MZ2000というパソコンを購入して、一週間はほとんど手も足も出ず、何もできなかった。マニュアルを見ると、まず、プログラムのテープのバックアップを作成することと記されている。しかし、バックアップっていったい何のことか分からないし、どうやってバックアップを作るのか、なかなかりかいできなかったからだ。人に聴くにも知っている人は周りにいない。そんなこんなで、四苦八苦が続いたわけだ。
そのパソコンにはBASICというプログラムが付属でついていた。取り敢えず、そのBASICというプログラムを使って、自分なりのプログラムを作る、それをしないと全くただの箱でしかない。マニュアルに従って、パソコンを動かしてみる。Aという数値とBという数値を入力し、A×Bを計算させてみる。これが出来た時は本当に感動的な瞬間だった。既成概念として、コンピュータを使うためには、フローチャートを書き、コーヂィングして、デパックして、ようやく実行するという面倒くさい手づづきが頭にあり、直接キーボードから命令を入力し、実行するという手続きの明快さに感動したものだった。
職場で、私よりも先にコンピュータを始めた人が、麻雀大会のメンバーの組み合わせを作るプログラムを作って、麻雀大会で使った。まあ、プログラムの中身は簡単だ。得点順に並べ替え、4人ごとに区切るというものだ。メンバーの組み換えは3回あった。何しろ、全部で8卓、32人も参加するかなり大掛かりな麻雀大会だった。手作業でやれば、結構な手間なのだが、そのプログラムを使うと一瞬ででき、参加者の驚きは大きなものがあったような気がするし、コンピュータの威力を実感する体験となったことは確かだ。今考えると、エクセルに名前と得点を入力し、得点順に並べかえれば良いことなのだが、これをプログラムするとなると、それなりの手間が必要だったのだ。
そのうち何とかこのコンピュータを仕事で使えないかと考え、日数計算のプログラムを作った。これがまた職場では好評で、そののち、私のパソコンは居場所を職場に移し、暇があれば、パソコンをいじくっている日々を過ごした。そろばんを使って日数計算をしていくと、一度計算し、検算し、違っていたらまた計算する。その計算が一瞬のうちに出来、そして間違いがないのだから、パソコン様さまというわけで、私がパソコンをいじくっていても、だれも白い眼を向けることはなかった。
まあ、そんなこんなで、いつの間にか、パソコンについては周りの人よりも少し早く取り組み始めているという自負心があったし、パソコンを上手に使って仕事を効率的に進めることに精力を費やしていた。これはもう今から40年近く前の話だ。