谺して山ホトトギスほしいまま 杉田久女
「行者堂の清水を汲んで、絶頂近く杉の木立をたど
る時、突然何ともいえぬ美しい響きをもった大きな声が、木立の向うか
の谷間から聞こえてきました。それは、単なる声というよりも、英彦山そ
のものの山の精でした。短いながら妙なる抑揚をもって切々と私の魂を
深く強くうちゆるがして、いく度もいく度も谺しつつ声は次第に遠ざかって、
ばったり絶えてしまいました。時鳥 ! 時鳥 ! 宿の子供たちは口々に申し
ます。」
谺して山ホトトギスほしいまま 杉田久女
「行者堂の清水を汲んで、絶頂近く杉の木立をたど
る時、突然何ともいえぬ美しい響きをもった大きな声が、木立の向うか
の谷間から聞こえてきました。それは、単なる声というよりも、英彦山そ
のものの山の精でした。短いながら妙なる抑揚をもって切々と私の魂を
深く強くうちゆるがして、いく度もいく度も谺しつつ声は次第に遠ざかって、
ばったり絶えてしまいました。時鳥 ! 時鳥 ! 宿の子供たちは口々に申し
ます。」