「叱りたくないのに叱ってしまう」
「昼間子どもを叱りまくり、夜子どもが寝たあとに毎晩自己嫌悪に陥る」
育児中のおかあさんのこんな声をよく耳にします。
なぜ叱る必要があるのか?
それは社会生活の上の禁止事項が多すぎるからではないでしょうか。
天真爛漫の子どもは、はしゃぎ回り、大声を出して遊ぶのがふつうです。
しかし、これができる場所は多くはありません。
近所に保育園ができることを嫌がる住人達。
バスにベビーカーを乗せると顰蹙を買う。
都会では公園も混んでいるし。
子どもの遊び場として作られた児童館では「大人1人につき子どもは2人まで」というルールを作っているところがあり、3人子どもがいるお母さんが入館を断られたと先日報道されました。
■ 児童館3人連れは駄目?熊田曜子さんブログが波紋
(毎日新聞:2018年11月6日)
子ども3人を連れ、東京都墨田区の児童館を訪れたところ、「大人1人につき子ども2人」というルールがあり、利用を断られたと明かしたタレント熊田曜子さん(36)のブログ記事が議論を呼んでいる。児童館の対応について「子どもの多い家族を排除するのか」との批判の一方、「安全を考えると、仕方がない」との擁護の声も出ている。
「3人育児」と題した4日付の記事によると、熊田さんは1人で5歳、3歳、4カ月の子どもを連れ、墨田区の児童館を訪れた。就学前の子どもが遊べる「すくすくルーム」に入ろうとし、スタッフに止められた。
区によると、この児童館は10月にオープン。すくすくルームは約70平方メートルの室内に、ボールプールやジャングルジムを備える。通常、児童館は保護者1人当たりの子どもの人数を制限していないが、この施設は遊具があり、目が行き届く範囲を考慮し、2人までとしたという。
ブログによると、熊田さんは4カ月の子をだっこすると申し出たが、入室は認められなかった。熊田さんは「まさか、そんな決まりがあったなんて」「事前に確認するべきですね」とつづった。
「あまりにしゃくし定規」。ブログを読んだ、2人の子どもを育てる東京都の女性(36)は首をひねり「児童館が使えないのはつらい」と嘆く。
一方、墨田区の担当者は「子どもの多い家族を排除するつもりは全くないが、安全のためのルール」と説明。1歳児を育てる別の女性(36)は「うちはまだよちよち歩きで、走り回る大きな子たちとぶつからないか心配。2人までというのは一理ある」と理解を示す。
区によると、3人以上の子どもを連れた保護者が訪れた場合、1人を連れた保護者と一緒に利用することも呼び掛けているという。担当者は「熊田さんには、適切な案内ができなかった。ホームページの記載も分かりにくく、改善したい」と語る。
子育てに詳しい「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは「児童館は、地域の子育て支援の重要拠点。大勢のきょうだいがいても、工夫して受け入れを進めてほしい」と訴えた。
そんな中で、以下の記事が目にとまりました。
スイスで子育てをすることになったお母さんの手記で、日本にいるときはイライラして子どもを叱ることが多かったのに、スイスに行ったらいつの間にか叱ることがなくなっていた、という内容です。
読んでみると、その理由は「社会が子どもに寛容かどうか」によるんだなあ、と感じました。
日本のお母さんが悪いのではありません、社会が悪いのです。
子どもに冷たい社会は、おそらく大人にも冷たくて、生きづらい社会なんだと思います。
「叱る」文化は「力でねじ伏せる」「恐怖支配」につながりやすい。
昨今、スポーツ界では「パワハラ」のオンパレードです。
大相撲では、暴力を振るった日馬富士が廃業したものの大々的に引退相撲を開催し、被害者側の貴乃花は廃業に追い込まれました・・・これって相撲界が「暴力」を容認したことになりますね。
おそらく将来、モンゴル勢が親方衆になると、暴力容認のプロレス並みのショーになってしまい、「神様に奉納する神事」という要素は消え去ると思われます。
日本はどうしてこんな風になってしまったのでしょう。
■ イライラ育児、日本を出たら消えた
(2018.11.2:日本経済新聞)
仕事と子育ての両立の中で、子どもが言うことを聞かなかったり、さっさと動いてくれない時、イライラしてつい怒鳴ったりたたいたりしてしまうという人がいるかもしれない。イライラは子どもとの関係だけでなく、仕事にも影響を及ぼすこともある。今回は海外に転居した日本人母が感じた子育て環境の違いを通して、「怒鳴る・たたく」育児の背景にあるものを考える。
◇ スイスに暮らし始めて「怒鳴る・たたく」が消えた
ラジオパーソナリティーの杉野朋子さんは、かつて東京に在住していた二児のママ。筆者は、2018年1月に、かつしかFM「早く教えてっ!ママレーザー」という生放送に出演させていただいた。テーマは「ママのイライラ対策!」。感情的にならずに子育てするにはというポイントをお伝えした。それまで杉野さんは、イライラして怒鳴ったり、お子さんをたたいたこともあると言っていた。
その約半年後、パートナーのお仕事の関係でスイスのジュネーブへ。暮らし始めて1カ月がたった頃、杉野さんから「そういえば、私はスイスに来てから子どもを怒鳴ったり、たたいたりしていない」というメッセージが届いた。
怒鳴ってたたいたのは、スイスへ移動中の機内での「静かにしなさい!」が最後だったという。そこで杉野さんに心境の変化について取材してみた。
どうして、怒鳴ったり、たたいたりしなくなったのか。考えてみると以下の3つの理由が挙げられるとのこと。
(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない
(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している
(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる
杉野さんは以前から、海外での子育てにとても興味があった。また、米国での駐在経験のあるママ友から(海外では)「怒鳴ったり、たたいたりしたら、親が通報されることもあるから気を付けて」と言われていたこともあり、周りの様子をよく観察していたという。
以下、順番に説明してもらった。
(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない
公園に遊びに行った初日に「もう! 帰るよ!」と、何度言っても聞く耳を持たないわが子に遠くから叫ぼうとした時、「あ! 大声はダメだったんだ」と思って、周りを観察したという。現地の人は遊んでいる子どものそばへ行き、顔を見て「帰るよー」と伝えていて、大声を出すことは恥ずかしいという雰囲気だったとのこと。
(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している
親や大人が、圧力や暴力で子どもに意見を押し付けようという風土がないということ。「自由、平等、友愛(博愛)」のフランス文化の影響をスイスのジュネーブは受けていると感じたという。
そもそも親子でも、大人は子どもの意見を尊重し、「あなたはどう?」と子どもに問いかけている様子もよく見られる。子どもの靴や服を買う場面でも、子どもに「どうする? それね! OK」という感じ。
(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる
公共の場で赤ちゃんや子どもが泣いたりすれば、日本と同じように親は必死にあやす。でも、その様子を見て「うるさいな!」と言ったり舌打ちしたりする人は見たことがないという。
子連れで路面電車(バスのような感覚で使える)に乗っていると、大人はもちろん、中学生ぐらいの少年少女も当たり前のように席を譲ってくれる。ドアを開けてくれて「お先にどうぞ」はどこでもされ、本当に驚くばかりだそう。杉野さん親子のように外国人でも、子どもに「Bonjour!」と話し掛けてくれたり、頭をなでてくれるなどかわいがられるそうだ。
◇ スイスの日常も忙しいけれど、イライラしない
学校への子どもの送り迎えは親かシッターが行う。昼食時には迎えに行って自宅でランチを一緒に食べるスタイル(学校に入っている民間のシッターに依頼し、学校に残って昼食を食べる子もいる)。
日本なら、学校への送り迎えだけでも大変だ。さらに、昼に一度迎えに行って昼食を共にし、また学校に送りに行くというのは大きな負担。それでまた、イライラが増えないのだろうか。
時間的には忙しくてもイライラしなくなった理由を2つ挙げてくれた。
(1)「学校や習い事の課題が驚くほど少ないので、負担にならない。
宿題はプリント1~2枚を1週間後に提出するだけ」とのこと。ただ、宿題忘れには非常に厳しいという。「『宿題の期限を守れなかった場合はペナルティーがあります』というプリントに親がサインをして提出します。これは同意したという契約になるので、日本の宿題忘れよりは厳しいですね」
(2)周りと比べない
現地の学校は外国人が4割。駐在で来ている人や、スイス人と結婚した外国人も多く、人種も文化もさまざま。スイス以外で生まれた子も多く、学習の進度も違うので、そもそも比べられることがないそうだ。そのため、わが子のそのままを見るようになり、「うちの子、遅れてる!」というプレッシャーがなくなったという。
◇ ◇ ◇
国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは「子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して」という調査報告書を17年に発表した。その中で、日本国内2万人のしつけにおける体罰等に関する意識・実態調査結果を見ると、しつけのために何らかの場面で子どもに対し「たたくこと」をすべきであると回答した割合は6割となっている。
筆者は認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの理事をしている。子ども虐待の理由で最も多い2つが「泣きやまないから」と「しつけのため」。そのために怒鳴ったりたたいたりし、それがエスカレートすれば、子どもの心や体を傷つけてしまう可能性がある。「頻繁ではないから時には怒鳴ったりたたいたりすることも必要」と思っている方が少なくないが、怒鳴る・たたくことは恐怖や不安によって子どもの行動をコントロールすること。コミュニケーションによって子どもの気持ちに向き合い、自立をサポートしていくことが大切だ。
厚生労働省は17年から「愛の鞭ゼロ作戦」というキャンペーンをスタートした。リーフレットを作成し、たたかない・怒鳴らない、体罰によらない子育てを呼び掛けている。筆者も研究班の一員として、このキャンペーンのお手伝いをしている。18年10月には「愛の鞭ゼロ作戦」特設ページがオープンしている。
親自身が「怒鳴らない・たたかないで子育てする」という意識ももちろんだが、杉野さんのスイスからの報告にもあるように、周囲からの温かいまなざしといった子育ての環境も重要だ。
「昼間子どもを叱りまくり、夜子どもが寝たあとに毎晩自己嫌悪に陥る」
育児中のおかあさんのこんな声をよく耳にします。
なぜ叱る必要があるのか?
それは社会生活の上の禁止事項が多すぎるからではないでしょうか。
天真爛漫の子どもは、はしゃぎ回り、大声を出して遊ぶのがふつうです。
しかし、これができる場所は多くはありません。
近所に保育園ができることを嫌がる住人達。
バスにベビーカーを乗せると顰蹙を買う。
都会では公園も混んでいるし。
子どもの遊び場として作られた児童館では「大人1人につき子どもは2人まで」というルールを作っているところがあり、3人子どもがいるお母さんが入館を断られたと先日報道されました。
■ 児童館3人連れは駄目?熊田曜子さんブログが波紋
(毎日新聞:2018年11月6日)
子ども3人を連れ、東京都墨田区の児童館を訪れたところ、「大人1人につき子ども2人」というルールがあり、利用を断られたと明かしたタレント熊田曜子さん(36)のブログ記事が議論を呼んでいる。児童館の対応について「子どもの多い家族を排除するのか」との批判の一方、「安全を考えると、仕方がない」との擁護の声も出ている。
「3人育児」と題した4日付の記事によると、熊田さんは1人で5歳、3歳、4カ月の子どもを連れ、墨田区の児童館を訪れた。就学前の子どもが遊べる「すくすくルーム」に入ろうとし、スタッフに止められた。
区によると、この児童館は10月にオープン。すくすくルームは約70平方メートルの室内に、ボールプールやジャングルジムを備える。通常、児童館は保護者1人当たりの子どもの人数を制限していないが、この施設は遊具があり、目が行き届く範囲を考慮し、2人までとしたという。
ブログによると、熊田さんは4カ月の子をだっこすると申し出たが、入室は認められなかった。熊田さんは「まさか、そんな決まりがあったなんて」「事前に確認するべきですね」とつづった。
「あまりにしゃくし定規」。ブログを読んだ、2人の子どもを育てる東京都の女性(36)は首をひねり「児童館が使えないのはつらい」と嘆く。
一方、墨田区の担当者は「子どもの多い家族を排除するつもりは全くないが、安全のためのルール」と説明。1歳児を育てる別の女性(36)は「うちはまだよちよち歩きで、走り回る大きな子たちとぶつからないか心配。2人までというのは一理ある」と理解を示す。
区によると、3人以上の子どもを連れた保護者が訪れた場合、1人を連れた保護者と一緒に利用することも呼び掛けているという。担当者は「熊田さんには、適切な案内ができなかった。ホームページの記載も分かりにくく、改善したい」と語る。
子育てに詳しい「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは「児童館は、地域の子育て支援の重要拠点。大勢のきょうだいがいても、工夫して受け入れを進めてほしい」と訴えた。
そんな中で、以下の記事が目にとまりました。
スイスで子育てをすることになったお母さんの手記で、日本にいるときはイライラして子どもを叱ることが多かったのに、スイスに行ったらいつの間にか叱ることがなくなっていた、という内容です。
読んでみると、その理由は「社会が子どもに寛容かどうか」によるんだなあ、と感じました。
日本のお母さんが悪いのではありません、社会が悪いのです。
子どもに冷たい社会は、おそらく大人にも冷たくて、生きづらい社会なんだと思います。
「叱る」文化は「力でねじ伏せる」「恐怖支配」につながりやすい。
昨今、スポーツ界では「パワハラ」のオンパレードです。
大相撲では、暴力を振るった日馬富士が廃業したものの大々的に引退相撲を開催し、被害者側の貴乃花は廃業に追い込まれました・・・これって相撲界が「暴力」を容認したことになりますね。
おそらく将来、モンゴル勢が親方衆になると、暴力容認のプロレス並みのショーになってしまい、「神様に奉納する神事」という要素は消え去ると思われます。
日本はどうしてこんな風になってしまったのでしょう。
■ イライラ育児、日本を出たら消えた
(2018.11.2:日本経済新聞)
仕事と子育ての両立の中で、子どもが言うことを聞かなかったり、さっさと動いてくれない時、イライラしてつい怒鳴ったりたたいたりしてしまうという人がいるかもしれない。イライラは子どもとの関係だけでなく、仕事にも影響を及ぼすこともある。今回は海外に転居した日本人母が感じた子育て環境の違いを通して、「怒鳴る・たたく」育児の背景にあるものを考える。
◇ スイスに暮らし始めて「怒鳴る・たたく」が消えた
ラジオパーソナリティーの杉野朋子さんは、かつて東京に在住していた二児のママ。筆者は、2018年1月に、かつしかFM「早く教えてっ!ママレーザー」という生放送に出演させていただいた。テーマは「ママのイライラ対策!」。感情的にならずに子育てするにはというポイントをお伝えした。それまで杉野さんは、イライラして怒鳴ったり、お子さんをたたいたこともあると言っていた。
その約半年後、パートナーのお仕事の関係でスイスのジュネーブへ。暮らし始めて1カ月がたった頃、杉野さんから「そういえば、私はスイスに来てから子どもを怒鳴ったり、たたいたりしていない」というメッセージが届いた。
怒鳴ってたたいたのは、スイスへ移動中の機内での「静かにしなさい!」が最後だったという。そこで杉野さんに心境の変化について取材してみた。
どうして、怒鳴ったり、たたいたりしなくなったのか。考えてみると以下の3つの理由が挙げられるとのこと。
(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない
(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している
(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる
杉野さんは以前から、海外での子育てにとても興味があった。また、米国での駐在経験のあるママ友から(海外では)「怒鳴ったり、たたいたりしたら、親が通報されることもあるから気を付けて」と言われていたこともあり、周りの様子をよく観察していたという。
以下、順番に説明してもらった。
(1)周りのママやパパが子どもに怒鳴ったり、たたいたりしていない
公園に遊びに行った初日に「もう! 帰るよ!」と、何度言っても聞く耳を持たないわが子に遠くから叫ぼうとした時、「あ! 大声はダメだったんだ」と思って、周りを観察したという。現地の人は遊んでいる子どものそばへ行き、顔を見て「帰るよー」と伝えていて、大声を出すことは恥ずかしいという雰囲気だったとのこと。
(2)学校の先生も子どもに対して感情的に怒鳴ったりせず、論理的に説明している
親や大人が、圧力や暴力で子どもに意見を押し付けようという風土がないということ。「自由、平等、友愛(博愛)」のフランス文化の影響をスイスのジュネーブは受けていると感じたという。
そもそも親子でも、大人は子どもの意見を尊重し、「あなたはどう?」と子どもに問いかけている様子もよく見られる。子どもの靴や服を買う場面でも、子どもに「どうする? それね! OK」という感じ。
(3)子ども優先の社会で、子連れだと親切にされる
公共の場で赤ちゃんや子どもが泣いたりすれば、日本と同じように親は必死にあやす。でも、その様子を見て「うるさいな!」と言ったり舌打ちしたりする人は見たことがないという。
子連れで路面電車(バスのような感覚で使える)に乗っていると、大人はもちろん、中学生ぐらいの少年少女も当たり前のように席を譲ってくれる。ドアを開けてくれて「お先にどうぞ」はどこでもされ、本当に驚くばかりだそう。杉野さん親子のように外国人でも、子どもに「Bonjour!」と話し掛けてくれたり、頭をなでてくれるなどかわいがられるそうだ。
◇ スイスの日常も忙しいけれど、イライラしない
学校への子どもの送り迎えは親かシッターが行う。昼食時には迎えに行って自宅でランチを一緒に食べるスタイル(学校に入っている民間のシッターに依頼し、学校に残って昼食を食べる子もいる)。
日本なら、学校への送り迎えだけでも大変だ。さらに、昼に一度迎えに行って昼食を共にし、また学校に送りに行くというのは大きな負担。それでまた、イライラが増えないのだろうか。
時間的には忙しくてもイライラしなくなった理由を2つ挙げてくれた。
(1)「学校や習い事の課題が驚くほど少ないので、負担にならない。
宿題はプリント1~2枚を1週間後に提出するだけ」とのこと。ただ、宿題忘れには非常に厳しいという。「『宿題の期限を守れなかった場合はペナルティーがあります』というプリントに親がサインをして提出します。これは同意したという契約になるので、日本の宿題忘れよりは厳しいですね」
(2)周りと比べない
現地の学校は外国人が4割。駐在で来ている人や、スイス人と結婚した外国人も多く、人種も文化もさまざま。スイス以外で生まれた子も多く、学習の進度も違うので、そもそも比べられることがないそうだ。そのため、わが子のそのままを見るようになり、「うちの子、遅れてる!」というプレッシャーがなくなったという。
◇ ◇ ◇
国際NGOセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは「子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して」という調査報告書を17年に発表した。その中で、日本国内2万人のしつけにおける体罰等に関する意識・実態調査結果を見ると、しつけのために何らかの場面で子どもに対し「たたくこと」をすべきであると回答した割合は6割となっている。
筆者は認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの理事をしている。子ども虐待の理由で最も多い2つが「泣きやまないから」と「しつけのため」。そのために怒鳴ったりたたいたりし、それがエスカレートすれば、子どもの心や体を傷つけてしまう可能性がある。「頻繁ではないから時には怒鳴ったりたたいたりすることも必要」と思っている方が少なくないが、怒鳴る・たたくことは恐怖や不安によって子どもの行動をコントロールすること。コミュニケーションによって子どもの気持ちに向き合い、自立をサポートしていくことが大切だ。
厚生労働省は17年から「愛の鞭ゼロ作戦」というキャンペーンをスタートした。リーフレットを作成し、たたかない・怒鳴らない、体罰によらない子育てを呼び掛けている。筆者も研究班の一員として、このキャンペーンのお手伝いをしている。18年10月には「愛の鞭ゼロ作戦」特設ページがオープンしている。
親自身が「怒鳴らない・たたかないで子育てする」という意識ももちろんだが、杉野さんのスイスからの報告にもあるように、周囲からの温かいまなざしといった子育ての環境も重要だ。