女は二人でも姦しい
あ~♪~らぁ、デンマンさん。。。
あたくしのことを
うわさしていたのでござ~♪~ますか?
おほほほほ。。。
やだなあああぁ~。。。ついに卑弥子さんが出て来てしまいましたよう。も~♪~ これでは、収拾が付かなくなるので、今日はひとまず僕は退散しますよゥ。んもお~~
【レンゲの独り言】
デンマンさんは、ずるいですわよ。
卑弥子さんが現れると、形勢が悪くなると思って逃げ出してしまったのですわ。
でも、あたしは諦めませんわ。
このお話の続きはデンマンさんが居なくても
卑弥子さんと続けるつもりですわ。
では、また。。。
『愛の形と性の形 (2008年2月13日)』より
卑弥子さん。。。デンマンさんが逃げてしまいましたわよう。
いいじゃありませんかア~。。。たまにはレンゲさんと、こうして二人きりでお話しましょうよう。レンゲさんだって、そのつもりでおとといの独り言の中で言ってたじゃござ~♪~ませんか?
でも、あたし。。。なんだか、後でデンマンさんに叱られそうですわぁ~。
いいですわよゥ、あたくしが一人で責任を負いますから。。。、レンゲさんには、ご迷惑をおかけしませんわ。たまにはデンマンさん抜きで言いたい事を一杯しゃべってしまいましょうよう。
でも、本当にいいのかしら。。。?
いいのでござ~♪~ますわよゥ。デンマンさんが逃げてしまったのですから、後はあたくしたちの自由ですわよう。。。デンマンさんが逃げたのがいけないのでござ~♪~ますわア。
そうですわねぇ。。。あたしも、たまには卑弥子さんとデンマンさん抜きでお話しがしたいと思っていたのですわ。
あたくしもそうなのでござ~♪~ますわよゥ。デンマンさんが居ると言い難い事ってあるでござ~♪~ますでしょう?鬼の居ない間の洗濯でござ~♪~ますわよ。デンマンさんが居ないので何でも気兼ねなくしゃべれますわ。おほほほほ。。。
そうですわよね。。。うふふふふ。。。
意見が一致しましたわア。では、心置きなくしゃべってしまいましょうねぇ~。うしししし。。。
あたし、卑弥子さんにぜひお聞きしたい事があったのですわ。
何でござ~♪~ましょうか?
デンマンさんともお話したのですけれど、次の事ですわ。
かち人の
渡れど濡れぬ
えにしあれば
【現代語訳】
渡っても濡れもしない
浅い江のようなご縁でしたわね。
この句のどこにレンゲさんは、それ程の感銘を受けるのですか?
“渡れど濡れぬ”ですわぁ~。。。
ほおゥ。。。ここのどこに。。。?
デンマンさん。。。そのような事、あたしが説明しなくても、お分かりになるでしょう?
いや。。。なんと言うかぁ。。。はっきりと分からないからレンゲさんに尋ねているのですよ。
だから。。。、だから、斎宮は、もっと濡れたかったのですわぁ。。。でも。。。、でも、濡れたい、濡れたいと思っているのに、思うように濡れない。。。ああぁ~。。。切ない女の胸の内が手に取るように分かりますわあぁ~~
なんだか。。。実感がこもっていますねぇ~?
デンマンさんにも、このような切ない女の気持ちがお分かりになりますかぁ~?
うん、うん、。。。なんとなく分かりますよ。。。でも。。。でも。。。
でも、なんですのォ~。。。?はっきりとおっしゃってくださいなぁ。
レンゲさんは、あのォ~。。。ちょっとばかりねぇ、あなたは濡れる事にこだわっているのではないですか?
だって。。。、だって、斎宮は“渡れど濡れぬ”と、はっきりと書いていますわ。
そうですよ。確かにそのように書いてありますよ。でもねぇ~、斎宮は“浅い江のようなご縁”を強調するために“渡れど濡れぬ”と書いたと思いますよ。つまり、瀬を渡った。でも、思ったより浅くて服が濡れなかったと。。。つまり、浅瀬だった。それで浅い縁と結びつけた。
でも。。。、でも、それでは片手落ちだと思いますわぁ。
そうですかねぇ~?
だって、そうでしょう?デンマンさんは“浅い縁”を強調するためだとおっしゃいますが、あたしはそうではないと思います。
どういうことですか?
斎宮は身も心も、もっと濡れたかったのですわ。もっともっと濡れて業平さんと深い絆を感じたかった。その強い思いがあるからこそ、愛し合った夜のことを“渡れど濡れぬ”と書いたのですわ。つまり、“あなたとお逢いしたけれども、身も心も充分に濡れたわけではありませんでしたわ”。。。このように言いたかったのですわ。
つまり。。。つまり。。。レンゲさんは、この“濡れる”を肉体的な意味で文字通りに“濡れる”と。。。?
そうですわぁ~。そのように解釈して初めて斎宮の切ない女の胸の内が伝わってくるのですわぁ~。。。つまり、斎宮は業平さんに抱かれてもっと濡れたかったのですわ。業平さんに抱かれて女の悦びを感じることができたというのに、まだ斎宮の心は満ち足りてはいなかった。長居はできないので斎宮は帰らねばならなかった。でも、本当はもっと濡れて深い官能の歓びに浸りたいと思っていた。その満ち足りない思いを業平さんに伝え、もう一度逢って思いを遂げたい、と上の句(かみのく)に願いを託したのですわぁ~。
ほおォ~。。。なるほど。。。そのようにも解釈する事が出来ますよね。
あたしは、そのようにしか解釈できないと思いますわ。業平さんは女の気持ちが分かっていたのですわ。
分かっていたのですか?
そうですわ。斎宮の歌の中に込められた切ない女心を理解していたのですわ。だから、下の句(しものく)で “いつかあなたの思いをかなえてあげますよ” と書いているのですわ。
しかし。。。
しかし、何ですの?
当時、斎宮は16才か17才ですよ。いろいろな書物に当たってみても、まだ20才にはなっていなかった。つまり、まだ初々しい乙女だった。恋愛経験が豊富だというわけではない。そういう女性が、レンゲさんの言うように深い官能の歓びを知っているとは思えない。
でも、業平さんは女性経験豊かな男性ですわ。斎宮のお兄さんと19才年が離れていると言う事は、斎宮とは20歳以上の年の開きがある。充分に女性の扱いを心得ている。しかも、お兄さんから業平さんの事は何度も聞かされている。上のエピソードを読んでも、斎宮が業平さんに対して好意を持っている事が実に良く分かりますわ。だから、心のこもったおもてなしをしたのですわ。ただ単に親元から言われただけではなしに、斎宮(いつきのみや)自身が業平さんに心を惹かれていたことが歌のやり取りを通しても実に良く分かりますわ。
つまり、女の扱いに慣れている在原業平に抱かれて、斎宮は女性として花開いたと言うのですか?
そうですわぁ~。
『ロマンとエッチ (2008年1月20日)』より
デンマンさんは繊細な女心が良く分かっていないのだと思うのですわ。あたしは斎宮時代の卑弥子さんが業平(なりひら)さんに寄せる思いを充分に分かっているつもりですゥ。それで上のように解釈したのですけれど、卑弥子さんは、実際にはどうでしたの?
もちろん、レンゲさんの解釈の方が正しいのでござ~♪~ますわ。デンマンさんも、それとなく分かっていたのでござ~♪~ますわよ。それで、あたくしが出てきたので、これではレンゲさんに負けてしまうと思って逃げてしまったのですわよ。ずるいのでござ~♪~ますわ。
卑弥子さんも、そう思いますか?
それに決まってますわよ。
そうですわよねぇ~。。。女ならば、誰だって卑弥子さんのような状況に置かれたならば、身も心も充分に濡れたいものだと思いますわよねぇ。うふふふ。。。
そうでござ~♪~ますわ。あたくしとレンゲさんには共通するところがあるのでござ~♪~ますわよ。
共通するものですか?そっれて…なんでしょうか?