帰宅してから知りましたが、中日でした。
『御浜御殿』はあの能装束の仁左衛門さんのお写真を見かけるたびに、観てみたいなあとずっと思っていた演目なんです。
割とよくかかっているようですが、歌舞伎座で新開場後に仁左衛門さんがされるのは初めてですよね。
観ることができて本当に嬉しい。
さて、感想でございますが。
仁左さまが絶品すぎて辛い。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
いつかこの人のお芝居を観られなくなる日がくるのかと考えて、それだけで泣きそうになってしまった(ほんとに)。
仁左衛門さんのいない世界なら私もいなくていいや、とまで思ってしまった(ほんとに)。
なにもかもが絶品すぎて、どこがよかったとか挙げられないです。
姿も声も台詞回しも間も華やかさも色っぽさも気品も次期将軍の大物感も人を食った感も人間できてる感もイラつきも余裕のからかいも、すべてが絶品 座ってても立ってても歩いてても絶品
今回の仁左衛門さん、さよなら公演(映像を持ってます)のときよりも更に進化していたように見えました。
二幕の薄紫と鼠色が混ざったような着物の色は何と言うのでしょう?すっきりした品と薫るような華やかさが、仁左衛門さんにすごくお似合いだった。映像ではただの白色に見えて、この繊細で上品な色合いが出ていないのです(それともさよならのときは本当に白を着てたのかな)。日本の伝統色で見ると 「桜鼠」が近いかなぁ。もうちょい白かしら。
そしてこの演目、ほぼ毎回仁左さんの高笑いで場面転換なのね。青果センセイ、ありがとー 特に助右衛門との応酬の最後、紫の羽織の右袖バッで笑って去る仁左さまがものすごく好きです。ええ、ものすごく。
それと「元禄ももはや十五年」、何気ない台詞ですけど仁左衛門さんの台詞回しで言われると自分が元禄時代にいる錯覚を覚えました。
夜桜も、お似合いすぎて怖いくらい。
斬り掛かる助右衛門を躱すところで桜の木から花びらがはらはらと散るところ、美しかったなぁ・・・・・・。
染五郎と二人、一幅の絵のようでした。あの花びら効果は、どうやっているのでしょう?
そういえば上の写真は夜桜能で二人静をやったときの桜なのですが(造花じゃなく本モノ!)、そのときに後シテの梅若玄祥さんが橋がかりの桜にさっと掠めて花弁を散らしたのです(失敗ではなく意図的だと思います)。あの時だけの演出なのかもしれませんが、ぞくっとしました。桜が日本の花の代表のようになったのはそう昔の話ではないと聞いたことがありますが、やはり桜と古典芸能は合いますねぇ。
浅野家再興を自ら願い出たのは内蔵助の完全な過ち。京で遊ぶように見せかけ、その成り行きをただじっと見守り、待つ以外にないその孤独と寂しさを、同じように世を偽って生きる綱豊だからこそ理解できる、理解できてしまう、のですね。
ラスト、ゆったり&颯爽と(この二つが普通に両立している至芸・・・)桜の陰を上手へ歩む仁左さま。あの感じを表現できるボキャブラリーは私には到底ございませぬ。
そんなわけで例によって仁左さまばかりにロックオンして観てしまいましたが、他の役者さんについても。
染五郎の助右衛門。
必死さが伝わってきてなかなかよかった、と思う(ごめん、ほとんど上手しか見てなかった・・・)。台詞まわしや演技が幸四郎さんによく似ているなあと感じました。
ただ一つだけわからなかったのが、綱豊との掛け合いで染五郎が笑いをとっていたのは、あれで正解なのだろうか・・?それとも本人的には笑いをとるつもりはなかったとか・・?そこだけが今でも本気でわからない・・。
時蔵さんの江島さま。
きゃ~カッコイイ(>_<) 私、こういう凛とした役の時蔵さんが大好きなんです(一番好きな時蔵さんは『伽羅先代萩』の沖の井)。そういえば歌舞伎座にいつのまにか英語のチラシができていて、祐筆はprivate secretaryとありました。private secretaryな時蔵さん。きゃ~カッコイイ
梅枝のお喜世。
上手すぎるせいか舞台度胸がありすぎるせいか、最近ちょっと演技に若々しさが欠けるように感じることがあるのですけれど(時蔵さんの方が若く見えるときがある)、やっぱり安心して観られます。
そして左右に萬屋親子を従える仁左さま。ああ、なんて美味しい構図なの
お喜世ちゃんをイジメる上臈浦尾は、竹三郎さん♪
左團次さんの白石。
仁左衛門さんとのバランスがよく、温かな師弟関係がとてもよかった。そして心は温かいけど、「好きにおやりなさい」と言いそうな先生笑。
今回の緞帳は『朝光富士』でした。晴れやかでいいねえ。
幕は芝翫さん襲名仕様のポップ系。
てか。
来月の京都の顔見世、ニザさまの『吉田屋』なんですね・・・・・・・・・・・(歌舞伎座のチラシで知った)。
そして『引窓』・・・・・・・・・・・・・・・。観たい、観たすぎる。
てか。
来年1月の松竹座、ニザさまの富樫なんですね・・・・・・・・・・・・・・・。
でも芝翫さんの弁慶は好みじゃなかったからな・・・。
でも新口村は観てみたいな・・・・・・。
てか。
来年のこんぴら、ニザさまなんですね・・・・・・・・・・・・・・・。
はぁ・・・・・・・(色んな理由によるため息・・・)
この翌日は国立劇場に行ってきました。感想は後ほど。
歌舞伎座では、山科の内蔵助に思いを馳せるニザさまの綱豊卿。国立劇場では、一力茶屋で遊ぶ吉右衛門さんの由良之助。
今月の東京はなんという贅沢さでございましょう。。
御浜御殿はもう一回行きたいな。できれば口上も。
※追記
23日に再び行ってきました。この日の夜の部は貸切でしたが、幕見は利用できたので。
ニザさまは中日に比べてちょっぴりサラサラモードだったような。新薄雪のときのデジャヴ・・。それでもあちこち絶品至芸で、やっぱりうっとりしちゃいました。
ニザさんの声での「敷居を越せぃ」と「助右ぇ」が大好きです。「俺」な綱豊卿も大好きです。
そしてラストの「わしの出じゃ」で晴れやかに上を見上げ、能舞台への向かうときの透明で高潔な空気・・・本当にここは表せる言葉がない・・・・
ちなみにこの日は11月23日なので「いいにざの日」のハッシュタグがツイッターに溢れかえっていました♪
染五郎は敷居を越すところが今回はよかったです(前回ここも笑いが起きてたけど、今回は起きていなかった)。
今回は口上も観てきました。
歌舞伎座で口上を観るのは初めてですが、普段絶対に同時に舞台に上がらない人達が同じ舞台にいるのを観るのは壮観ですねぇ・・・。眩しいわ・・・。皆さん、美しい&カッコいい・・・。そして(家の違いや実際の仲のいい悪いはあるだろうにせよ)歌舞伎界ってやっぱり子供の頃から互いを知っている一つの大きな家族のようなものなんだな、と温かく感じました。藤十郎さん、お元気そうでなによりです~ 児太郎くんの福助さんについての口上に、芝翫さん(幸ちゃん笑)と福助さんの熱い舞台を思い出しちゃいました・・・。彌十郎さん、「勘三郎さんも喜んでいると思います」。歌舞伎っていいなぁ。
そうそう、松嶋屋(ニザさん&秀太郎さん)だけ裃の色がグラデーションなんですね。お洒落♪