妻のお腹を押す作業は依然として続いている。窮屈な姿勢で、力一杯押す。しかし、腹筋に比べれば、私の力なんて非力そのもの。力を入れても、それ程強く押されている気がしないようだ。それで、押しているときに、「もっと強く押して！」と言われると、つい、「押しているだろう！」と言い返してしまう。妻も私も、顔から汗が滴り落ちる程だ。それでも、便が出た後、「出た！良かった！」とホッとするのだ。これは妻も私も同様だろう。しかし、出た後のトイレで、また、「押して！押して！」と言って来られると、『さっき出ただろう！そんなに出るはずはない。だいたい便になる材料がないのに、便が出るはずはないだろう！」と強く言い返してしまう。こんなやり取りが続き、険悪な状態に陥る。しかし、妻は、私のこうした心情を分かっているかわかっていないか、次のトイレの時には、また、「押して！」が始まる。それも１日８回に及ぶ。それは幾らなんでも多すぎだろう。
インターネットで、「ＡＬＳ、排便」で検索してみると、記事がたくさん載っていた。頭の中では、腹筋など排便に必要な筋力も衰えるので、排便がたいへんになるとは分かっているのだが、これ程悩んでいる人が多いとは驚いた。妻もその一人なのだ。記事によると、食べ物による影響や水分摂取の影響など様々な側面があるらしい。食事の内容など再検討する必要がありそうだと改めて気付いた次第だ。我ながら本当に情けない。単なる妻のわがままだけではなさそうだと思うと、少しは優しく、真面目に、「お腹を押す」ようにしようかと思い直した。
それにしても、若い頃には、力を入れる作業を続けていると、筋力も付いてくるものだが、私の年齢なると、なかなか筋力は付いてこないものだと改めて思い、自分の年齢を改めて感じてしまった。
