長くなったので二部構成に切り替えました。
「食べない子が変わる魔法の言葉」の要約の続きです。
前回は問題点の分析が中心でしたが、
今回は実際の声かけの説明が中心になります。
昔々、虐待関係の本を読みあさったことがありました。
図らずも、自分の育児、さらに自分が育てられた状況・環境などを振り返る機会にもなりました。
その時感じた“育児の極意”とは・・・
「安心する場所を用意し、あとは自由にさせる」
ことだと思いました。
好き嫌い・偏食の子どもを育てる際にも、
その底流にこの原則が流れてると思います。
それから、親が思っている子どもの発達レベルに子どもが追いついていないギャップ、
の存在も大きいですね。
親の文句の定番「ちゃんとしなさい!」って子どもにはなかなか理解できないようです。
それがなくても食べない場合は、なぜ食べないのかの理由があるはず。
観察して突き止める努力をしましょう。
コミュニケーションを取って、何が苦手なのか理解しましょう。
それがわかれば対応可能です。
<前回の復習>
▶ 「食べない子」が変わる5つのステップ
(ステップ1)この食べ物、知らないよ
(ステップ2)この食べ物を知ってもらう
(ステップ3)この食べ物に興味を持ってもらう
(ステップ4)この食べ物に触れてもらう
(ステップ5)この食べ物を食べてもらう
▶ 食べない子が食べるまでのスモールステップ
見たことのない食べ物が食卓に並んでいる?
→ パパとママが食べている
→ 「これ、なんだろう?」とその食べ物が気になり始める
→ その食べ物についての情報を得る
→ 食べ物に興味が湧く
→ 試しにニオイを嗅いでみる
→ ペロッと味見をしてみる
→ ひとくち食べてみる
→ 自分用として食べる
上記を頭に思い浮かべながら、今回の内容へ。
▶ 子どもの「自己肯定感」を意識する
・自己肯定感とは「どんな自分でも価値があるという感覚」。
・自己肯定感を上げるためには「無条件で受け入れられること」「無条件で高く評価してもらえること」が大切。
・否定的なことを言われたり、“条件付”で評価されると自己肯定感は下がる。
・食べられるか、食べられないか、で善悪の判断をする必要はない。
▶ 魔法の言葉その1「〇〇って知ってる?」
・初めて出会う食材や料理に対して有効な声がけ。
(例)「お魚もちゃんと食べようね」 → 「お魚を食べるとどうなるか知ってる?」
▶ 魔法の言葉その2「いつもと違う!」
・ふだんから見慣れている食材や料理に対して有効な声がけ。クイズにするとさらに盛り上がる。
・子どもが興味をもつことと食を結びつける。
・食べてもらう以前に、食材や料理に対してのポジティブな情報量を増やす。
(例)
✓ 「このキュウリ、いつものよりトゲトゲがいっぱいなんだよ」
✓ 「このお魚、いつもよりも新鮮なんだよ」
✓ 「お肉を食べると筋肉がついて足が速くなるんだよ」
✓ 「このお味噌汁はいつもと違うところが2つあります、わかるかな?」
(大人の例)
✓ 居酒屋へ行ったときメニューに「ポテトサラダ」と書いてあるだけと「自家製ポテトサラダ」ではどちらが美味しそう?
▶ 魔法の言葉その2応用編「認めて打ち消すコミュニケーション」
・子どもの不安を認めた上で、それを打ち消す提案をするスキル。
(例)トマトが苦手な子どもに調理を工夫した料理を出したとき
「トマトのどんなところが嫌い?」
「食感が気持ち悪い!」
「食感が気持ち悪いんだね。」(認める)
「でもこのトマト料理は食感が気持ち悪くないように作ってみたよ。」(打ち消す)
「感想を聞かせてね。」
▶ 魔法の言葉その3「同じものだよ」
・見た目がちょっと違う場合に躊躇している子どもに「同じものだよ!」と伝える。
(例)鶏の唐揚げは食べられるけど鶏肉の煮物は食べられない子どもに、「同じお肉なんだよ」と教える。スマホ写真でも可。
▶ 魔法の言葉その4「同じものだよ」ほのめかし編
・調理の前後の食材の姿を見せて「同じものだよ」と気づかせる。
(例)お好み焼きは食べるけど千切りキャベツは食べない子どもに、
まず千切りキャベツを食卓に出し(案の定食べない)、
それを台所へ持っていきお好み焼きにして再度食卓へ。
→ 生のキャベツも食べられるかもしれない、と子どもが思い始める。
▶ 魔法の言葉その5「同じものだよ」分解編
・食材が混ざっていると食べられない子どもには、食材ごとにお皿に分けて出す。
・最初はふつうの形で出してみて、案の定、食べないことを確認後に食材を分けて出すのがポイント。
(例)味噌汁:具材と汁を分けて出す。
(例)カレー:ご飯と具とルーを分けて出す。
(例)焼きそば:麺とキャベツとピーマンとタマネギを分けて出す。
▶ 魔法の言葉その6「匂いを嗅いでみる?」
・「興味を持たせる」と「食べてもらう」の間のステップで使う。
(例)「匂いを嗅いでみる?」「ちょっと触ってみる?」「ペロッとなめてみる?」「ひとくち食べてみる?」
▶ 「ひとくち食べてみる?」の上手な使い方
・連発すると子どもは萎縮する。早すぎる提案、食事のたびに言うのは逆効果になることがある。
・この一言の前に、子どもが自分から「食べてみたい」と言い出すくらい「興味を引き出すこと」が肝心。
・ひとくちが大きすぎると受け付けないので、「小さすぎる」と思うくらいのひとくちでかまわない。目安は大人のひとくちの1/4以下。
▶ 絶対に言ってはいけないNGワード
① 「じゃあ、もうひとくち!」
・やっとひとくち食べた後の「もうひとくち!」は子どもには重すぎて、親子の信頼関係が崩れるキッカケになる。
・がんばった後の「もうひとくち!」はNG。
② 兄弟との比較
・兄弟はそれぞれ得意と苦手があって当然、食べられることが偉いと考えない、食べられない子を否定しない。
③ 罰を与える言葉
・全部食べなきゃもう作らない!自分で作りなさい。
・食べてくれたらうれしいな、というスタンスで。
▶ 魔法の言葉その7「〇〇食べたね〜!」
・食べてくれたときのリアクションとしてお勧めなのが「食べたことをそのまま声に出して言う」こと。
・大げさではなく、日常会話より少し明るめのトーンで、子どもの目を見て言う。
・大げさに喜んだりする必要はない。
・大げさにほめることは「食べたからほめられた」という“条件付き”の評価になり、条件付きの評価は自己肯定感が下がりやすい。
・伝えたいのは「食べられたからあなたは偉い」ではなく「あなたの成長をお母さんはいつもしっかり見ているからね」という姿勢。
▶ 魔法の言葉その8「どこが美味しくない?」
・子どもが食べたものを吐き出したときに言う言葉。子どもは「自分の気持ちに寄り添ってくれた」と感じる。
・吐き出すことは「まだぼくの体には早いよ」ということを口で上手く説明できないときのサイン。
・子どもの苦手な傾向、「苦い」「固い」「ザラザラがイヤ」を知るキッカケになることも。
▶ 魔法の言葉その9「どんな味がする?」
・「おいしい?」という問いはプレッシャーが強いので、シンプルに料理の感想を聞くにとどめる。
・聞かれた子どもにも「味わって食べる」という意識が生まれる。
▶ 魔法の言葉その10「味わって食べてみて」
・「残さず食べようね」 → 「味わって食べてみて」「どんな味がする?」
・残さず食べたことをほめたいときは、結果ではなく姿勢や過程を評価しましょう。
(例)「残さず食べられたね」 → 「がんばって食べたんだね」
<Q&A集>
Q1. 給食は食べているようなのですが、家ではあまり食べません。何がいけないのでしょうか?
A. 心配ありません。外ではがんばっているお子さんが、家ではありのままの姿を見せているということ。親を信頼している証拠です。
給食をモリモリ食べているなら、問題ありません。
給食をなんとか食べられているレベルなら「先生に状況を聞いてみる」のも選択枝の一つです。“食べさせ上手”な先生もいるので、そのテクニックを盗むことができるかもしれません。また、ふだんから先生とコミュニケーションを取っておくことで「先生が無理強いすることで給食が嫌いになる」等のトラブル防止にもなります。
Q2. 食事に集中できません。食事中の立ち歩きがひどいです。スマホで動画を見せると落ちつくのですが、今度はスマホに集中してしまい、食事時間が長くなりがちで疲れます。
A. まず「なぜ立ち歩きがひどいのか?」を考えましょう。
何か理由があれば、叱る前にそれを取り除けばいいのです。まず、乳幼児期の子どもは1つの間隔にしか集中できないことを押さえておきましょう。
(例)
・食卓の周りに物が多くて食事に集中できない。
・座っている椅子やテーブルの高さが体に合っておらず、居心地が悪い。
・食事中にテレビがついている(大人のように「見ながら食べる」は無理、小学生以上なら可能になるがお勧めはしない)。
・スマホde注意を引く方法も解決には至らず、早くやめるべし。
Q3. 食べるのが遅くて食事時間が長くなりがち。イライラしてしまい、子どもの食事につき合うのが苦痛です。
A. まず「なぜ食べるのが遅いのか?」を考えましょう。
・食事に集中できない環境だから。
・発達の問題(咀しゃくや嚥下がうまくできない)。
理由がわかれば対策が取れます。その上で、
時計がわかる年齢であれば、
「何分までに食べられそう?」
「時計の長い張りが6の数字までにごちそうさましようか?」
などとコミュニケーションを取り、食べる時間を意識させてから、
「時間になったよ。まだ食べる?」
と聞きます。子どもがまだ食べたいのであれば、1回延長します。
「10分だけね。」
それ以上はなしで、食事を下げましょう。
食べ物で遊び始めた場合は、怒るのではなく「今日はおしまいね」と片付けましょう。
食べ物で遊ぶのは「触れて遊ぶ」大切な発達段階でもあるので、その行為自体は問題ありません。
食事時間は30分で十分です。
もし、毎回の食事に1時間以上かかっているのであれば、少しずつ時間を短くしていきます。
1週間ごとに5分ずつ短縮するイメージで、スモールステップを守りましょう。
Q4. 食べはじめるまでが大変。遊ぶのをやめずになかなか食べはじめようとしません。
A. 子どもに食べはじめる時間をあらかじめ決めてもらいましょう。
子どもにとっての遊びは、大人にとっての仕事のようなもの。
「すぐにやめてこっちに来て」と言われてもそういうわけにはいきません。
食事の時間のしばらく前に「何時からご飯にする?」と聞いておき、その時間になったら、
「〇〇君が言った、6時になったからご飯にしよう」
と呼びかけるのがお勧めです。
Q5. 子どもにサプリメントはOK?
A. 本当に栄養が足りていないのであれば使用可です。
(例)子ども向け総合栄養サプリメント「mog」
Q6. 苦手な食材が入っている料理はあらかじめ教えておいた方がよい?
A. 必ず先に伝えましょう。
もし知らずに食べた場合、苦手な食材が入っているとわかると、子どもはだまされた気分になり、警戒して他の料理も食べなくなるかもしれません。
苦手な食材が入っていることを認めて教え、その上で「味がしないように料理したから」とコミュニケーションを取りましょう。
Q7. 食の広がりがゆっくりすぎて発達の遅れが心配です。
A. 個人差があります。
周りの子より半年くらい遅れる子もいますし、少しずつステップアップしましょう。
程度がひどいときは「なぜ食べられないのか」理由を探しましょう。
(例)口に入れた感覚が気持ち悪い、好みの硬さではない、匂いが苦手、咀しゃくがうまくできない・・・
(例)スプーンやフォークを使いこなせない。
→ 子どもの機嫌のよいときに練習し、目の前で大人が実際に使う姿を見せましょう(二人羽織より効果的)。
(例)スプーンの持ち手の感触が嫌い。
→ 一緒にスプーンを買いに行って自分で選んでもらいましょう。
(例)自分で食べようとしない。
→ 食べ物と口の遠近感覚がわからず恐い、ことがあります。
Q8. 「ダイエットしたい」といって食べません。
A. その気持ちを受け止めた上で、健康的でキレイにやせていくためには、適切な栄養バランスが必要なことを説明しましょう。
「そんなこといってないで食べなさい!」では解決しません。