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ツリオヤジのキドニーケアな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

白鯨 (上)(中)(下) - メルヴィル 訳:八木敏雄 (岩波文庫)

2023-02-15 05:29:19 | 読書メモ

ハーマン・メルヴィルの白鯨を読み終えました。
いやぁ、時間が掛かった。カラマーゾフの兄弟を読むのより時間が掛かったと思います。

子どもの頃に児童向け本で白鯨を読んだ覚えがあるのですが、こんな話だったっけ?もしかしたら読んだのはピーターパンで、エイハブ船長とフック船長を混同してた可能性がありますが^^;

それはさておき、この本にはクジラにまつわる様々な話が登場します。小説だけでなく、博物誌のような話も多く、これ一冊読むと捕鯨だけでなくクジラの生態や利用価値についてかなり詳しくなるでしょう。話がけっこう飛ぶのと、表現がかなりアメリカ的(まわりくどくて私は好みではない)ために、集中力が続かず一気に読めないのが、時間が掛かった理由だと思います。

上巻の内容紹介では「ごった煮」と表現していますが、まさにそんな感じ。
小説あり、戯曲あり、博物的記述あり、さらに政治的メッセージもあり。

白鯨はいくつもの文庫本が出ていますが、新しいほうが読みやすいだろうと、岩波文庫を選びました。
翻訳は丁寧でわかりやすかったです。

衒学的なまでに鯨知識が展開されるのは、まさにその通り。

下巻には、解説が載っていて、最後にこれを読むとなるほどとうなずくところが多かったです。
メルヴィルの年表や、捕鯨船の構造図も参考になりました。

最後の3章(133~135章)がクライマックスです。
長い長いクジラとの旅がやっと終わった、とほっとしました^^;

さて、この小説のモデルとなったのは、エセックス号です。ナンタケット島の捕鯨船エセックス号はマッコウクジラに襲われ沈没、乗組員20名は捕鯨ボートの上で漂流し、生存のためのカニバリズムを実行し、けっきょく生存者は一人だけになったという事件です。
この事件は、「白鯨との戦い」と映画化されています。

作者、ハーマン・メルヴィルは22歳の頃から捕鯨船での業務経験もあり、小説の描写は緻密かつリアルです。

ナンタケット島はマサチューセッツ州にある捕鯨基地ですが、この名前で想起するのが次の曲。

マウンテンのナンタケット・スレイライド。
副題に、For Owen Coffin とあるように、こちらもエセックス号の事件をベースにしてあります。
Owen Coffin は、エセックス号に乗っていた10代の若者で、くじ引きで死が当たったのを潔く実行した人です。

この曲名からは、スレイライド(そり)という単語から、クジラに銛を打ち込んで引っ張られ翻弄される捕鯨ボートの様子を想像したのですが、歌詞を読んでみるとクジラとのバトルシーンはなく、「3年間クジラを探したけど結局見つけられずに帰ってきたよ」というような寂莫たる内容でした。
また、歌詞の中で、Starback's sharpening his harpoon. (スターバックスが彼の銛を研いでいる)というのがありますが、スターバックスはメルヴェルの白鯨に登場する一等航海士で、エセックス号の乗組員にはいないようです。ということは、マウンテンもメルヴィルの白鯨にインスパイアされている部分もあるのかもしれません。

この他にも、時代を先取りしたLGBTに関連しそうな記述や、黒人差別への問題提起など、クジラとは離れても当時の文化がところどころに伺えます。ちなみに当時の日本は鎖国中だということが小説中でも記載されています。

読むのに時間は掛かったけど、一冊(3巻)の本からいろいろな知識を得ることができたと思います。

オリジナルはUS版、イギリス版ともに1851年の刊行です。
日本は江戸時代、ペリーが黒船でやってきたのが1853年でした。

岩波文庫版は2004年8月に上巻、10月に中巻、12月に下巻の発行です。

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p.s. ランチの精度が低い。


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