かまいたち鉄棒に巻く落とし物
黛まどか
「第7次エネルギー基本計画」に向けて
関川宗英
原発依存からできる限り早い脱却を
日本のエネルギー政策を検討していくとき、第一に考えなければならないことは、原発への依存です。原発は出来る限り早い時期にゼロにすることが求められます。その理由は次の3つです。
理由① 原発の事故を防ぐ技術を人類は持てていないこと
理由② 放射性廃棄物の処理が出来ていないこと
理由③ 原発関連の莫大な費用が将来の世代に回されること
理由① 原発の事故を防ぐ技術を人類は持てていないこと
人類は1945年、核分裂による莫大なエネルギーを使うことに成功しました。1グラムのウラン235は、その核分裂によって、3トンの石炭燃焼に相当するエネルギーを出すといいます。人類はまさに「夢のエネルギー」を獲得したのです。
しかしその後、世界の先進技術国は、核爆弾開発の競争に明け暮れました。そして、世界各地の原発は核エネルギーによる事故をたびたび起こしてきました。スリーマイル島、チェルノブイリ、そしてフクシマ。核エネルギーは、ひとたびそのコントロールを失うと甚大な被害を引き起こします。
2025年の現在、核を制御できる技術を人類はいまだに持てていません。核は、夢のエネルギーになれなかったのです。原発の事故を防ぐ技術をまだ持てていない今、その研究は続けるべきですが、日本は出来る限り早く原発の依存から脱却するべきです。
理由② 放射性廃棄物の処理が出来ていないこと
昨年9月、青森の中間貯蔵施設に初めて使用済み核燃料が搬入されました。原発を動かせば、使用済み核燃料が出ます。全国の原発には、その使用済み核燃料がたまり続けていて、まさにあふれようとしています。青森の中間貯蔵施設は、その対策の一環ですが、そもそも原発から出る核のゴミを、どこに処分するか、決まっていないのに原発を動かし続けたエネルギー政策は間違っています。
政府は、この使用済み核燃料を再処理して、再度、発電に使うという計画「核燃料サイクル」を掲げてきました。したがって日本の使用済み核燃料は、廃棄物ではなく利用できる有価物だというのが、政府の考え方です。その再処理を行う工場が、六ケ所村の「再処理工場」です。1993年に建設を始めましたが、いまだに完成していません。日本原燃は、昨年8月、2024年完成としていた目標を、2026年度内に延期すると発表しました。27回目の延期計画です。もはや「核燃料サイクル」は破綻しているといっても過言ではありません。しかし、政府は核燃料の再利用という計画を推し進め、放射性廃棄物を増やし続けてきたのです。
核のゴミの処分については、しっかり議論しなければなりません。しかしこれ以上核のゴミを増やすことは避けなければなりません。
理由③ 原発関連の莫大な費用が将来の世代に回されること
原発に関するお金は莫大です。
2016年、政府は高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃止を決定しました。「もんじゅ」の建設は1986年ですから廃止決定はその30年後ですが、その間の稼働はわずかに3か月でした。その30年の間、稼働していない日でもナトリウムの冷却のためだけに一日4000万円かかっていました。「もんじゅ」全体の国費は一兆円超になります。
六ケ所村の「再処理工場」では、総事業費が17兆5000億円、バックエンド費用が19兆円と公表されています。日本の国家予算の三分の一近くが、核廃棄物の再処理関係で動いているという計算です。
2011年の3.11、東京電力福島第一原子力発電所事故による事故対応費用は、約26.2兆円(「発電コスト検証WG」 2024年12月)となっています。原発の事故がひとたび起これば、莫大なお金が必要になります。地震国日本で、また原発事故が起きれば、そのツケは将来世代が負うことになります。
これら原発関連の莫大なお金は、今後、税金か電気料金などで徴収されるのでしょうが、その支払いは将来の世代です。私たちは、余計なツケをできるだけ生まない努力をしなければならいないのは当然でしょう。
以上、原発をできるだけ早く止めたいと考える理由です。「7次エネルギー計画」では原発のシェアが20%程度となっていましたが、その分は再エネでカバーするべきです。カーボンニュートラル実現のために、最良の解は再エネです。再エネによる小規模分散型の発電所を増やし、互いに電力の過不足を補い合うシステムを作れば、再エネの弱点もカバーできます。
これからの日本のエネルギー計画を考えていくために、国民的な議論が深まることを期待しています。