風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

初春歌舞伎公演「世界花小栗判官」 @国立劇場(1月6日)

2018-01-13 01:24:51 | 歌舞伎




ワタクシ、昨年の年末はちょっぴり気分がお疲れモードで・・・
そんな私の正月休みはもちろん、食って吞んでの寝正月。
初芝居は、何にも考えないでぼーーーーーーと観られるものが観たかった  
感動はいらない。理屈もいらない。くだらなくて、ばかばかしくて、ゆるくて、のんびり気分で観られるもの。

といえば~


 正月の国立  


今年の正月ほど菊五郎劇団の存在に感謝したことはなかったかもしれない。
ゆるゆるで、途中うとうとしちゃって、それを心苦しいとか思わなくてよくて、通常なら1800円だって高いんじゃね?と思うであろうぶっちゃけ浅いストーリーを12時~16時まで4時間観て、ちっとも腹が立たず、最後の全員勢揃いの手拭い撒きで真ん中の段の上に立つ菊五郎さんを拝んで、気分よく帰れてしまうのだから。
いまの私が必要としていたのはまさにこれ。力を抜ききってのんびり観られるお芝居。なんでも許せちゃうお芝居。

※役者さん達がいつでも真剣勝負なのはもちろん承知しておりますです。

30分前に入ったら、ロビーで獅子舞をしていました。3階通路からのんびり見物。


【通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん)】

一幕。
オープニングは、現代風な音楽をバックに、流れ星と赤く光る馬
室町御所堀外の場。
小栗家の奴の声がいいな~と思ったら、萬太郎だった。
春の鎌倉扇が谷の横山館
人食い馬に菊ちゃん(小栗判官)食わせようとしたり、馬を碁盤に後ろ足で立たせようとさせたり(黒衣によるワイヤー掛けも3階席からはシッカリ見える笑)、上使細川政元が実は風間(菊五郎さん)だったり、屋敷に居合わせた白拍子(時蔵さん)が実は本モノの政元だったり、正体がバレてしゅわしゅわ~な煙の中のんびり襖を開けて退場する菊五郎さんだったり(誰も追わない)、江の島沖のお馬さんの下半分に海柄の布がついてたり、江の島沖なのに馬が普通に泳いでたり。ばかばかしくて、実によい。←100%褒め言葉です
足利家の重宝の宝剣を横からかっさらった風間が水色の布をユラユラ振る浪役さん達に紛れ、フラッシュ効果(これは目ぇチカチカ~)の中退場。
「父の敵!」と菊五郎さんに食ってかかる菊ちゃんも見どころな一幕。

二幕。
夏の近江
チャリ場。鬼瓦の胴八(片岡の亀蔵さん)の妹小藤(梅枝)へのカラミはちょい苦手だった。橘太郎さん(瀬田の橋蔵)のシャンシャンが片手に握ってる笹に不覚にも吹く。
松緑(浪七)と梅枝が、しっかり歌舞伎
波打ち際の立ち回りは見応えたっぷり
浪七が腹を切って神に祈ると、逆戻りしてくる照手姫(右近)の舟

三幕。
秋の美濃の青墓宿
萬屋父息子による、万屋母娘。
足利家のもう一つの重宝である轡(実は既に風間の手にある)目当てでお駒(梅枝@二役)と祝言しようとして、それがここにないとわかり本命の照手姫に再会した途端アッサリお駒を捨てる女の敵判官は、見目麗しい菊ちゃんだと説得力ありあり。母(時蔵さん@二役)が娘を殺すときの展開はやや強引だったような。
梅枝、幽霊似合う。三次元の幽霊画

四幕。
冬の熊野
風間の隠れ家セットにわくわく。
花道から判官を車に乗せて曳いてくる照手姫。まるで子供のオモチャな車(座った菊ちゃんと同サイズ)の現実味のなさがお伽噺みたいで楽しい。――と思っていたら、なんとこの車(躄車、土車というのだそう)、実際に中世・近世に体の不自由な人がこれに乗って全国を巡礼したりしていたのだとか!歌舞伎のおかげでまたひとつ賢くなりました
場面転換後の真っ青な那智の滝も大詰らしくて爽快。

こういう荒唐無稽なファンタジーぽい歌舞伎の雰囲気は、好きだなあ。澤瀉屋バージョンも機会があったら観てみたい。

ところで、春夏秋冬を巡るパターンって前にも国立正月でありましたよね。安易すぎる演出だと思うのだけど(綺麗ですけどね)、まあよいです、正月だもの。