風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『みをつくし料理帖』

2020-06-15 10:37:48 | テレビ




「源斉先生。道が枝分かれして迷いに迷ったとき、源斉先生ならどうなさいますか?」

「私なら心星を探します」
「心星…?」
「そう、心星です。あそこに輝くあれが心星ですよ。あの星こそが天の中心なんです。すべての星はあの心星を軸に回っているんですよ。悩み、迷い、考えが堂々巡りしているときでも、きっと、自身の中には揺るぎないものが潜んでいるはずです。これだけは譲れないというものが。それこそがその人の生きる標となる心星でしょう」

見逃しドラマ視聴プロジェクト第6弾は、『みをつくし料理帖』(2017年、2019年)。
2012年にテレビ朝日でもドラマ化されているようですが、私が観たのはNHKの方です。
脚本は『漱石悶々』『夫婦善哉』『ちかえもん』に続き、藤本有紀さん。髙田郁さんによる原作は未読です。

面白かった
そもそもタイムスリップしたらやってみたいことの一つが「江戸の街で美味しいものを食べる」である私。このドラマが楽しくないわけがない。

キャストも、皆さんよかったです。
原作との比較はできないけれど、澪役の黒木華さんはこの役にとても合っていたように感じましたし、『夫婦善哉』では上方のぼんち風味が足りずワタクシ的に不満だった森山未來さんは、今回の小松原は江戸の二枚目風な役なのでピッタリ。大変よかった。
ていうかあれだよね、私の見逃しドラマ視聴プロジェクトはまだ6弾でしかないのに、俳優さんが被りすぎてるよね。異なる作品で既に2回観ているのが、森山未來さん、尾野真千子さん、富司純子さん、麻生祐未さん、松尾スズキさん、国広富之さん、伊武雅刀さん、林遣都さん。NHKがドラマで使う俳優さんってこんなに範囲が狭いの・・・?まあいいですが。

ところで、(原作を読んでいないのでドラマだけの感想ですけど)澪が小松原に恋に落ちたとき、そして小松原への嫁入り話が出たとき、周りの大人達はあまりに無邪気に二人を応援しすぎじゃないかい?ふつうだったら即座に「小松原(旗本)との結婚=澪は好きなように料理ができなくなる」と結びつけるよね。まあ百歩譲って彼らも澪も町人だし、武家のしきたりに疎かったとする。
でも小松原!あんたは旗本でしょ!武家のしきたりを骨の髄までわかってるでしょ!「ともに生きるなら下がり眉がよい」とか洒落たプロポーズをしていないで、「これからはお前の好きなように料理はできなくなるが、それでも俺とともに生きてくれるか?」とかそういう現実的なプロポーズをしなさいよ!又次が世間話のついでに教えて初めて澪がその事実に気付くって、どーゆーことよ!
と思ったのだけど。
澪から断られたときの小松原の表情に(ここの森山さん、よかった…)、でも本当に辛いのは澪よりもこの人の方なんだなぁ、と。これまでも、そしてこれからも市井で自由に生きられる澪より、身分のしがらみの中で生きるこの人の方が可哀相だ。澪のことを本当に愛していたし、自由に生きたい人なのに、ね。

あと気になったのは、富三の料理の味の「気持ち悪さ」を客の多くが気付いていたのに、つる家の主人はどうして気づかなかったん・・・?とか。

セットは、今回も素敵だった


この早朝の雪の場面、美しかったですねえ。
ワタシ、浮世絵や歌舞伎や文楽で一番好きな演出が雪なので、感動が倍増でございました・・・


第2話のこの場面も、まるで広重の絵のようじゃないですか

©歌川広重『名所江戸百景 猿わか町よる之景』
ね?
ああ、江戸にタイムスリップしてみたいっっっ。
ちなみに浮世絵や日本画に描かれるワンコはめちゃくちゃキュートなので、そればかりを集めた画集も出ているほどです(私も持ってる) 
さらにちなみに、この絵はゴッホが蒐集していた浮世絵のうちの一枚です。一昨年アムステルダムのゴッホ美術館で観た企画展でも、沢山の浮世絵が展示されていました(ちょうど2年前の今頃だった。次に海外へ出られるのはいつだろー・・・)。

ドラマに出てくる料理はみんな美味しそうで、観ていてお腹が空いて困ってしまいました。
公式ページでは、澪が作っていた料理のレシピが公開されています
「はてなの飯」、作ってみたいなあ。


★オマケ★
江戸時代へのタイムスリップといえば、先日再放送もされていたTBSのドラマ『JIN-仁-』。
ドラマでは武田鉄矢さんが演じていた緒方洪庵が開いた適塾は、今も大阪市内に保存されています。内部見学も可能。
以下は、昨年訪れたときの写真です。





この適塾の教育法と比べたら、今の時代のそれはユトリのユトリのユトリといったところ。
塾生が寝るスペースは一人一畳と決められていて、成績のいい者から好きな場所を選べたそうです。最も不人気だったのは出入口付近で、夜中にトイレに立つ人達に踏まれて大変だったとか
また数に限りがある貴重な本は、書き写して使用していたとのこと。気が遠くなるような作業ですよね。私も少しは見習わないとなあ、とそのときは思うのですけれど、なかなか。。。
なお私は適塾というと、司馬遼太郎さんの小説『花神』の印象が強いです。