
倉橋由美子の後期作品、アマノン国往還記を読みました。
モノカミ国からアマノン国へと渡った宣教師Pの物語。
架空の世界を舞台に繰り広げられる冒険譚は、『スミヤキストQの冒険』に似た構成です。
主人公をPとしたのも、Qとの類似性あるいは連続性を意識したものかもしれません。
女性の目からみた女性化社会が描かれていますが、これも「読者が、現実社会との対応を解釈しようとすること」は倉橋文学の楽しみ方からはハズレていると思います。イマジネーションを膨らませ、Pのいる世界を楽しみながら読み進めるのがよいかと思います。
近未来を予測したシーンもしばしば登場します。なかでも自動運転タクシーは、今まさに実用化されているWaymoにそっくりです。
こんな感じで20の章と、プロローグ、エピローグからなります。
付録にアマノン語辞典がついてますが、これは洒落っ気たっぷり。
エピローグが意味深で、けっきょくこの物語はなんだったのだろう?ということで、様々な解釈ができます。P=インリ博士なのかとも思いましたが、そうでない気もする。モノカミとアマノンは、精子と卵子がモチーフになっていて、エピローグはメタなストーリーにも思える。
作者が「ご自由に解釈ください」と言っているようなエピローグです。
1986年の書下ろしで、1987年には泉鏡花文学賞を受賞。文庫化は1989年。
泉鏡花文学賞は、「ロマンの薫り高い作品」が選考理由のようです。
『パルタイ』、『スミヤキストQの冒険』と本作を読んで、倉橋ワールドを十分に堪能できました。長編はこれくらいにして、次は短篇を読んでみようかなと思います。
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