後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔191〕懐かしい西口敏治さんの『詩が好きになる教室』(さ・え・ら書房)に偶然出合いました。

2018年08月13日 | 図書案内
 池袋での「埋めるな!辺野古 沖縄県民大会に呼応する8・11首都圏大行動」が東池袋中央公園で開催されたことは前ブログで書いたとおりです。その集会後、公園からごく近い、おそらく日本で一番大きなブックオフに「避暑」のためもあり滑り込みました。そこで2冊の本を買い求めました。山中恒『クラマはかせの なぜ』(偕成社)と西口敏治さんの『詩が好きになる教室』です。2冊とも安価の上に、なんとこの日から三日間、ブックオフでは全部の本が20パーセント引きなのでラッキーでした。
  『クラマはかせの なぜ』は私の大好きな本で、教室での読み語りの定番でした。この本が古本できれいな状態で安価な時は、つい買ってしまうのです。知り合いの子どもたちに分けても惜しくありません。もうすでに2冊は買ったでしょうか。今回の本は孫にあげるためです。先日、「山中恒 おもしろ童話」シリーズの『おとうさん×先生=タヌキ』を手に入れたばかりでした。シリーズが2冊揃うとけっこう豪華に見えるものです。

 さて、本題は『詩が好きになる教室』です。
 この本が出版されていたことは知っていましたが手に取る機会はありませんでした。
 さ・え・ら書房では、「さ・え・ら図書館」というシリーズを出していました。このシリーズはなかなかおもしろくて、何冊か私の本棚にも並んでいます。村田栄一『ことばあそびをしよう』、植垣一彦・向井吉人『作文わくわく教室』、長谷川孝・大沢和子・原正『新聞をつくろう』、石毛拓郎『詩をつくろう』、松丸春生『朗読をたのしもう』…。小学校や中学校での実践が元になって書かれた本が多く、読んでいて楽しいものばかりでした。個人的にもお付き合いのある人たちが書かれていたので親しみもあり、内容的にも信頼置けるものだったのです。
 『詩が好きになる教室』(1995年)はそのシリーズの後半に出版された本でした。著者は西口敏治さん、実は私の新卒時代ですから、もう50年近く前に出会っているのです。1972年、新卒の時に4年ほど日本生活教育連盟(日生連)に参加していました。そこで妻と出会い、2人で板橋の火曜会という月1回のサークルの事務局を引き受けていました。
 日生連の東京での冬の集会の時でした。2,30名の全体会の前に、数人での実践交流会がありました。そこで各人の実践発表をするように求められていました。サークルの中心は教育実践者として名高かった鈴木孝雄さんでした。名著『学級文化活動と集団づくり』(明治図書)を既に出版している方でした。連れ合いの学年主任で、結婚式にも参加していただいたのですが、40代半ばで若くして亡くなられたのです。
 私が「私の半年の実践」か「学級新聞づくり」といった発表をしたとき、日生連では名が知れていた実践者に、内容は全く忘れてしまったのですがそれを批判されたのです。それに対して反論してくれたのが西口敏治さんでした。彼は当時私立和光学園で教師をしていました。
 彼と再会したのはそれから20年以上たった、たぶん1990年代の半ばのことでした。村田栄一さんの『授業からの解放』(雲母書房)などの合同出版記念会に参加したときに、彼も来られていたのですが、日生連での出会いの顛末については覚えておられなかったようでした。当時、『詩が好きになる教室』を出版した頃だったのではないでしょうか。

 『詩が好きになる教室』なかなか良い本だなと思いました。どんな本なのか、アマゾンにはこんなことが書かれていました。

*内容(「BOOK」データベースより)
 すきな詩をさがしてきて暗唱し、みんなの前で発表する―単純なこのくり返しの中で、詩が大すきになっていった子どもたちの、成長の記録。本書には、子どもたちが好んで口ずさんだ詩が長短あわせて57編つまっている。
*内容(「MARC」データベースより)
 国語の授業の中で、詩の暗唱と発表を続けて二年。詩に興味も関心もなかった西口学級の生徒たちは、たがいに影響しあい、すっかり〈詩が大すき〉な子どもに変わりました。五年生の少女志織の目をとおした、物語仕立ての実践記録。
 
 前半の紹介は、ほぼ本の扉に書かれていることです。
 後半の紹介文は厳密には修正が必要です。彼はお茶の水大学附属小学校に非常勤講師として入り、5年生3クラスの国語の授業の一部を担当したらしいのです。4月だけで15時間ということですから、1クラス週3時間程度でしょうか。授業内容としては、朗読、詩の暗唱と発表、ことば遊び、作文、漢字の5つの「仕事」です。「仕事の計画表」を子どもたちに配ったといいますから、おそらくフレネ教育的な実践といっていいのでしょうか。全般的に教師の教えより子どもの学びを重視する考え方が行き渡っています。
 西口さんの実践を引き継ぎ発展させたのが浅川陽子さんという方だそうです。彼女の実践もこの本の中に生かされていますが、後に『ことばの生まれ育つ教室―子どもの内面を耕す授業』(金子書房 2005/12)などの本も出版されています。

 実践は、自分で詩を選び、それを暗唱してみんなの前で発表するという行為から、詩の創作まで踏み込みます。この本に散りばめられた57編の素敵な詩を読むだけでも幸せな気持ちにさせられます。一番多く取り上げられた詩人は8編の谷川俊太郎さんです。彼がオビにこんなことばを寄せています。

 子どもが生きてる、先生が生きてる、教室がよみがえる。詩の声が学校に風穴を開けた。
                               谷川俊太郎




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