「多分、私は今生まれたばかりで、何もかも怖いのだと思います。こうして生きていることが。一人の人間のことを昼も夜も考えていることが。人間は、最後は独りだということが……」
(高村薫『レディ・ジョーカー』より)
以下ネタバレご注意。
警察という一組織に対する合田の憤りや諦め、そしてそれが次第に自分へと向かい、遂には生きること自体に興味を失ってゆく過程は、嫌でも共感してしまい、辛いです。
だから、このラストは本当に嬉しかった。
半田を刺した時点では、加納は合田の中でその死にストップをかけるほどの存在ではなかった。でも、合田が最後の最後に呟いたのは、加納の名前で。その意味は、きっととても大きい。そして奇跡的に助かった合田に生きる意味を与えたのは、間違いなく加納の存在なのです。
いままで「人を人とも思わなかった」合田が、部下の結婚を心から嬉しく感じたり、人の言葉一つ一つに困惑したり、そんな自分に戸惑いながらも喜びを感じるようになった。 それって、とても素敵だ。きっとそれが「生きる」ということなんだよね。
一人でいると、とても気が楽です。
人といると疲れるし、傷ついたり不愉快な思いをしたり嫌なことも沢山あって、寂しさと引き換えにしてもその面倒な繋がりを断ってしまいたいと思うことは実はしょっちゅうなのだけれど。
この本を読むと思うのです。
私達にはどうしても、他者の存在をもってしか解決できないものがあるのだと。
自分ひとりでは決して得ることのできないもの。
そしてそれは、人間が生きていくために絶対的に必要なものなのです、きっと。
加納さんがいてくれて本当によかったね、合田さん。そして加納さんも。
ちなみに『レディ・ジョーカー』を映画化するなら主題歌はぜひ中島みゆきさんの「たかが愛」で!
・・・・・・と、思っていたんだけどなぁ。。めちゃくちゃ合ってると思いません?私の中ではこの本とこの歌はもうワンセットですよ。