後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔78〕『真実 私は「捏造記者」ではない』植村隆著を勧めます。

2016年03月09日 | 図書案内
 私たちの清瀬・憲法九条を守る会の例会で、「いわゆる従軍慰安婦問題とはなんなのかについて話し合ってみたいね。」ということを言い出した人がいます。私は、ある程度はわかっているという思いがあるけど、本当のところはどうなのか、深く調べたことがありません。そこで「自分の勉強のために、勝手にレポートします。」と宣言しました。
 そんなわけで、いろいろ資料やネットであたってみたところ、次のような課題が浮かび上がってきました。

●追跡したいこと・調べたいこと
Ⅰ.「従軍慰安婦」とは何か。〔問題の所在〕
・『従軍慰安婦』吉見義明を読む。
・吉見義明・泰郁彦論争
・『帝国の慰安婦』朴裕河(パク・ユハ)をどう読む。
Ⅱ. 従軍慰安婦問題
・朝日新聞、植村隆バッシング
・従軍慰安婦をめぐって清瀬市議会での攻防
・慰安婦問題、日韓合意をどう捉える。
Ⅲ.従軍慰安婦問題の今後
・再度、清瀬市議会への請願の提出
・さらなる学習会
・真の日韓民間交流とは。

  レポートのまとめをしているとき、願ってもない本が出版されました。従軍慰安婦問題でバッシングを受けた元朝日新聞記者、植村隆さんの手記です。(以下、岩波書店のサイトより)

●『真実 私は「捏造記者」ではない』植村隆、岩波書店、235頁、2016.2.26
〔扉〕1991年に元慰安婦について書いた1本の記事が、23年後に元記者の人生を狂わせた。活字メディア・電話・ネットなどでの抗議・嫌がらせ・脅迫は家族・職場の大学にまで及び、元記者は闘うことを決意した。そしていまや司法、活字メディアへと抵抗のうねりは広がっている。元記者の名誉回復だけでなく、日本の民主主義の再生を求めて。
■ 著者略歴
植村 隆(うえむら たかし)
1958年,高知県生まれ.早稲田大学政経学部政治学科卒.1982年朝日新聞入社.仙台,千葉支局,大阪社会部などを経て,テヘラン支局長,ソウル支局,北海道支社報道部次長,東京本社外報部次長,中国総局(北京)を経て,2009年4月から北海道支社報道センター記者,2013年4月から函館支局長.2014年3月早期退職.2010年4月早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(博士後期課程)入学.2012年4月より16年3月末まで北星学園大学非常勤講師.2016年3月より韓国のカトリック大学校客員教授.
著書に『ソウルの風の中で』(社会思想社),共著に『マンガ韓国現代史 コバウおじさんの50年』(角川ソフィア文庫),『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など.
■ 目次
第1章 閉ざされた転職の道
転職先を失う/『週刊文春』の取材のやり方/大学教員への夢/朝日新聞社とのやりとり
第2章 「捏造」と呼ばれた記事
「録音テープ」から始まった記事/1990年夏,空振りが続いた元慰安婦取材/金学順さんが名乗り出た/もう一つの記事,キーセン学校の経歴を書かなかった理由
第3章 韓国・朝鮮との出会い
京都で見た金色の仏像/朝鮮人に連帯した詩人「槇村浩」/友愛学舎での日々/『朝日』記者としてソウルへ語学留学/「ソウル遊学生通信」発行/猪飼野での暮らしと取材/金大中氏とコバウおじさん
第4章 反転攻勢,闘いの始まり――不当なバッシングには屈しない
『朝日新聞』に検証記事掲載/「負けるな植村!」/一筋の光,差別と闘う人々との出会い/小さな大学の大きな決断――脅迫には負けないことを表明した北星学園大学/弁護団誕生,訴訟への長い道のり
第5章 「捏造」というレッテルが「捏造」
西岡力氏への反証/『読売』との対決/幻の『読売新聞』インタビュー/虚偽と誤解に基づく『産経』の攻撃/『産経』は「強制連行」と報道していた/阿比留氏らとのインタビュー
第6章 新たな闘いへ向かって
東京地裁で名誉毀損訴訟が始まった/初めての意見陳述/アメリカ横断の旅――6大学で講演/歴史学者らの声明が追い風に/札幌での闘い/緒戦の勝利/望郷の丘/架け橋を目指して
資 料
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慰安婦問題を報じた主な記事のうち「挺身隊」という言葉が出てくる部分
慰安婦問題と植村隆をめぐる主な経緯
金学順さんの証言の各紙掲載内容
あとがき

 植村隆さんのことは、〔非売品・内部資料「『ねつ造記者』ではない」植村応援隊発行、2015.3.1〕で知ることができました。ただしこれは資料集なので、読み解くのはそう容易ではありませんでした。それに比べ『真実』は植村さんの心の動きがリアルに伝わってくる臨場感あふれるドキュメントになっています。さすが元新聞記者と言えるものです。
 アマゾンでこの本のページを見ると「カスタマーレビュー」という、本の感想の欄があります。この欄を一瞥しただけで、現代日本における草の根右翼やネトウヨの状況があからさまにわかります。6人の投稿者のうち4人が知性・理性のかけらもなく口汚く、植村さんのあること無いことを書き綴っています。この4人はこの本をほとんど読んでいない節があります。記された本質を捉えないレビューをよくいつまでも掲載しているのかも不思議です。この管理人の知性も問われますね。体制批判的な本に対してはこの手の「反批判」が大手を振るっています。

 ここ数年、朝日新聞バッシングには凄まじいものがあります。池上彰原稿不掲載事件は最も罪が重いものの、福島第一原発吉田調書スクープはどこが問題なのでしょうか。従軍慰安婦をめぐっての記事では、確かに吉田清治に関する紹介記事は問題があったでしょうが、何を今更という感じです。
 さて、朝日新聞、植村バッシングの急先鋒は西岡力氏、櫻井よしこ氏、読売新聞、産経新聞などです。『真実』は彼らへの見事な反証になっています。4者はこの本に対して、真摯に応答すべきです。
 植村バッシングのポイントは、挺身隊と慰安婦を混同していること、強制的に慰安婦にされたと書いているということ、運動している身内のために書いたのではないか、証言者の金さんがキーセンだったことを隠していた…ということです。前半の問題については同様のことを読売新聞、産経新聞も書いているということで、開いた口がふさがりません。後半の部分についても植村さんは丁寧な説明を書いています。もっといえば植村さんは「強制連行」とは書いていません。
 植村さんの朝日新聞でのわずか二本の記事はどう考えても捏造ではありません。朝日新聞検討の第3者委員会が、植村記事に捏造はなしとしたのは当然のことでした。
 反撃を開始した植村裁判を支援したいと思います。

*私の提出した、清瀬市での原発の停止・再稼働反対の請願は、3月15日(火)、10:00時から、清瀬市役所4階で審議されます。総務文教特別委員会です。各委員がどのような発言をするのか、見ものです。

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