読む日々

テーマばらばらの読書日記

アントンー命の重さー

2012-11-16 | 絵本
「アントンー命の重さー」エリザベート・ツェラー作 中村智子 訳


作者の叔父をモデルにした おそらくほぼ実話。

第二次大戦中の、ドイツが舞台。
優秀な遺伝子のみが正しいドイツ人、との、ヒトラーの気違いじみた妄想のもと、有名なユダヤ人弾圧だけではなく、精神病患者や知的障害者を、保護すると騙して処置(=殺す)していたナチ。

事故の後遺症で、言語障害と右手の自由を失った子供、アントンを守るために両親や近所の人があの手このてでナチを欺こうと努力し、またアントン自身も自らの立場を正しく理解して必死に生き延びようとするお話。

市民中には、ナチよりの無知な人、もともと意地の悪い人間多数で、アントンは学校で、教師から、同級生から様々な嫌がらせや暴力を受けます。最後は田舎の遠い親戚を頼り、逃げ延びるんだけと、その間の人のこころや戦争の理不尽さ、狂った指導者をいただく国がどれだけ悲惨か、など、考えさせられる事がたくさん。

最後、ハッピーエンドかと思いきや、神経使ってボロボロになった両親が、戦後まもなく相次いで亡くなるという悲劇が。
このあたりが実話なんだわねぇ。

涙なくしては読めないけど、たくさんの人が読むべき本だと思います。子供にかぎらず、私達大人も。

ドイツは、辛すぎる体験をしているせいか、深い内容の児童書が多い気がします。