昨夜から思いつめていたことが
果てのない荒野のように夢に現れ
その夢の途中で目覚時計が鳴った
硝子戸の向こうで犬が尾を振り
卓の上のコップにななめに陽が射し
そこに朝があった
朝はその日も光だった
おそろしいほど鮮やかに
魂のすみずみまで照らし出され
私はもう自分に嘘がつけなかった
私は<おはよう>と言い
その言葉が私を守ってくれるのを感じた
朝がそこにあった
蛇口から冷たい水がほとばしり
味噌汁のにおいが部屋に満ち
国中の道で人々は一心に歩み
幸せよりたしかに希望よりまぶしく
私は朝のかたちを見た
(谷川俊太郎『朝のかたち』より)
朝がもつ圧倒的なパワーと同じくらい、この詩そのものが、この詩を生んだ詩人の存在が、私に元気をくれる。
そして私と同じようにこの詩から元気をもらっているであろう多くの人々の存在が、私を励まし、夜の闇に耐える力をくれる。