4月から続いた三ヶ月間のお祭りもこれでラストです!
もっとも「杮茸落」興行はまだ来年3月まで続くので、今後も豪華な顔ぶれの公演に期待。
※3階B席上手
【鈴ヶ森】
youtubeにも上がっていなかったので、完全な初見です。予習なしの観劇もワクワクして楽しい。
あ、こんな舞台装置なんだ。あ、こんな衣装なんだ。と。
これって初めてその演目を観る歌舞伎初心者だけに許された、一回だけの最高のお楽しみですよね。
とはいえ、正直なところ、さほど期待もしていなかった『鈴ヶ森』。
意外に楽しかったです!
第一部の『鞘当』とのストーリーの繋がりを思いながら観ると、なお楽しい(といっても全体ストーリーは大雑把にしか把握しておりませんが、笑)。
なにより、梅玉さんがこんなに見放題だとは知らなんだ。
チラシでは幡随院長兵衛の名前が最初に載っていたので幸四郎さんの出が多いのかと思っておりましたが、実際は権八(梅玉さん)が出ずっぱりなのですね。
しかも第一部の『俊寛』ですっかり私を虜にした、青年梅玉さん!さらにさらに今回は父親殺しのお尋ね者!
仁左衛門さんにしても、梅玉さんにしても、品のいいお坊ちゃん系の美形の役者さんがこういう役を演じるのは、たまらない御馳走です。ああ、なんて楽しい。
薄暗くてオドロオドロしい舞台も、たまりません。
そんななか、笑っちゃうくらい真ん中にドデーンと建っている『南無妙法蓮華経』のドデカイ石碑も、これぞ歌舞伎。
で、梅玉さんの権八。
颯爽とした若者らしさも、美しい動きも、どこか柔らかな色気も素敵です。闇の中、目が見えていない中での剣技も、その美しさを際立たせております。
しかし私は梅玉さんがお気に入りなのでそれだけで大層楽しめましたが、そうでない方や、それこそ『助六』目当てで初めて歌舞伎を観に来られた方などには、これ以上ない拷問の時間だったであろうことは想像に難くないです^^;
現に私の友人は隣で寝とりました。
私でさえ、バッタバッタの前半部分はさすがに長く感じたし。。。梅玉さんが石碑の裏に隠れてしまっているときは寝そうになった。。。
幸四郎さんの長兵衛。
先月の『三人吉三』のときと同様の感想ではありますが、菊五郎さん&仁左衛門さん相手よりは、今回の方が親分格としてしっくりきていたように感じました。
梅玉さんの雰囲気が、(悪い意味でなく)上のお二人よりも軽やかだったせいかもしれません。
【助六由縁江戸桜】
上の絵は、歌川広重の『吉原夜の桜』でございます。助六の舞台です。
あ~~~タイムスリップして行ってみたい!
そしてこの可笑しな人達の可笑しなやり取りを、柳の陰から覗き見たい!
そんな風に思わせてくれた『助六』でした。
楽しかった!
しかし楽しかっただけではなく、しんみりとした気持ちにもなった、そんな舞台でした。
海老蔵の助六は、彼独特の壮絶な美しさやキレのよさが散見される一方で、團十郎さんの演じた助六に似ているところがとても多く、驚きました。それが結果として、どこかチグハグで不安定な印象になってしまっているようにも感じられました。
この人はきっと今、一生懸命にお父さんやお祖父さんの芸を研究して、教わったことを守ろうとしているのではないかな、と思った。ただまだ、それを自分のものとして消化しきれていないのではないか、と。親から教わったものを自分の血や肉にして、さらに自身の魅力も際立たせるには、まだ時間が必要なのかも。
でもそれを乗り越えられたら、この助六はこれからきっとどんどん素敵になっていくだろうな、とそんな期待もいっぱいに感じさせてくれた海老蔵の助六でした。
並び傾城。
壱太郎くん、凛々しい美人ぶりが素敵。新悟くん、品がよくて声いいな~。右近くん、ABブログの写真を思い出しちゃったでしょーが、笑。米吉くん、ふっくら愛らしい。児太郎くん、なんか初々しさを感じます、笑。
福助さんの揚巻。
花道の出~前半部分は「やっぱり玉さまで観たかったなぁ・・・」と思ったのですが、後半の再登場から「お!」と思いました。
花魁の貫録や華やかさは玉さまには及ばないものの、玉さまとは違う“情”を感じさせてくれる魅力的な揚巻。意休と助六の間に入って助六を庇うように喧嘩をとめる見得も、カッコよかった。
時々高く張り上がる声が気になるといえば気になりましたが、全体としては満足。
七之助の白玉。
さすがに美しかったです!あまり情は感じられませんでしたが、“これぞ傾城!”という美しさを見せてくれました。
左團次さんの意休。
この役にぴったりでした。重みもあり、憎めない可笑しみもあり。
後半、揚巻と二人並んで床几に座っている姿は、二人の雰囲気がなんともお似合いで、揚巻、助六よりこの意休さんとくっついちゃえばいいのに!って思った。とても可愛らしい大人のカップルに見えました笑。
吉右衛門さんのくわんぺら門兵衛。
やはり、少々お疲れ気味に見えました。お声も掠れていて…。今月は1~3部に総出演だものなぁ、大変だよね…。
吉右衛門さんはさよなら公演のときの仁左さまより遥かにこの江戸っ子らしい役に合っておられましたが、この役って美味しそうで、意外と難しい役なんだなぁ、と改めて思いました。仁左さまのときも思ったけれど、なんというか、この門兵衛~朝顔仙平の付近で少々テンションがダレ気味になるのは私だけでしょうか(助六の啖呵は楽しいけど)。。
菊之助の福山かつぎ。
この菊ちゃんには、テンション急上昇↑。義父殿とのやりとりに、ニヤニヤしちゃいました^^
ていうか菊ちゃん、うまいなー。『対面』の十郎に続き、絶好調ですね。やっぱり私は、菊ちゃんは女形よりも、立役の方が好きかもしれん。
そして、若い頃の菊五郎さんにますます瓜二つで吃驚。
海老蔵の助六とともに、世代を超えて受け継がれていくものを感じて、思わず泣きそうに…;;
菊五郎さんの白酒売。
最高です。今回の『助六』の一番の見所は、この菊五郎さんだと思う。
このふんわりとした、とぼけた、上品な可笑しみ。この人以上にこの役をうまく演じられる人なんていないんじゃないか、と思ってしまう。素晴らしいなぁ。
海老蔵との兄弟ぶりも、暖かくて可愛かった(海老蔵も菊五郎さんと絡んだ途端にぐっとよくなってた)。そして團十郎さんとの兄弟ぶりを思い出して、泣けた…。
さよなら公演では父親の助六に付き合い、杮落し公演では息子の助六に付き合った菊五郎さん。
この新しい歌舞伎座の誕生に重ねあわせて、特別な感慨を覚えずにはいられませんでした…。
東蔵さんの満江さん。
母親のどっしりとした優しさ、温かさ、そして可愛らしさが滲み出ていて素敵でした。
心がほんわかと温かくなった^^
三津五郎さんの通人。
再びの、裏切らない男!!
あの勘三郎さんの後では難しかったでしょうに、散々笑わせて、最後には泣かせる、素晴らしい通人でした。
海老蔵のブログネタは、毎日変えているのですね。「今日は朝から雨の中ご苦労にお散歩に出られて」って、ちゃんとブログをチェックしてネタ探しを怠らない三津五郎さん、最高、笑。
さよなら公演で勘三郎さんが演じたこの役を、杮落し公演では親友の三津五郎さんが演じられ。
新しい歌舞伎座でも夢を見させてもらいましょうと言っていた勘三郎さん。團十郎さんのこと、そして海老蔵の息子さんの誕生に触れ、歌舞伎の未来に願いを込めた三津五郎さん。
ああもう、本当に本当に感慨深い………;;
演技の出来不出来などを言うことが明らかにヤボな、今このときしか観ることができないものが沢山詰まった、三ヶ月間のお祭りを締めくくるにふさわしい舞台でした。観られてよかった!!
六月も残すところあと半月。
吉右衛門さん、菊五郎さん、仁左衛門さん、幸四郎さん、他の方々も、三ヶ月間本当に本当にお疲れさまでした。最後まで、無事に務められますように。そして、しばらくは若い世代に任せて、ぜひゆっくりと体を休めてほしいです…。
しかし公演スケジュールがそれを許していないことを私は知っている…。
それはおそらく、ご本人達の希望でもあるのでしょう。それでも私は言いたい。
松竹さん、本気で彼等を殺す気ですか(怒)!!?
そして今月を限りにしばらく歌舞伎はお休みする予定でしたが、この三ヶ月ですっかりこの世界の虜になってしまった私は、今後も山ほどチケットを買ってしまっております。歌舞伎破産しないように気を付けないと。。。。
その分海外旅行を削っているので、なんとかお財布は保たれております。。。。