ウサギ30匹以上が毒殺される、犯人不明、米ネバダ
ウサギ保護区づくりに奔走するなかでの事件
毒殺されたウサギ数十匹が発見された。2月18日、米ネバダ州ラスベガスにある児童精神科施設デザート・ウィロー・トリートメント・センターの外でのことだ。
同センターでは数年前、患者の癒やしになればと考え、ウサギ2匹を放し飼いすることにした。2匹は繁殖し、その子供たちも繁殖した。すると、人々が引き取り手のないペットのウサギを連れて来るようになった。今では、専門のボランティアグループが結成され、ウサギたちの餌やりから世話、救助までを担っている。グループは数百匹のウサギを収容できる保護区をつくり始め、完成に必要な資金をほぼ調達し終えた。
ところが18日、ウサギの水やりにやって来たボランティアらが、30匹以上のウサギがあちこちで死んでいるのを見つけた。外傷の痕跡がなかったため、ボランティアらは毒殺を疑った。(参考記事:「巨大ウサギが謎の死、ユナイテッド機でフライト中」)
ラスベガスを拠点にウサギの救助活動を行う「バニーズ・マター」の責任者ステイシー・テイラー氏が、手を震わせながら現場を撮影し、オンラインに動画を投稿した。テイラー氏は全体をぐるりと見渡した後、ウサギのもとへと歩き始め、「友人たちの死体を見つけ、回収しているところです」と震える声で説明した。
ボランティアらは無事なウサギたちを死に物狂いで捕まえ、キャリアに入れていった。58匹を保護できたが、まだ100匹以上が残されており、その後の状況はわかっていない。
18日深夜、見張りのために残っていたボランティアが、レタスの山を投げ捨て、急いで走り去る車を目撃した。ウサギたちはレタスを食べ始めたが、ボランティアはすぐ、レタスに不凍液がかかっていることに気づいた。ウサギにとって、不凍液は致死性の毒だ。(参考記事:「24匹が8億匹に! ウサギで豪大陸を侵略した英国人」)
ネバダ州は事件の数日前、ウサギには公衆衛生上のリスクがあると警告するポスターを敷地の周囲に貼っていた。ウサギの救助に携わる人々の中には、ネバダ州がウサギたちを毒殺したのではないかと疑う者までいる。ネバダ州保健福祉局の広報担当者カーラ・デルガド氏は、ネバダ州は今回の事件に関与していないと述べている。デルガド氏によれば、保健福祉局は今回の事件についてソーシャルメディアで知ったそうだ。(参考記事:「農薬で毒殺されるケニアの動物たち」)
デルガド氏は、小さな子供や高齢者など、多くの弱い人々がこの場所にやって来るため、ウサギが病気を媒介するかもしれないと警告するポスターを貼ったと説明している。ポスターでは具体例として、サルモネラ、狂犬病、野兎(やと)病を挙げている。米疾病予防管理センターによれば、ネバダ州では2009年以降、細菌性疾患である野兎病の症例は報告されていない。地元のウサギ救助グループ「ベガス・バニー・レスキュー」の責任者ティナ・ドルアン氏は、数百匹のウサギが獣医師の治療を受けたが、病気は一度も見つかっていないと話す。
デルガド氏によれば、ネバダ州は動物管理当局とともに、ウサギたちを人道的にわなで捕獲し、移住させる計画を立てていたそうだ。また、保健福祉局は事件の調査を開始したという。さらに、保健福祉局はウサギ救助グループと連携し、解決策を探っていきたいと述べている。これに対し、ドルアン氏は懐疑的な見方をしており、「野生のウサギに餌や水を与えることは今すぐやめましょう」というポスターの記述にこう言及した。
「基本的に、彼らはウサギたちを餓死させたいと思っていたのです」(参考記事:「【動画】子を襲われた母ウサギが、ヘビに猛反撃」)
引き取り手のないペットウサギ
ウサギは、米国でネコとイヌに次いで3番目に多く捨てられているペットだ。飼いやすいという誤解がしばしば衝動買いにつながっている。健康なウサギは長ければ12年ほど生き、特別な世話を必要とする。保険会社と獣医はウサギをエキゾチックアニマルに分類しているため、避妊、去勢手術に250ドルかかることもある。(参考記事:「ちょっと変わった「エキゾチック・ペット」の写真10選」)
「ラスベガスでウサギを飼うのは本当に大変です」とドルアン氏は話す。ドルアン氏によれば、ラスベガスには、エキゾチックアニマルに対応できる獣医が2、3軒しかなく、多くの場合、予約は2カ月待ちだという。
ペットのウサギが空き地に捨てられる一因はこれだと、ドルアン氏は考えている。ウサギを捨てる人は多くの場合、ペットのウサギが野生のウサギと異なり、野外で生き延びられないことに気づいていない。ラスベガスでは、今回の事件が起きる前から、捨てられたウサギたちはひどい仕打ちを受けてきた。
「ウサギの脚や尾を見つけたこともありますし、ばらばら死体を見たこともあります」とドルアン氏は話す。「夜はコヨーテ、昼はタカがウサギを襲います。ひもでつないだペットのタカを連れて来た男性が、ウサギを食べさせているのを見たこともあります」(参考記事:「あなたの知らない驚きのワシとタカ 写真19点」)
ウサギたちの希望
事件以降、ウサギは120匹ほどしか確認されていないと、ドルアン氏は話す。残りのウサギを連れ去ったのが犯人か善人かはわからない。ドルアン氏によれば、ラスベガス市の呼びかけに応じ、多くの家族が現場を訪れているという。「多くの人が檻と餌を持ち、ウサギを捕まえようとしています」
全米のウサギ救助グループも支援の手を差し伸べている。あるボランティアグループは22日から巡礼の旅に出発し、複数の救助グループに100匹以上のウサギを引き渡すことにしている。そうすれば、残されたウサギを保護し、毒殺の危機から救う余裕が生まれる。それまでは、寄付された物資とウサギたちの里親になりたいという善意が頼みの綱だ。