やっぱり私は熊哲の踊りが好きなのだなぁ、と観る度に再確認。
今回はストーリー重視で踊り的な見せ場は少なかったけれど、ピルエットなんて相変わらず素晴らしく綺麗で、何より熊川さんの踊りにはこんなに素敵なバレエというものをみんなにも知ってもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちが溢れているから、観てる方も幸せになってしまうのよね^^
これは、バレエ文化が欧米ほどには当たり前に浸透していない日本という国から英国に行って、再び日本に戻ってバレエ団を立ち上げた熊川さんならではのものだと思います。
以下、舞台の感想ですが、パンフを買っていないので(Kのは高すぎるから買ったことがない)的外れな部分もあるかもですが、まぁ素人ブログということでご容赦くださいましm(__)m
『カルメン』は小説を読んだこともバレエを観たこともなく、今回予習としてオペラの映像を観ました。
そのためこのお話の主役はカルメンだろうと思い込んで鑑賞に臨んだのだけど。
ん?なんか違う・・・?
カルメンというと自由な愛に生きて男達を惑わせる女というイメージですが、今回のロベルタ・マルケスのカルメンは、真っ白ガーリーな衣装のせいもあって、振付は妖艶なのだけど拭いきれないジュリエット感。
まぁそれはいいのですけど、問題は、一幕でホセのことを愛してるようにはあまり見えなかったこと。
カルメンってホセのことを全力で愛して、それからエスカミーリョのことも全力で愛する、いつだって自分の感情に嘘をつかない、そんな女性だと思うのですが、マルケスのカルメンはホセのことは、自分に関心を示さない珍しい男に興味を持っただけに見えた。彼女が本気で愛したのはエスカミーリョだけに見えた。マルケスの表現力のせいか、熊哲の振付のせいかは不明ですが。。
従来の『カルメン』であれば、おそらくこれは致命的な欠点になるところですが。
今回そうはならなかったのは、この熊哲版カルメンは、「カルメンの物語」というよりも、「ホセの物語」のように見えるから。
鑑賞の軸をカルメンではなくホセに据えてみると、面白いくらい全てがしっくりくるのです。
カルメンの歌にもあるように、相手が自分を愛してくれるかどうかなんて、恋をするときには関係ない。
ホセは、カルメンが自分を愛してくれたから彼女に恋したわけではないでしょう(きっかけは彼女が作ったかもしれませんが)。
彼女が彼を愛しているかどうかなど、彼にとってさほど重要じゃないのではないかとさえ感じる。彼はカルメンを愛している、だから離したくない。彼が望むことは、それだけ。
今回の『カルメン』は私にはそういう物語として見えてきて、そうなると、極端に言えばカルメンがどういう女性であるかはあまり重要ではなくなるのです。
というわけで、ホセに比べて存在感の薄いこのカルメン。
最期も、ホセの銃弾(ナイフじゃないのです)で、パァン!とあっさり死んじゃいます。
さぁここからがホセの一人舞台。
上手に横たわるカルメンの体に美しい夕陽?が射しこみます。
しばらく下手で呆然としていたホセは、這うようにカルメンのところへ行く。
愛おしげに彼女の体を抱き上げるホセ。
周りの人間達が動くことができずにただ見守る中、彼女とともにゆっくりと歩み去ります。
ようやく彼は、カルメンを自分だけのものにできたのでしょう。
そして一瞬の静寂の後、軽快な闘牛士のテーマで幕(ここ好き♪)
ここの熊哲のぼっろぼろな衣装や髪、色気があって素敵だったなぁ
この後、ホセも死ぬのですよね。カード占いのとおりに。小説では処刑だそうです。
と、ここまで書いて思い出したけど、一番最初のプロローグ、真っ暗な舞台でホセが一人椅子に座っているのです。憔悴しきった様子で。そして銃口を自分の顎に向けて自殺を図ろうとし、それから何かを思い直したように立ち上がって走り去ります。
そう、彼は闘牛場へ向かったのですね。カルメンを自分のものにするために。
ここからも、熊川版カルメンはやはりホセが主役なんだと思う。
一つの演出として、こういうのもアリ、かな・・?少なくとも新鮮ではありましたし、熊川さんには大変似合っている演出でした。
忘れてはならないのが、遅沢さんのエスカミーリョ
エスカミーリョってオペラでも彼が登場すると思わず口元が緩んでしまうのだけれど、それで正解なのだろうか?
今回の振付も、本気で真面目にカッコ良さを追求したとはとても思えません^^;
そういう愛すべきキャラクターに私には思えるのだけれど、遅沢さん、とってもよかった!面白いのに、アホに見えず大層カッコいい。私のエスカミーリョのイメージそのもの。遅沢さんの踊り、ダイナミックで好きです。彼のエスパーダ@ドンキも観てみたいな。
あとこれは演出の問題ですが、二幕二場の闘牛場前の行進場面はもっともっと派手にしてもいいように感じました。オペラでも最後に最も盛り上がる華やかな場面ですし。
ちなみに今回の闘牛士達のブーツの色は、しょっきんぐぴんく(@ドンキ)ではなく、べびーぴんくでした。。どっちがマシなんだろう。。
神戸里奈さんのミカエラも、イメージにぴったりでよかったです。しかしミカエラも気の毒だよね・・・。ホセの心が離れてしまったことは彼女にはどうしようもないとはいえ。
今回のセットは、ほどよいシンプルさで、私はみんな好きでした。
薄暗い中にランタンの灯った酒場は、カリブの海賊みたいでワクワクした
工場前の広場の水も本物を使っていて、こういう適度にリアルなところも好み。
1幕1場のロープの踊りは、バヤみたいで面白かったな。
酒場でカルメンの姿を探す熊哲は、しっとりした踊りが美しかった。
あと酒場のラストで気が進まないながらもカルメン達の仲間になって一緒に酒場を去るときの笑顔。ちょっとワクワクしている内心が出ていて可愛かったです^^ 実は彼も自由な生活に憧れをもっていたんだね。
以上、今回は初演なのでまだまだまだまだ改善の余地はありそうですが、今回の演出、私は嫌いではないです。特にロマンティックなラスト!
最後に。ビゼーの音楽はやっぱりテンション上がる~
いつもは撮らないのだけれど、開演直前で空いていたので・・笑
ステキです
そうそう、この日の後半部分は、天皇皇后両陛下による天覧がありました。
私の席はちょうど真上だったのでご観劇されているところは見られなかったのですが(両陛下の上に座ったとは恐れ多い・・。上演中は知らなかったけど)、劇場外のお見送りのときに目の前でお顔を拝することができました。あの笑顔で御手を振られると、どんな人も反射的に満面の笑顔で「美智子さまぁ~~~」「陛下ぁ~~~
」と振り返してしまうことが今回身を以てわかりました笑 これが皇族というものか。とてもふんわりした幸福な気持ちにさせていただきました。本当に。
※インタビュー(chacott):ロベルタ・マルケス
彼女もゴメスと同じブラジリアンなのですね。あまりラテンな雰囲気はないけれど。二人がオリンピック開会式で共演?なにそれ観たい!ぜひぜひ実現を!