愛らしい天使たちが微笑む、
美しいグリーティングポストカードを見ていると、
ロマンチックな恋をしていたのだろうと想像してしまいますが、
現実は恋愛も結婚もなかなか難しかったようです。
庶民とは違い、上流階級になればなるほど恋愛に慎重になります。
グリーティングカードが誕生したイギリスでは、
法律的には身分差のある結婚も許されておりましたが、
上・中流階級にはまだまだ階級にこだわる習慣が残っておりました。
To My Sweetheart Mechanical
Valentine's Day
若い男女は社交界で交際相手を見つけ、
紳士は社会的身分や財産ともに合う
女性を紹介してもらいお付き合いします。
また女性も自分より身分の低く、
親の望む収入のない男性と結婚することが許されておらず、
魅力的な青年でも身分に差があれば決して応じていけませんでした。
たとえ親子ほど年離れた男性でも、
条件に合う人であれば愛情は二の次で結婚したそうです。
実際、年収の低さを理由に泣く泣く恋人の別れ、
33歳も年上の男性と結婚したと記された女性の日記があるそうです。
Fred Lounsbury Lady & Man
Cupid and Big Red Heart
親に反対され、それでも愛を貫きたいカップルは
駆け落ちという手段をとりました。
親族の同意なしに結婚はできないことになっておりましたが、
スコットランドでは証人2人の前で誓えば
結婚が成立するという伝統が残っていたため、
有利にことを運ぶために素早く結婚をしてしまうことができたのです。
結婚もせずに一緒になった場合は決して認められず、
時に酷い迫害すらうけることになるので、
当人たちも必死だったのでしょう。
その駆け落ち結婚でも甘いロマンスだけでなく、
常に持参金や相続などの問題が付きまとったそうです。
Valentine Aristocrat Couple
Cupid Flowers
絵葉書の甘い雰囲気とは違い、
全てが制約し縛られていた時代の中で
あえてこれほど手の込んだ美しいデザインがつくられたのは、
絵葉書の中だけでも夢のようなロマンスの世界に
浸ろうとしたからかもしれません。
次回も企画展の特集を致します。
お楽しみに!
次回は8月6日の予定です