好き嫌い・偏食について調べていたら、
離乳食を食べない赤ちゃん問題が立ちはだかり、
その解決法としてBLWにたどり着きました。
印象・ポイントは、
・赤ちゃんの離乳を親のしつけではなく“赤ちゃんが主役”に置き換える方法。
・赤ちゃんが“食べるスキル”を獲得していく過程を親が腹をくくって見守る方法であり、赤ちゃんが試行錯誤する様子を楽しく見守ることでもある。
・BLWを経験した赤ちゃんは食べることが好きになり、自分で食べたという達成感を経験できる。
・昔の日本では普通だった「親の食べているものから取り分ける」が入っており、親の手間が減る。
等々、“子どもの成長・発達を見守る”という子育てのエッセンスを凝縮したものと感じました。
メモを残しておきます。
前編〜基礎知識〜
▶ BLWとは何か?
・ジル・ラプレイ氏(助産師&保育士)が提唱した離乳方法
・子どもの自主性や手先の器用さが身につく
・取り分けスタイルで親も楽
✓ 裏ごしの手間なし
✓ 食べるべき量の基準なし
→ 親のストレスほとんどなし
▶ BLW=手づかみ食べ、ではない!
・Baby Led Weaning=赤ちゃん主導の離乳食
・赤ちゃんが自分で食べる、赤ちゃん主体の方法
・手助けしたい気持ちをグッと抑えて赤ちゃんにすべてを委ねる
→ 我が子を助けたい気持ちをどう抑えるかが重要ポイント
・目の前の食材を選ぶところから飲み込むまで赤ちゃんが自分でコントロールするため、
自尊心・自立心が養われる。
▶ 親のすべきこと
1.いつから離乳食を始めるかを決める。
2.赤ちゃんが食事の練習をする環境を整える。
3.どんな食べ物を提供するかを決める。
▶ BLWの基本ルール
1.赤ちゃんと一緒に食卓に着き、親も食事をする。
2.赤ちゃんが食べ物に興味を示したら、それで遊ぶよう促す。
3.食べ物は、赤ちゃんがつかみやすい形で提供する。
〜裏ごしした食材は使わない。いきなり固形物を与える。
4.最初から赤ちゃん自身が自分で食べる。
〜準備だけして、あとは赤ちゃんにお任せ。
5.食べる量や何を食べるかは、赤ちゃんに決めさせる。
6.赤ちゃんが欲しがる間は授乳を続ける。
▶ BLWが安心な理由
・“食べる”ことは“歩く”こと同様、発達過程で自然に獲得していくこと。
・その過程を親が過剰に干渉しない、阻害しないことが大切。
▶ 素朴な疑問集
Q. いきなり固形物を与えて食べられるの?
→ 離乳食初期は、たべられなくてもいい、食べる練習をする時間と考える。
歯がなくても食べる練習はできる(歯ぐきでカミカミ、あごや舌を使う練習)。
生後9ヶ月頃までは赤ちゃんのメインの栄養源は母乳・ミルク(離乳食は“補完食”)、
母乳・ミルクを欲しがるだけあげていれば問題ない。
Q. のどに詰まらないのかな?
→ 安全装置(咽頭反射、咳反射)が作動するので大丈夫。
のどに詰まりそうになると“咽頭反射”“咳反射”が起こり「オエッ」「ゲホッ」となる。
これを繰り返すことで「この大きさは今は食べられない」と学習する。
本当に窒息すると声が出せなくなる( → 応急処置はこちら)。
Q. 赤ちゃんが食べたいものだけ食べたら、栄養バランスが崩れない?
→ 1日単位ではばらつきがあるが1週間単位で見るとバランスが取れることが多い(検証不十分です)
▶ BLWを赤ちゃんの視点から見てみると・・・
・赤ちゃんにとって“食べる”ことは初体験!ドキドキ、ワクワク。
・“赤ちゃん視線”で考えてみましょう。
Q. 人から見知らぬ物体を手渡されたら、あなたはどうする?
✓ 眺める
✓ 触る
✓ 手に取る
✓ ニオイを嗅ぐ
✓ これはおもちゃ?もしかしたら食べものかも?と思う
✓ 口に入れてみる
✓ 舐めたりカミカミしてみる
〜BLWでは赤ちゃんが初めてこれを行うことになります。
初期は“食べる時間”にならなくても仕方ない、
慣れる時間、練習する時間です。
Q. 初めてあなたが自転車にまたがったとき、乗れましたか?
✓ 初めは乗りこなせない
✓ 何日も練習して乗れるようになる
✓ その後、乗り方を忘れていない・・・ですよね。
・練習していないことはできない、最初からうまくはできない
〜これは自転車にも食事にも当てはまる。
・赤ちゃんは「未知の物体の調査」と「新しいからだの使い方の練習」を同時に行っているのです。
・「親が手伝わない」ことって難しい・・・つい手助け、口出しをしたくなりがち。
✓ 赤ちゃんの食事のサポート
✓ はやく食べるようせかす
✓ 完食するよう促す
✓ マナー違反を注意する
〜これらはすべて“親目線”の余計なお節介かもしれません。
後編〜実践〜
▶ 離乳食を始める時期:生後6か月頃
・赤ちゃんの準備が整ったかどうかのチェックポイント
✓ からだの発達:抱っこやハイチェアの支えがあれば背筋を真っ直ぐ伸ばした状態で座れる。
✓ 赤ちゃんのモチベーション:家族の食事の様子を観察したり、テーブルの上の食べ物をつかもうとする。
▶ 基本的安全対策
1.食べ物を手でつかみやすいように、赤ちゃんを真っ直ぐ座らせる
〜ベビーカーに寄りかかっている姿勢は❌️ 、ハイチェアがお勧め。
2.のどに詰まる可能性のある食べ物など、危険な食べ物は与えない。
〜赤ちゃんがつかめないモノ=安全に食べる準備ができていない。
3.大人が赤ちゃんの口に食べ物を入れない。
4.赤ちゃんが食べ物を扱っている間、邪魔をしない。
〜テレビなどを見ていると注意散漫となり誤飲・誤嚥リスクが高くなる。
5.食べ物のあるところで、赤ちゃんを一人にしない。
6.食後は食べ物が口の中に残っていないかチェックする。
▶ 危険な食べ物・気をつけるべき食材(イギリスの例)
(危険な食べ物)
・食塩が必要以上に含まれている(食塩は1日1g以下に抑える)
・砂糖が必要以上に含まれている
・食品添加物
・十分に火が通っていない生のシーフード(感染症のリスク)
・はちみつ(ボツリヌス菌のリスク)
・サメ、メカジキ、マカジキ(水銀リスク)
・低温殺菌していないチーズ(リステリア菌リスク)
・ブラン食品、生のブラン(食物線維が多すぎる)
・紅茶・コーヒーなどカフェインを含む飲み物
・ライスミルク(無機とヒ素のリスク)
・豆乳(アルミニウムと植物性エストロゲンリスク)
・炭酸飲料と希釈していないフルーツジュース(虫歯リスク)
・のどに詰まりそうな食べ物(小さくて丸いもの、固い果物、魚の骨など)
(気をつけるべき食材)
・青魚
・アレルギーの恐れのある食べ物
▶ 食材・料理の(マイ)ルール
・自然食材が使われている家庭料理、大人にとってもバランスのよい食事を心がける。
・野菜あるいは果物は毎食、炭水化物・たんぱく質はそいれぞれ2食に1回以上提供する。
・前述の「危険な食べ物」は控える、輸入物のチーズも避ける。
・味の濃い料理を取り分けるときは一度お湯ですすぐ。
・ジュースは与えない。
▶ お勧めの食材
(6〜8か月)スティック状の食べ物
(7〜9ヶ月)小粒の柔らかいもの、ツルツルしたもの ・・・丸くてのどに詰まりそうなものはカットして
✓ この時期には“中休み”をする赤ちゃんがいるそうです。
(8〜10ヶ月)レーズンなどの小粒な食べ物、ディップ
✓ 食べ物に対する姿勢が“興味” → “食事”に切り替わる時期。
(9〜12ヶ月)様々な形や舌触りの食べ物
★ ちなみに赤ちゃんの発達を対応させると・・・
(6〜8か月)手づかみ、手からはみ出た食べ物を歯ぐきで噛んだりしゃぶったり
(7〜9ヶ月)手の扱い・噛むのが上手になる、柔らかいモノを口に押し込める
(8〜10ヶ月)指でつまめる、両手を同時に使える
(9〜12ヶ月)米などの小さいモノもつまめる
(11〜14か月)フォークやスプーンを使いたがる
▶ お勧め周辺グッズ
・Babybyorn製ハイチェア(品番067021)・・・廃盤
✓ プラスチック製
✓ テーブル取り外し可能で丸洗いできる
✓ 赤ちゃんの上体をしっかり固定してくれる
・マスカー(W1100mm×D25M)・・・床の汚れ対策、ホームセンターで売ってます
・袖付きエプロン(西松屋で726円)・・・首回りが緩むのが玉に瑕
小児科医の私としては、のどに詰まらせたときの対処法をしっかり学んでから行う方が安全・安心かなとも感じました。
日本BLW協会でも注意喚起をしています。
▢ 窒息について(日本BLW協会)
なお、医師の立場からは直径4cm未満(トイレットペーパーの芯の穴の大きさ)は乳幼児ののどに詰まる可能性があるため「与えてはいけない・周りに置いてもいけない」と指導しているのですが、この点だけ整合性がとれません。
▢ 赤ちゃんやこどもを誤飲・窒息事故から守る!万一のときの対処法は?(政府広報オンライン)
<参考>
▢ 「自分で食べる! 」が食べる力を育てる:赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門(ジル・ラプレイ著、2019年発行、原書房)
▢ 子どもの窒息対応(日本BLW協会)
▢ 救急救命士に学ぶ!こどもの窒息時の対応(CityOfYokohama)
▢ おもちゃなど小さなものを誤飲する事故に注意!(消費者庁)