神の手は力ある働きをする。

 主の右の手は高く上げられ、
 主の右の手は力ある働きをする。

(詩篇118編16節より)

屋根の上のバイオリン弾き-【1】-

2015年07月02日 | 映画


 ブログをはじめた時には、聖書やキリスト教についてわかりやすく……と思っていたのですが、福音書にそって話を進めるうちに、「やっぱりどんどんわかりにくい方向にww」と思うようになってきたので、少し別のことも間に挟めていくことにしようかなと思いました(^^;)

 ただ、このブログ内で取り上げる映画や小説は、キリスト教に関係あるもののみを基本的に取り扱っていくことにしようと思っています。

 そんなわけで、今回は『屋根の上のバイオリン弾き』を取り上げてみることにしました♪(^^)

 まず今回の【1】では、お話の概要と大体の印象について書いたのち、次回の【2】のほうで「ユダヤ人、ユダヤ民族は何故迫害されるのか?」といったことについて、(わたしのわかる範囲内で)お話できたらと思っていますm(_ _)m


<屋根の上のバイオリン弾き・あらすじ>

 >>テヴィエはウクライナ地方の小さな村『アナテフカ』(Anatevka)で牛乳屋を営むユダヤ人一家である。亭主関白を気取ってはいるがその実、妻には頭が上がらない。5人の娘に囲まれ、ユダヤ教の戒律を厳格に守ってつましくも幸せな毎日を送っていた。
 テヴィエは娘たちの幸せを願いそれぞれに裕福な結婚相手を見つけようと骨を折っている。ある日、長女のツァイテルにテヴィエと険悪な肉屋のラザールとの結婚話が舞い込むが、彼女にはすでに仕立屋のモーテルという恋人がいたのだった(仕立屋は7人で一人前ということわざがあり、男性として頼りないイメージがある)。テヴィエは猛反対するが、二人は紆余曲折を経て結婚する。また、次女ホーデルは革命を夢見る学生闘士パーチックと恋仲になり、逮捕されたパーチックを追ってシベリアへ発ち、さらに三女は、ロシア青年とロシア正教会で結婚して駆け落ちしてしまう。
 劇中で次第にエスカレートしていく『ポグロム』と呼ばれるユダヤ人排斥は、終盤で村全体の追放に至り、テヴィエたちは着の身着のまま住み慣れた村から追放されるまでになる。
 原作ではイスラエルの地へ帰還するが、ミュージカルではニューヨークに向かうところで話が終わる。
『屋根の上のバイオリン弾き』という題名は、昔ローマ皇帝ネロによるユダヤ人の大虐殺があった時、逃げまどう群衆の中で、ひとり屋根の上でバイオリンを弾く男がいたという故事を描いたシャガールの絵にヒントを得たもの。ユダヤ人の不屈の魂の象徴。


 映画の感想について、まず一言で言うとしたら、>>これが人生でなかったら、一体何が人生か!!ということだと思います

 冒頭でまず、「♪トラディショナ~ル」という歌が流れていたと思うのですが、ユダヤ民族にとって伝統こそ一番大事!!というのは、よく知られているというか、映画を見ていてもよくわかることですよね。

 ところが、長女のツァイテルちゃんは、金持ち肉屋のジジイとなど結婚したくないと言い、「娘の結婚を決めるのは伝統的に家長の父親だ!」といったようテビエ父さんは最初思うのですが……「わたし、一生不幸になるわ、うわぁぁぁん!!」という娘の懇願と、恋人モーテルの結婚申し込みにより、最後は折れるということになるのでした。

(娘のあの目……あの男を好いとる……)というわけですね(^^;)

 そして結婚式当日――署長率いる配下の者にツァイテルちゃんとモーテルの(途中まで)伝統にのっとった式は、台無しにされてしまいます。このロシア人の署長さんとテビエ父さんは本来とても仲良かったのですが、これはこの署長さんにとっても苦しい決断だったことがよくわかります。

 というのも、この署長さんよりも上に立つ軍隊の方が、「おまえに出来なければこちらの手のものを寄こす」と言っており、もしそんなことになれば、署長さん自ら手を下すよりも、もっとずっとひどいことをされるとわかっていたからです。

 せっかくの祝宴が悲しい雰囲気で終わってしまいますが、ツァイテルちゃんは自分が好きな相手と結婚できて、その後も幸せに暮らしてゆくのでした

 そして次が次女のホーデルちゃん。知性と教養はあってもこちらもまたど貧乏な男、パーチックのことが彼女は好きだといいます。しかも彼は、当時としては相当<進んだ考え方>の持ち主で、お父さんが許してくれなくても結婚する的なことを言うのでした。

「♪トラディショナ~ル、トラディショナ~ル」おいおい、伝統はどこへいった……という話ですが、ここでもテビエ父さんは譲歩して、娘たちの婚約を祝福します。

(娘のあの目……あの男を好いとる……)というわけですね(笑)

 でもこのパーチックさん、ある意味頭が良すぎたというか。サンクトペテルブルグ(でしたよね?)で、民衆に蜂起を呼びかけるようなことをしてあえなく逮捕。シベリア送りとなってしまうのでした。

 そして彼のあとを追ってホーデルちゃんもまた、遠くシベリアの地へと旅立っていくことになるのです

 それから今度は三女のハーバルちゃん。彼女はあろうことか、宗教の異なるロシア青年と結婚したいと言いだします。

 いえ、見ている側としては、「テビエ父さん、結局また折れることになるんだろうなあ☆」と思いきや――「♪トラディショナ~ル、トラディショナ~ル」……テビエ父さん、今度ばかりは譲りませんでした。いいえ、譲れなかったのです。伝統あるユダヤ民族である我らの娘が、異教徒と結婚するなど、そこまで折れるということはテビエ父さんには決して許すことが出来ませんでした。

「えっ!?なんで三女だけ駄目なの?」という感じもしますが、それこそがまさにユダヤ民族の<伝統>ということですよね。

『屋根の上のバイオリン弾き』以外の映画や海外ドラマなどでも、これと似たようなことは描かれていることがあると思います。

 たとえば、ユダヤ人の男性がクリスチャン家庭で育った白人女性と恋仲になるものの――結婚する際には結局、ユダヤ人女性を選ぶといったようなことですけど、長女のツァイテルちゃんと次女のホーデルちゃんは相手が同じユダヤ人だったから、テビエ父さんにも許すことが出来た。でも、三女のハーバルちゃんはそうではない、ロシア正教を信じるロシア人の青年と結婚したいと言うのです。

 ――ここまで映画を見てきて、テビエ父さんが相当<いい人>であることが見ている側には了解されるのですが、三女のハーバルちゃんの結婚のことだけは許さなかった……そしてこれまで色々なことを我慢して我慢して、さらに自分が家長であるにも関わらず色々なことを譲ってきてもいますよね。

 第一に、テビエ父さんは明らかに恐妻家っぽいのですが(笑)、この奥さんの苦労といったものも相当だな……ということが映画を見ていてよくわかります。何分、貧乏な牛乳屋ですし、五人娘がいるかわり、男の子がひとりもいないということで、テビエ父さんは農作業といったこともほとんどひとりでこなしています。その上、馬の足が悪くなって牛乳の運搬なども自分が荷車を引くような形で行っているようですし……テビエ父さんの「神さま、なんでですか」、「馬の足まで悪くするこたないでしょう」、「わしが金持ちになったとて、あなたをそう煩わせることでしょうか?」みたいに言いたくなる気持ちはものすご~くよくわかるというか。

 しかも物語は最後――ずっと住まってきたアナテフカ村から、全ユダヤ人が追い出されるというところで終わります。

 わたしが最初に言いたかったこと、おわかりいただけましたでしょうか?>>これがもし人生じゃなかったら、一体何が人生なのかというのは、まさにこのことです

 ただ毎日一生懸命働き、家族のために、家族の幸せだけを願って生きるような日々……「ほんのちょっとでいいんですよ、神さま。ほんのちょぴっとばかし、こんなわたしどもを恵んでくださってもよろしかろうに」という、そんな言葉が人々の間からは聞こえてきそうです。

 しかも、ユダヤ民族の方々は、神さまから選ばれた伝統ある民族でもあり、彼らが聖典としている旧約聖書は、ユダヤ民族を救う救世主が現れるという預言によって閉じられているのです。「それなのに、神さまどうして」と、人々は心の奥深くに思いながらもアナテフカ村から出てゆかねばならなかったのでした。

 さて、わたしたちにもこのテビエ父さんと同じようなところがあったりしないでしょうか?

 今時、家長である父親が結婚相手を決めるだの、まったくナンセンスだとか、そういうことではなくて――「こんなに努力してますよ、神さま」、「これ以上どう頑張れっちゅうだね」、「嗚呼、ほんのちょっとでいいから運が向いてこねえかなあ」、「わしがつっとばかし金持ちになったからって、神さまに一体なんの不都合がありますかね?」なんて思うことが……。

 これはユダヤ民族のお話であるのと同時に、民族がどうのといったことを越えた、どの時代の誰もが普遍的に思う・感じるであろうことがテーマとなっている映画で、そこが世代を超えて<名作>と言われる所以なんじゃないかなって思うんですよね。

 ではでは、次回はユダヤ民族は何故迫害されるのかといった、「映画全体」のことよりもそちらに少し焦点を絞って記事を書いてみたいと思いますm(_ _)m

 それではまた~!!





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 神のことばを空文にする。 | トップ | 屋根の上のバイオリン弾き-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事