原発事故で傷ついた町にできる、ひとつだけの本屋さん 芥川賞作家が込めた思いとは
「ねこのおうち」などで知られる柳美里さん。原発事故後に福島に移住し、なぜ本屋「フルハウス」をオープンさせることになったのでしょうか。
2018/03/10 https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/fullhouse?bfsource=bbf_jajp&utm_term=.uxvv3vDkY#.ugL7l7yDM
私、本を一番読んだのは小、中学校のときだった。なぜ読んだかというと、現実が辛かったからなんですよ。
学校では全裸にされたり、バイキンと呼ばれて周りが給食をボイコットするような、かなり激しいいじめにあっていたんです。一方の家では両親が不仲で、別れるようなこともあった。
本の名前などを記すところを「扉」というんですよね。めくることができるその扉の中は、異世界。私にとって、現実から逃げ込む場所だったんです。
南相馬に住む知人やご住職からも聞くんですけれど、ここでは自殺が増えている。福島は、岩手や宮城と比べても突出して多いんですよね。
小高におられた知り合いのお兄さんも、避難先で自殺してしまった。70代のその方は農業をやっていて、田んぼの隣が汚染土の仮置き場になってしまって。
一時帰宅をしたときにそれを見て、「もうできないんだ」と亡くなられてしまった。
小高の現実があって、避難先での現実があって。そのどちらも辛かったら、かなり生きているのが辛くなってしまうと思うんですね。
自分の子供時代だって、学校も家も辛かったから、死はリアルなものとして目の前にやってきていた。
そういうときに、本という異世界への扉があれば、違うのではないんじゃないか、という気持ちが強いんです。