AIやデジタル化が加わり、倫理や価値観の衝突が起きやすい時代に突入しています。
だからこそ、これからは相手の意見や感情に対する**共感**が何よりも重要になります。
具体的には、以下がポイントです:
1. 相手のスキーマを理解する努力をする。
2. お互いが共有できる「フレームワーク」を構築する。
3. 結論だけではなく、そのプロセスや背景を丁寧に伝える。
結論:スキーマが鍵を握る
スキーマは、私たちのコミュニケーションにおける「必須の要素」。
これがあるからこそ、私たちは相手の話を理解し、また逆に伝えることもできます。
ただし、スキーマの違いから誤解や不一致が生まれることもあります。
特にビジネスの現場では、相手の価値観や背景に寄り添い、共感を持って話を進めることが成功の鍵となります。
さらにこれからは、生成AIの進化により、コミュニケーションの在り方そのものが変わっていく時代。
そういう中だからこそ、相手との共通点を見つけ、スキーマを活かしたコミュニケーションを磨いていくことが求められるのです。