風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

NHK交響楽団 第1883回定期公演 Cプロ @NHKホール(4月21日)

2018-05-02 23:09:16 | クラシック音楽



ブロムさんってこういう↑色がよくお似合い
15日に続いて、N響定期のCプロに行ってきました。

【ベートーヴェン (1770~1827) ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58 (約32分)】
この協奏曲を聴くのは、ペライア、ツィメルマンに続いて3回目です。
この曲の光と闇を感じさせてくれたペライア、異世界の透明感と華麗さを見せてくれたツィメルマン、そして今回のピリスは先日のリサイタルと同じくベートーヴェンという人間の等身大の美しさを見せてくれたのでした。同じ曲とは思えない三者三様さで、みんな本当に素晴らしい。

今回もピアノはヤマハだったけれど、ピリスの音の存在感がすごかった。
特に二楽章の弱音の集中力と聴かせ方。テンペストのラストでも聴かせてくれた、最後の音の響きが消えゆくときのとてつもない美しさ。静寂の雄弁さとでもいえばいいでしょうか。あんな小柄な体で、あの迫力はどこから来るのでしょう。たった一人でこの広いNHKホールを支配してしまっている。といっても大仰な演奏をしているわけでは全くなく極めて自然体で、リサイタルの時と同じく「昔の偉大な作曲家」ではなく「等身大の若いベートーヴェン」の姿が見えるような演奏で、それはブロムさんによるN響の演奏も同じで、ブロムシュテットとピリスはそういうところがよく似ているなぁと思いながら聴いていました。

ピリスのピアノを丁寧に温かくサポートするオケの音も、
優雅で美しく。
第一、二楽章はゆっくりめで、ブロムさんもこういう演奏をするのだなぁと思っていたら、三楽章のオケの主題は早く、ピリスが時々付いていけていなかったように聴こえた場面も。
カデンツァは、ヴァイオリン協奏曲のときほどモロにではなかったけれど、やっぱり体と顔をソリストに傾けてじっと聴き入るブロムさん。ラストのジャン!の指揮の爽快さは見ていて楽しい♪

カーテンコールは、美しい音楽を聴かせてくれたお二人とオケに満場の拍手。
お先にどうぞなさりげないジェントルマンぶりが素敵なブロムさん。ソリストが女性だとこういうときわかりやすいですね。ハイティンクとペライアが「さあ」「いえマエストロがお先に」「いや君が」と譲り合っていた光景も微笑ましかったですが(結局はもちろんペライアが先に退場していた)。
そしてピリスに拍手を贈りながら後ろから歩いていくブロムさん

ソリストアンコールは、12日のリサイタルと同じ『6つのバガテル』 Op.126-5。
最後に再びお二人で仲良く舞台へ出てこられて、前半終了。


【ベートーヴェン (1770~1827) 交響曲 第4番 変ロ長調 作品60 (約38分)】
こちらも、美しく優雅なベートーヴェン。N響の弦と木管の美しさ。
踊るような軽やかなフレーズのところの重心の低さは今回も同じ。重心は低いのに、聴き終わったときの後味が爽快で軽やかで、音楽を聴いた喜びと満足感がたっぷりあるのが不思議。
やっぱり私はブロムさんの指揮が好きだわ、と再確認。

演奏後はオケに感謝の拍手を送るブロムさん。リハーサルの厳しさで有名な人だと聞いたことがあるけれど、演奏後のこういう仕草はいつも優しいですね。

オケの演奏の突き抜け感は先日のAプロの方が感じられた気がするけれど(キュッヒルさん効果?)、集中力の高く丁寧で美しい、気持ちのいい演奏会でした。



ピリスのFacebookより、演奏会後の楽屋口にて。晴れやかないい笑顔
ベートーヴェンの温かな美しさを教えてくださったお二人に感謝!


NHK交響楽団 第1882回定期公演 Aプロ @NHKホール(4月15日)

2018-05-02 18:19:51 | クラシック音楽




昨年11月のブロムさん×ゲヴァントハウスの公演は全プログラムをコンプリートしてしまった私。
5ヶ月ぶりのN響との今回も、全プロ皆勤
まずは初日のAプロの感想から。

ベルワルド (1796~1868) :交響曲 第3番 ハ長調「風変わりな交響曲」(ブロムシュテット校訂版)(約28分)
ベルリオーズ (1803~1869) :幻想交響曲 作品14 (約50分)

二曲ともすっごく楽しかった
1500円でこんなに楽しめるのなら、毎回行こうかなN響定期公演。と一瞬思ったけれど、私はN響というよりやっぱりブロムさんが好きなのだと思う。いいなあと感じた部分がゲヴァントハウスのときと同じだったので。
全体で一つの交響曲を聴いている感覚、なのに突き抜けた推進力があって、弱音も強音も丁寧で美しい。
前回ゲヴァントハウスとのコンビで見せてもらえたような天国はN響の音からは見えなかったけれど、N響の演奏、とてもよかった。N響を聴くのは初めてだけれど、このオケの音、これまで聴いた日本のオケの中では私は一番好きかも。もっと保守的な演奏をするオケかと思いきや突き抜けた美しさを聴かせてくれましたし、弦も熱くて濃密でとても綺麗だった(ちなみに本日のコンマスはゲストのライナー・キュッヒルさん)。クラリネットの美しい音色にもうっとり

一曲目は、ブロムさんの故郷スウェーデンの作曲家ベルワルドの交響曲。
そうだった、ブロムさんの指揮はこんな感じだった。すごく音楽が好きそうに楽しそうに指揮されますよね。少年みたいで、インタビューですぐに歌いだしちゃうあのまんまの指揮。ていうかブロムさん、お元気だ。11月の来日時よりさらお若く見えるという驚異の90歳。この日は友人の月命日で、健康に気をつけて次回もぜひお元気で来日していただきたいって言っていた友人はあちらの世界に行ってしまって、人生って本当にわかりませんね…。

本日演奏される2曲は、ブロムさん曰く、どちらもベートーヴェンの影響を受けた作曲家の作品とのこと。同じプログラムを5月にコンセルトヘボウとも演奏されますね。
ベルワルドという作曲家の名前を今回初めて知った音楽素人の私にはこの曲がどういう形でベートヴェンの影響を受けているのかはよくわからないのだけれど(ベルリオーズの方は型破りな交響曲の作曲法?)、最終楽章の木管楽器からクライマックスに向かう勝利の主題のような部分などはスメタナのブラニークを聴いた感覚が思い出されて、すごく楽しかった ブロムさん、盛り上げる~。

休憩を挟んで後半は、ベルリオーズの幻想交響曲。
ブロムさんが振るとゲヴァントハウスでもN響でもTHE独逸な音になるのだなあ。好みとしては2楽章のワルツなどもうすこし軽やかに演奏してほしいと感じる部分もなきにしもあらずだったけれど、そんなのは些細なことと思わされてしまう楽しさと充実感

そして、きゃ~楽しい~美しい~~~~♪♪と聴いていると、その美しいまま、はたと気づけば断頭台への行進の只中にいるという。金管全開の華やかさ!!がゆえの怖さ。音色の美しさ!!がゆえの異様さ。を繰り返しありでたっぷりと味わわされた後の、ギロチンざしゅっ!で呆然。予習で聴いたカラヤン×ベルリンフィルの演奏では、最期の想いに十分に浸り切らせてくれた後にざしゅっだったのに、今回は浸る間を与えてくれずに容赦なくざしゅっで。この演奏って一見リアルじゃないようで、実はものすごくリアルなのでは。最終楽章の魔女の宴も盛り上げきってくれました~~~。ブロムさんもオケもぶらぼーーー
この曲はバンダ(オーボエ&鐘)も楽しいですよね

大大大満足な演奏会でした。
日本のオケで毎回こういう演奏が聴けるのなら、来日オケに行く頻度を減らすのだがなぁ

※ブロムさん動画インタビュー:ベルワルドの交響曲について